卒業を間近に控え、学校は授業とは違う雰囲気になった。
年末にドラフト会議を終え、所属するチームが決まる。
まだ学生だから登校日には学校へ、それ以外ではチーム練習に参加。
これからプロとして野球で食っていく覚悟も強まる。
学校へ来れば女生徒からの告白もいくつかあった。
けれど知らない子とは付き合えないし、好きな人がいるワケでも無い。
そんな時に現れた。
彼女とは一年の時に同じクラスだったが、特に仲が良かった訳じゃない。
近くにいれば話すし、わざわざ寄ってきてまで話す事も無い。
けれど彼女との会話は気を使わないで済んだのが印象的だった。
他の女生徒は 俺を君付 けで呼ぶのに、彼女は呼び捨て。
そこで周りと対等な扱いなのがほっとした理由の一つ。
倉持との会話の流れで「なら俺と付き合う?」と言ったのは彼女となら気楽に付き合えるかと思ったからだった。
一緒にいても会話は続くし、変な気も使わない。
周りから聞く「○○が欲しい」「○○に行きたい」と言うのも無かった。
店に入っても「割り勘」が当たり前の彼女。
確かに稼ぎがあるワケじゃないから正直助かってる。
どちらかと言えば「安くて良いものを探せた時が嬉しい」んだとか。
かと言ってセコイと言う訳でも無い。
それにボーリングやバッティングセンターにも平気で行く。
一番球速の遅い打席だったとはいえ、ホームランを出したのは驚いた。
「秀でるものは無いけど運動は好きなんだよね」
アクティブなのは俺としては喜ばしい事で。
しかも野球の事もそれなりに理解している。
ここまでは本当に最高なんだけど、1つだけ頭が痛い事がある。
本人に女性としての自覚が無い事。
普段の制服では分かりにくかったが、かなりスタイルが良い。
運動する目的じゃないデートの時に履いてくるスカート。
そこから見える足、腰の括れ、胸も特別大きくも無いが小さくも無い。
しかも学校帰りじゃないと薄いとはいえ化粧をしている。
正直俺は焦っていた。
3月から本格的にチームに入るとなると、彼女との時間は確実に減る。
そして4月になれば彼女は大学に入学。
知らない男が彼女を目にし、恋愛感情を抱くかもしれない。
自分がこんなに嫉妬深いとは思わなかった。
そんな感情を隠しつつ、彼女を実家へ呼んだ。
学校が無い時は家に戻っていたし、親からも不信に思われる事も無かったからだ。
SEX自体は初めてでは無かった。
一年の頃、三年生の女生徒に言い寄られ、半ば強引に関係を持ったから。
けれど初めての時より興奮した。
自分のベッドに彼女を寝かせ、キスをしながら服を脱がしていく。
手を這わせた体は柔らかくて温かい。
欲に濡れた瞳が俺を更に興奮させる。
はやる気持ちを押さえて1つになる時、彼女の顔が苦痛で歪む。
「・・・好きだ・・・」
名前を呼んで想いを告げる。
涙で滲んだ瞳が俺を捉える。
瞼にキスを落として腰を動かす。
背中に回された彼女の手が俺の背中に傷を作る。
その痛みだって快楽にしかならない。
段々と甘くなっていく彼女の声。
仰け反る首筋に、噛みつくようにキスをして薄い膜越しで果てた。
これ以上ない快感。
彼女を抱きしめて横に寝転がり、肩口に彼女の頭を乗せて抱きしめなおす。
するっと回された彼女の腕が腰に乗っかる。
幸せを形にするなら、彼女そのものだな。
「このまま時間が止まれば良いのにな」
思わず零れた本音。
するとは体を離して俺の頬に手を添えて顔を上げる。
「・・・・・・好き」
初めて彼女の口から出た言葉。
驚いた後に波のように押し寄せた嬉しさ。
「お前な・・・1度で終われないからな」
体勢を入れ替え、彼女を再びベッドに押し付ける。
そして優しく、気持ちが伝わる様に彼女を抱いた。
2017/2/17