登校日で学校に行くが午前で終わりの為、午後から御幸とデートになった。
待ち合わせは下駄箱のある昇降口。
担任の話が長引いて、うちのクラスが最後の終礼となった。
「おーいー」
教室の出入り口に御幸がいた。
そしてクラスの視線が一斉に私に向いたのが分かった。
そんな視線はお構いなしに彼は私の所まで来た。
「このクラスいつも遅いの?」
「うん」
まずい・・・
クラスメイトの視線が突き刺さる様だ。
視線を避ける様に帰り支度を済ませると、御幸が私の手を掴んだ。
「付き合う事になったんでヨロシクな~」と言って教室を出た。
教室内では「マジか!?」「ウソー!!?」などの声が聞こえる。
「何もわざわざ言わなくても」
「牽制してっから良いの」
「牽制ね・・・」
私に告白してくる男など皆無だから、きっと自分が告白されない為の処置だろう。
卒業を控え、同じ歳に限らず後輩からも告白されてるのを何度か目撃したから。
「まずはメシな。とりあえず最寄りの駅からは離れようぜ」
「賛成」
手を繋がれたまま駅まで向かう。
電車はほどなくして来たものの、学生が多く乗っている。
とりあえず最後の方に乗り、端に寄る。
すると御幸が私を庇う様に立った。
なんだか普通のカップルみたいでこっぱずかしい。
「熱い?顔赤いけど」
「いや・・・うん」
ニヤニヤとした顔が近付いてくると、唇を私の耳元へ。
「照れてんの?」
「バカ」
「はっはっはっ。バカで結構」
そして私の腰に手をまわしてきて、体が密着した。
「ちょっ!」
「まあまあ」
そのままの体勢で、目的の駅に着いた。
電車を降りると、再び手が繋がれる。
「まだ慣れねえの?」
「・・・・・・慣れない」
御幸がどんな顔をしてるか確認する余裕すら無い。
けれど手を離して欲しいとも思えない。
「最初のデートで早食いもなんだし、ファミレスくらいで勘弁してな」
「大丈夫」
そしてファミレスに入った。
歩いていても会話はある。
学校の話が主だったが、それはそれで楽しい。
ご飯を食べてショッピングモールに入った。
歩くときは必ず手を繋ぐ彼に戸惑いながらも、見て回るだけだとしても楽しい。
外を歩くときは必ず彼が車道側。
慣れてるなーと思って彼を見れば「男の子なんで」とニヤリと笑う。
家まで送ってくれる事になり、最寄りの駅に。
その頃には手を繋ぐ事にも抵抗は無くなった。
「もうちょっと時間平気?」
大丈夫と告げれば近くの公園に寄る事になった。
温かい飲み物を買ってベンチに座る。
「いつもどこ遊びに行ってんの?」
「お茶しに行ったりカラオケ行ったり?」
「今度ボーリングとか行かね?」
「良いよ」
「・・・・・・」
ふと沈黙が続く。
缶から唇を離して彼を見ると、どんどん近付いてくる。
そっと重なる唇。
すぐに離れていくけれど、彼の伏せられた目が開いて行くのが物凄い色気だった。
「俺の方がハマってるかも」
私の頬に手を添え、親指が唇をなぞる。
「なにが?」
「一緒にいる時間が長い程、好きになってるって事」
御幸は時折恥ずかしい台詞をサラっと言う。
恥ずかしげもなく言われると、私の方が恥ずかしい。
「もう1回キスしても良い?嫌?」
「い・・・や、だったら・・・逃げてる」
私の言葉にふっと優しく笑った御幸の顔が近付いてくる。
私はそっと目を瞑って受け止める。
先ほどより押し付けられる様に重なる唇に、
優しくて温かい唇に、
涙が出そうになった。
2017/2/8