年上に体当たりの恋5題

05.覚悟しといてください


澤村達3年の試合が全て終了し、彼らは引退していった。

縁下の新主将で新チームが始動。

もまた、ウインターカップが終わったらしい。

そして大学に進学するが、それは関東の大学に決まった。

「で?別れるのか?」

「いや、遠距離だな」

「まあ、今までもまめに会ってた訳じゃないしな」

「そういう事だ」

実は別れようとしたがに先手を打たれ、言い出せないままだ。

まあ、俺としても彼女を好きだしな。

だから可能な限り、彼女との時間を作って会う事をした。

卒業式が終わり、翌日には彼女は関東に向かう。

だから卒業前最後の土曜に1日デートをすることにした。

といってもやはり仕事があるので夕方からになったが。

友達から車を再び借りて遠出をする。

街を観光し、ストラップを買ってやった。

指輪を買おうと言ったのに、部活でつけていられないから普段使うものと言われたからだ。

ちょっとリッチな食事をし、車に乗り込む。

「今日、帰らないとダメか?」

そう聞くと友達の家に泊まると言って出てきたらしい。

こういう所は高校生だよな。

浅知恵とはいえ、正直に言えば後ろめたくもあり嬉しい。

そして車を走らせて予約しておいたホテルに向かった。

最初がラブホってのも色気が無いからだ。

先に俺がシャワーを浴びてビールを飲みながら彼女を待つ。

バスローブ姿で出てきたを見た時にヤバイと直感した。

年上の余裕を見せないと。

それだけが俺のプライドだった。

まあ、数回目には理性なんてぶっ飛んだけど。

何度抱いても欲が消える事は無く、眠る彼女をベッドに残してシャワーを浴びた。

熱めのシャワーを浴び体はスッキリした。

離れた時と同じ格好で眠る彼女に思わず笑みが漏れる。

それと同時に微妙に隠された部分と、真っ白な腕が晒されている。

「あ!」

ズボンのポケットからスマホを取り出しカメラを起動する。

きっと彼女が知れば怒られるだろう。

分かっていても離れてる間の事を考えたら・・・・・・シャッターを押していた。

本当はシーツをはいでしまいたいが、それは流石に気が引けた。

電源ボタンを押して画面を真っ暗にし、彼女の隣に横たわる。

しばらくこの手から離れる彼女を抱きしめて、俺も眠りについた。




来賓で呼ばれた卒業式。

なんつーか、感慨深い。

自分の時とは違うし、バレー部で関わった生徒達だ。

それに彼女も・・・。

式は誰の感情も意に介さず、滞りなく終了。

その後にバレー部のメンバーで別れを告げて3年を校門で見送った。

後ろから女の子の声が聞こえて振り向くと、達がいた。

「写真、一緒に撮ってくれませんか?」

「おお、いいぞ」

そして彼女の友達がカメラを構える。

カシャっと音がして彼女が俺を見た。

「いい女になって帰ってくるから待っててください」

「ほどほどにしてくれ。もうオッサンだから心臓もたないかも」

「まだまだ若いですよ」

も覚悟しとけよ?戻ったら離さないからな」

「・・・はい!」

そして笑顔で彼女を見送った。

きっと次に会う時には離れがたい程いい女になってるだろう。

彼等を祝福する様な青空を見上げ、俺は微笑んだ。


2017/1/16