高校野球の夏の大会予選が始まってすぐ、倉持と一緒に青道高校に差し入れに向かった。
ドリンクなんて、大量にあっても部員が多いからすぐになくなる。
他の人と被っても問題の無い差し入れ品だ。
倉持の車に箱買いした飲み物を積み込み、グランドに向かう。
「あら、御幸君に倉持君。久しぶりじゃない」
「久しぶり、礼ちゃん」
「お久しぶりです!差し入れにきました」
「ありがとう。さっき東君も来てたのよ」
「え?マジ?」
「ヒャハハ!ちょっと遅かったか」
「部屋に台車あるから使って」
そう言われて台車を借りて車に戻る。
箱を乗せて動かせば箱がずれていく。
「おまっ!ちゃんと押さえろよ」
「はっはっはっ」
ぎゃーぎゃー言いながら(倉持だけだけど)グラウンドに戻る。
そしてマネージャーにも手伝って貰って飲み物を運んでいた。
「高島先生、これをお預かりしてきました」
練習を見ていた礼ちゃんの横にがやってきた。
「あれ??」
倉持が名前を呼ぶと、彼女が顔を上げた。
「え?倉持?」
「ああ、同じ学年だったわね」
「はい。うわ~相変わらず人相悪くない?」
「はぁ!?お前は化粧で化けてんじゃねえか!」
「ははははは」
「御幸!腹抱えて笑ってんじゃねえよ!」
「先生と知り合いなんですか?」
横にいたマネージャー達が目を丸くして聞いてくる。
「三人共同級生なんだよ」
「「「えぇーーー!?」」」
「それ、何に驚いてんの?」
「同級生に見えなかったので」
「マジ?誰が一番老けて見える?」
思わず口を出た言葉。
「ちょっと!それ聞いて私だったら凹むから止めて!ガチで止めて!!」
「そうだそうだ!」
「もしかしたら俺かもしんねえじゃん?」
「えー。でも違ったらショックだし」
「だよな」
「そういえば、昼飯は?」
「ああ、これから」
「んじゃ、お前も来いよ」
「あら、お二人の邪魔じゃない?」
「お前でも花には違いないしな」
「なにそれ、どういう意味?」
「皆さん、仲が良いんですね。というか、先生なんか可愛い」
「はっはっはっ」
ぎゃあぎゃあ騒いでる二人を止めて、監督にも挨拶をしてグランドを後にした。
駐車場でを待つことに。
「まだ付き合ってんのか」
「まあな」
「結婚しねえの?」
「したいとは思ってるけどな」
「へぇ・・・」
「お待たせ!何食べに行くの?倉持のおごりで鰻?」
「はぁ!?御幸の金だろ!!」
「え?何で俺?」
このぎゃあぎゃあしてる雰囲気は、と付き合い始めた時を思い出す。
俺の周りは面白いヤツが多い。
あの頃、同じ釜の飯を食った奴らは何をしているんだろうか。
「行くぞ、御幸!」
「協議の結果、焼肉になったよ」
「え?俺の意見は?」
「「どこでもいいから黙ってたんじゃないの?」」
こんな時だけ意気投合かよ。
そして焼肉を食べに行って、結局奢らされた。
2017.04.07