きっとそういうこと

17話(御幸視点)

シーズンが終わって秋に入った。

明日ついに結婚式を挙げる。

前日の今日は互いに家族と過ごそうと、実家に戻っていた。

「明日だな」「ああ、うん」

俺達親子の会話は長く続かない。

それが苦だと思った事も無いしな。

「早くに片親になって、お前にも苦労を掛けたな。幸せになりなさい」

「苦労なんて思ってねえよ。好きな野球やらせて貰ってたし。感謝してるよ」

夕飯を食べ終わって風呂に入って寝る。

朝起きて飯食ってまで今も昔も変わらない。

「んじゃ、後でな」

「ああ」

靴を履いて玄関を開ける。

またしばらく開ける事が無い実家の扉を閉めた。



「新婦様は既に準備に入られてます。新郎様はこちらに」

別室に通されて着替えをして髪を整えられる。

男の準備なんて、こんなもんだよな。

準備の合間に色んな人が挨拶に来てくれた。

「新婦様の準備が終わった様です。行かれますか?」

もちろん行くさ。他の男に見せる前に見ないとな。

案内されて別室へ向かう。

ドレス選びを一緒にしたから知ってはいるが。

「あ、新郎さんが来たわよ~」

彼女の友人や母親が既にいた。

お義母さんに裾を持ってもらい、が立ち上がる。

「一也。タキシード、似合うじゃない」

「はっはっはっ。純さんとかには七五三って言われたけどな」

「そんな事ないよ」

「じゃあ、。私達も準備してくるわね」

気をきかせてくれたのか、スタッフも家族の人も部屋を出て行く。

彼女の前に立って改めて見る。

「すっげー綺麗だな。似合ってる」

「それは世界一のお嫁さんになるんだもん」

「素敵な嫁を手にする俺は幸せ者だな~」

ドレスを踏まない様に近づき、彼女を抱きしめる。

いつもより更に細い腰。

「コルセット巻くから当日は食べられないんだよ」って言ってたっけ。

食い気より色気。

でも本当に綺麗だ。

「あ、キスはダメ。口紅取れちゃうし」

「じゃあ、ちょっとだけ」

誓いのキスの様な触れ合うだけのキスをして笑い合う。

家族で写真を撮り、再び控室で待機。

式が始まって彼女の到着を待つ。

彼女の腕がお義父さんから離れ、俺の腕に絡んでゆっくり歩く。

これからの人生の様に一歩一歩と。

神様に対しての誓いの言葉に誓いのキス。

指輪の交換の時に、お互い震えてて笑ってしまった。

そして再び二人で歩み、チャペルを後にする。

ライスシャワーを浴びながら、控室へと戻った。

お色直しを終え、二人で会場へ向かう。

当然ながら俺の方が人数が多く、男しかいない(笑)

席に着くとスタッフの人が「足元にバケツがあります。お酒はそちらへ」と言われた。

全部飲んでたら大変な事になるからな。

そして披露宴が始まる。

正直笑った。

そして先輩たちには初お披露目となるを紹介して回る。

余興の無い時は、俺の招待客はの友人等に声を掛けに行ってるようだ。

「ねえ、一也。皆が祝福してくれて嬉しいね」

「そうだな」

と顔を見合わせて笑う。

「なーに幸せそうに見つめ合ってんだよ、ヒャハハ!二次会行くぞ二次会!」

結局、三次会まで付き合わされることとなった。




式の翌日は二日酔いでダウン。

ハネムーンはお互いの長期休みの年末年始に行く事にしている。

そして月曜になってはいつも通り出勤していった。

彼女を見送って自分の準備をし、青道へ向かった。

「御幸君、こっち」

礼ちゃんに案内された舞台袖。

有難い校長先生の話が終わるのを待つ。

「それでは最後にご報告です。先生、こちらに」

「はい」

校長先生に呼ばれてが壇上に上がる。

そして校長の隣に並んだ。

「先日、先生がご結婚されました」

すると生徒達から声が上がる。

「お相手は・・・」

「俺です」

大き目の声を出しながら彼女の隣に立つ。

すると色めき立った声が上がった。

「一也・・・何で・・・」

「ちょっとね」

「彼はプロ野球○×チームの1軍選手で我が校の卒業生でもあります。では、御幸君」

校長先生からマイクを受け取り、口元に当てる。

「野球部OBの御幸一也です。先日先生と結婚しました。つー訳で、狙ってた男子生徒の諸君、ごめんな。勉強に専念しろよー」

はっはっはっと笑いながらマイクをにマイクを渡す。

「えーと、そういう事で、これから御幸になりますのでよろしくお願いします」

二人で頭を下げると生徒達から「おめでとう!」と拍手が。

マイクを校長先生に渡してと舞台袖に下がる。

「もう!信じられない!」

「はっはっはっ。絶対を狙ってる生徒いるだろうし、牽制しておきたかったんだよ」

「苗字が変わるんだから分かるじゃない」

「生徒に対してだけじゃねえよ」

「どういうこと?」

「終わる頃に迎えにくるよ」

の頭をポンポンと叩いてその場を後にした。

きっと彼女はこの後の授業で、生徒たちに冷やかされているだろう。


2017/4/20

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