きっとそういうこと

03話(御幸視点)

卒業を間近に控え、学校は授業とは違う雰囲気になった。

年末にドラフト会議を終え、所属するチームが決まる。

まだ学生だから登校日には学校へ、それ以外ではチーム練習に参加。

これからプロとして野球で食っていく覚悟も強まる。

学校へ来れば女生徒からの告白もいくつかあった。

けれど知らない子とは付き合えないし、好きな人がいるワケでも無い。

そんな時に現れた

彼女とは一年の時に同じクラスだったが、特に仲が良かった訳じゃない。

近くにいれば話すし、わざわざ寄ってきてまで話す事も無い。

けれど彼女との会話は気を使わないで済んだのが印象的だった。

他の女生徒は 俺を君付 けで呼ぶのに、彼女は呼び捨て。

そこで周りと対等な扱いなのがほっとした理由の一つ。

倉持との会話の流れで「なら俺と付き合う?」と言ったのは彼女となら気楽に付き合えるかと思ったからだった。

一緒にいても会話は続くし、変な気も使わない。

周りから聞く「○○が欲しい」「○○に行きたい」と言うのも無かった。

店に入っても「割り勘」が当たり前の彼女。

確かに稼ぎがあるワケじゃないから正直助かってる。

どちらかと言えば「安くて良いものを探せた時が嬉しい」んだとか。

かと言ってセコイと言う訳でも無い。

それにボーリングやバッティングセンターにも平気で行く。

一番球速の遅い打席だったとはいえ、ホームランを出したのは驚いた。

「秀でるものは無いけど運動は好きなんだよね」

アクティブなのは俺としては喜ばしい事で。

しかも野球の事もそれなりに理解している。

ここまでは本当に最高なんだけど、1つだけ頭が痛い事がある。

本人に女性としての自覚が無い事。

普段の制服では分かりにくかったが、かなりスタイルが良い。

運動する目的じゃないデートの時に履いてくるスカート。

そこから見える足、腰の括れ、胸も特別大きくも無いが小さくも無い。

しかも学校帰りじゃないと薄いとはいえ化粧をしている。

正直俺は焦っていた。

3月から本格的にチームに入るとなると、彼女との時間は確実に減る。

そして4月になれば彼女は大学に入学。

知らない男が彼女を目にし、恋愛感情を抱くかもしれない。

自分がこんなに嫉妬深いとは思わなかった。

そんな感情を隠しつつ、彼女を実家へ呼んだ。

学校が無い時は家に戻っていたし、親からも不信に思われる事も無かったからだ。

SEX自体は初めてでは無かった。

一年の頃、三年生の女生徒に言い寄られ、半ば強引に関係を持ったから。

けれど初めての時より興奮した。

自分のベッドに彼女を寝かせ、キスをしながら服を脱がしていく。

手を這わせた体は柔らかくて温かい。

欲に濡れた瞳が俺を更に興奮させる。

はやる気持ちを押さえて1つになる時、彼女の顔が苦痛で歪む。

・・・好きだ・・・」

名前を呼んで想いを告げる。

涙で滲んだ瞳が俺を捉える。

瞼にキスを落として腰を動かす。

背中に回された彼女の手が俺の背中に傷を作る。

その痛みだって快楽にしかならない。

段々と甘くなっていく彼女の声。

仰け反る首筋に、噛みつくようにキスをして薄い膜越しで果てた。

これ以上ない快感。

彼女を抱きしめて横に寝転がり、肩口に彼女の頭を乗せて抱きしめなおす。

するっと回された彼女の腕が腰に乗っかる。

幸せを形にするなら、彼女そのものだな。

「このまま時間が止まれば良いのにな」

思わず零れた本音。

するとは体を離して俺の頬に手を添えて顔を上げる。

「・・・・・・好き」
初めて彼女の口から出た言葉。

驚いた後に波のように押し寄せた嬉しさ。

「お前な・・・1度で終われないからな」

体勢を入れ替え、彼女を再びベッドに押し付ける。

そして優しく、気持ちが伝わる様に彼女を抱いた。



2017/2/17

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