きっとそういうこと

10話

目覚まし代わりのスマホが鳴り目を開ける。

「っ!!!!」

そこには一也のドアップ。

声を上げなかった自分を褒めたい。

起こさない様にと思ったのに、結局彼の瞳が開かれていく。

「ごめん、起こした」

「ん?んー・・・」

再び閉じられていく瞼。

その瞬間、私の首に彼の手が添えられてバランスを崩す、と同時に重ねられた唇。

「おはよ」

「・・・おはよう」

「今何時?」

「6時過ぎ」

「8時に起こして」

再び寝てしまった彼に思わず微笑む。

寝顔・・・・・・初めて見た。

枕に片腕を突っ込んで半開きの唇。

普段と違う顔。

もっと見て いたいけ ど、色々やる事が多い。

まずシャワーを浴びて着替えて化粧を済ませる。

台所に行って朝食の準備をしていると、一也が起きて来た。

「おはよう」

「おはよう。飯、作ってくれたんだな」

寝癖の付いた髪を掻きながら起きて来た彼を洗面台に追いやる。

味噌汁を温め直してお椀とお茶碗を用意。

戻ってきた彼とテーブルを囲む。

「今日の予定は?俺は午後からトレーニングで終わるけど」

「朝一番で役所に住民票の移動してくるよ。明日から研修になるし」

「わかった」

一也と食事を済ませて家を出る。

役所に着くと、やはり移動の時期なので混んでいた。

一也にその旨メッセージを入れると、

『時間になたら出るから後よろしくな』と返って来た。

諸々の手続きが終わると昼の時間を過ぎていた。

今から戻っても入れ違いだろうし、外で食事を済ませる事にする。

帰りに食材を買い足して帰宅すると、洗い物も掃除も終わっていた。

自分で出来るとは聞いてたけど・・・。

ここまでしてくれるのは助かる。

台所に行き食材を冷蔵庫に入れて手を洗う。

壁に掛けてあるエプロンを付けて調理を始める。

まずは夕飯の準備をして、次にお弁当用の冷凍食品を作る。

研修期間中の昼食は食堂を使っても良いらしいが何となく気が引けるので弁当を持って行くつもりなのだ。

あれこれと準備をしていたら、インターホンが鳴る。

急いで手を拭いて誰かを確認すると一也だった。

なので鍵を回してドアを開ける。

「おかえり」と言うと「ただいま」と同時に抱きしめられた。

「うわっ」

「色気も素っ気もねえな」なんて言うから背中を1つ叩く。

「やっぱりただいまって言われるの良いよな」

「もう!そればっかり。お風呂先に入る?それによってご飯の準備するけど」

「もう1個ないの?」

「もう1個?」

「『それともわ・た・し』ってヤツ」

「あるわけないでしょ!」

はっはっはっと笑いながらリビングへ。

「練習の後シャワー浴びてっから飯がいいな。手、洗ってくる」

一也が洗面台に行ったので私はキッチンへ。

盛り付けをしていると一也が来たので他の事を頼む。

そして二人で食卓を囲った。

「飯以外に何作ってんの?」

「ああ、お弁当作ろうと思って」

「まじ?」

「うん?」

「なら、俺のも作ってよ」

「え?お弁当箱無いけど」

「んじゃ、明日買ってくるからさ。が作る時に俺のもよろしく」

「いいけど・・・いつ食べるの?」

「午後からの練習だったら家で食べてから出るし、それ以外は持っていくし」

「分かった」

それから今日の出来事を話す。

こうして二人の生活が始まった。


2017.03.28

  • prev