きっとそういうこと

12話(御幸視点)

高校野球の夏の大会予選が始まってすぐ、倉持と一緒に青道高校に差し入れに向かった。

ドリンクなんて、大量にあっても部員が多いからすぐになくなる。

他の人と被っても問題の無い差し入れ品だ。

倉持の車に箱買いした飲み物を積み込み、グランドに向かう。

「あら、御幸君に倉持君。久しぶりじゃない」

「久しぶり、礼ちゃん」

「お久しぶりです!差し入れにきました」

「ありがとう。さっき東君も来てたのよ」

「え?マジ?」

「ヒャハハ!ちょっと遅かったか」

「部屋に台車あるから使って」

そう言われて台車を借りて車に戻る。

箱を乗せて動かせば箱がずれていく。

「おまっ!ちゃんと押さえろよ」

「はっはっはっ」

ぎゃーぎゃー言いながら(倉持だけだけど)グラウンドに戻る。

そしてマネージャーにも手伝って貰って飲み物を運んでいた。

「高島先生、これをお預かりしてきました」

練習を見ていた礼ちゃんの横にがやってきた。

「あれ??」

倉持が名前を呼ぶと、彼女が顔を上げた。

「え?倉持?」

「ああ、同じ学年だったわね」

「はい。うわ~相変わらず人相悪くない?」

「はぁ!?お前は化粧で化けてんじゃねえか!」

「ははははは」

「御幸!腹抱えて笑ってんじゃねえよ!」

先生と知り合いなんですか?」

横にいたマネージャー達が目を丸くして聞いてくる。

「三人共同級生なんだよ」

「「「えぇーーー!?」」」

「それ、何に驚いてんの?」

「同級生に見えなかったので」

「マジ?誰が一番老けて見える?」

思わず口を出た言葉。

「ちょっと!それ聞いて私だったら凹むから止めて!ガチで止めて!!」

「そうだそうだ!」

「もしかしたら俺かもしんねえじゃん?」

「えー。でも違ったらショックだし」

「だよな」

「そういえば、昼飯は?」

「ああ、これから」

「んじゃ、お前も来いよ」

「あら、お二人の邪魔じゃない?」

「お前でも花には違いないしな」

「なにそれ、どういう意味?」

「皆さん、仲が良いんですね。というか、先生なんか可愛い」

「はっはっはっ」

ぎゃあぎゃあ騒いでる二人を止めて、監督にも挨拶をしてグランドを後にした。

駐車場でを待つことに。

「まだ付き合ってんのか」

「まあな」

「結婚しねえの?」

「したいとは思ってるけどな」

「へぇ・・・」

「お待たせ!何食べに行くの?倉持のおごりで鰻?」

「はぁ!?御幸の金だろ!!」

「え?何で俺?」

このぎゃあぎゃあしてる雰囲気は、と付き合い始めた時を思い出す。

俺の周りは面白いヤツが多い。

あの頃、同じ釜の飯を食った奴らは何をしているんだろうか。

「行くぞ、御幸!」

「協議の結果、焼肉になったよ」

「え?俺の意見は?」

「「どこでもいいから黙ってたんじゃないの?」」

こんな時だけ意気投合かよ。

そして焼肉を食べに行って、結局奢らされた。


2017.04.07

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