きっとそういうこと

きっとそういうこと 02話

登校日で学校に行くが午前で終わりの為、午後から御幸とデートになった。

待ち合わせは下駄箱のある昇降口。

担任の話が長引いて、うちのクラスが最後の終礼となった。

「おーいー」

教室の出入り口に御幸がいた。

そしてクラスの視線が一斉に私に向いたのが分かった。

そんな視線はお構いなしに彼は私の所まで来た。

「このクラスいつも遅いの?」

「うん」

まずい・・・

クラスメイトの視線が突き刺さる様だ。

視線を避ける様に帰り支度を済ませると、御幸が私の手を掴んだ。

「付き合う事になったんでヨロシクな~」と言って教室を出た。

教室内では「マジか!?」「ウソー!!?」などの声が聞こえる。

「何もわざわざ言わなくても」

「牽制してっから良いの」

「牽制ね・・・」

私に告白してくる男など皆無だから、きっと自分が告白されない為の処置だろう。

卒業を控え、同じ歳に限らず後輩からも告白されてるのを何度か目撃したから。

「まずはメシな。とりあえず最寄りの駅からは離れようぜ」

「賛成」

手を繋がれたまま駅まで向かう。

電車はほどなくして来たものの、学生が多く乗っている。

とりあえず最後の方に乗り、端に寄る。

すると御幸が私を庇う様に立った。

なんだか普通のカップルみたいでこっぱずかしい。

「熱い?顔赤いけど」

「いや・・・うん」

ニヤニヤとした顔が近付いてくると、唇を私の耳元へ。

「照れてんの?」

「バカ」

「はっはっはっ。バカで結構」

そして私の腰に手をまわしてきて、体が密着した。

「ちょっ!」

「まあまあ」

そのままの体勢で、目的の駅に着いた。

電車を降りると、再び手が繋がれる。

「まだ慣れねえの?」

「・・・・・・慣れない」

御幸がどんな顔をしてるか確認する余裕すら無い。

けれど手を離して欲しいとも思えない。

「最初のデートで早食いもなんだし、ファミレスくらいで勘弁してな」

「大丈夫」

そしてファミレスに入った。

歩いていても会話はある。

学校の話が主だったが、それはそれで楽しい。

ご飯を食べてショッピングモールに入った。

歩くときは必ず手を繋ぐ彼に戸惑いながらも、見て回るだけだとしても楽しい。

外を歩くときは必ず彼が車道側。

慣れてるなーと思って彼を見れば「男の子なんで」とニヤリと笑う。

家まで送ってくれる事になり、最寄りの駅に。

その頃には手を繋ぐ事にも抵抗は無くなった。

「もうちょっと時間平気?」

大丈夫と告げれば近くの公園に寄る事になった。

温かい飲み物を買ってベンチに座る。

「いつもどこ遊びに行ってんの?」

「お茶しに行ったりカラオケ行ったり?」

「今度ボーリングとか行かね?」

「良いよ」

「・・・・・・」

ふと沈黙が続く。

缶から唇を離して彼を見ると、どんどん近付いてくる。

そっと重なる唇。

すぐに離れていくけれど、彼の伏せられた目が開いて行くのが物凄い色気だった。

「俺の方がハマってるかも」

私の頬に手を添え、親指が唇をなぞる。

「なにが?」

「一緒にいる時間が長い程、好きになってるって事」

御幸は時折恥ずかしい台詞をサラっと言う。

恥ずかしげもなく言われると、私の方が恥ずかしい。

「もう1回キスしても良い?嫌?」

「い・・・や、だったら・・・逃げてる」

私の言葉にふっと優しく笑った御幸の顔が近付いてくる。

私はそっと目を瞑って受け止める。

先ほどより押し付けられる様に重なる唇に、

優しくて温かい唇に、

涙が出そうになった。



2017/2/8

  • prev