きっとそういうこと

第一話

高校三年の2月ともなると、登校日が一気に減ってしまう。

けれど登校した所で授業らしい授業も無い。

そして今日も登校したが、卒業式の練習などで終わりそうだ。

いつもと違うのは、卒業アルバムが配られた事だろう。

放課後になり、アルバムを抱えて他のクラスへと向かった。

「あれ?じゃん。ヒャハハ!クラス間違えてねえか?」

「失礼だな!あ、ちょうどいいや。倉持も書いてよ、寄せ書き」

「はぁ!?お前もかよ」

「良いじゃん。あ、御幸も~」

「ついで感満載じゃね?」

はいはいと受け流し、寄せ書きのページを開く。

二人は今まで書いてくれた人達のを読んで茶化していた 。

「そういや進路どうした?」

「M大決まったよ」

「「マジで!?」」

「ハモって酷くない?」

「だって・・・なあ、だし」

「答えになってませーん。二人だって野球バカじゃん」

「御幸と一緒にすんな!!」

「プロ入りすんだっけ?」

「北海道か東北と思いきや都内で済んだわ」

「へぇ。倉持は?」

「俺は野球で大学行くぜー。C大」

「マジ?」

「ついでに彼女も同じなんだよな」

「え?倉持って彼女いるの!?てか、出来るの!!!?」

「お前の方が失礼だろ!!なんだ、はいないのか?カレシ」

「倉持にバカにされてる気がするからムカツク。いないわよ!」

「へぇ、なら俺と付き合う?」

「は?」

「良いんじゃね?二人共相手いないんだしな。ヒャハハ!」

「だよな~」

「何話進めてんのよ」

「「だっていないんだろ?」」

何故かこの日、好きでも無い男が彼氏になりました。



案外御幸はマメらしい。

学校の無い日にはプロ野球の練習に参加してるらしいけど、毎日連絡がくる。

電話が無理ならメッセージだし。

スマートフォンの画像フォルダを開くと、この間倉持が遊んで撮った御幸がいる。

こうして改めてみると・・・・・・イケメンなんだよね。

三年間野球部に所属していて、しかも甲子園出場校の主将。

東京代表に選ばれたり、プロからのスカウトがあったり。

改めて考えると凄い人なんだな・・・。

同じクラスだった時は女の子と喋ってるより男子と一緒にいたり、いつも何か読んでたり。

なんか普通の男子生徒だったんだけどな。

「うわっ!」

ぼけっと考え事をしていたら、スマホが震えた。

表示されてる名前は今考えてた人。

「もしもし」

『おれおれ~』

「どちら様ですか」

の彼氏様です』

「っ!!!」

急に名前を呼ばれてドキっとした。

いや、ドキドキか。

?』

「い、いきなり名前で呼ばれたから驚いた」

『なるほど。呼ばれるの嫌?』

「嫌じゃないけど・・・なんか照れる」

『はっはっは~。慣れろ。んで、俺の事も名前で呼べばいいよ』

「ハードル高っ!?御幸の方が呼びやすいし」

『俺の親父も御幸だし』

「それ言ったら一也も全国に沢山いると思うけど」

『はいはい。今は呼べたじゃん』

「・・・・・・ソウデスネ」

『んじゃ、デートでもしねえ?』

話の展開の速さについて行くのがやっと。

とりあえずデートの日を決めて、電話を切った。



2017/2/3

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