年上に体当たりの恋5題

4話


東京遠征の打ち合わせがあり、練習時間より前に学校へ行った。

職員室で打ち合わせを済ませ、練習前に一服する為に車へ向かう。

ふと窓に顔を向けると、登校中の澤村とが並んで歩いていた。

(あの二人・・・知り合いか)

学年が同じなんだから当たり前と言えば当たり前。

なんだか・・・・・・・お似合いの二人だ。

澤村も柔らかい感じがするし、も雰囲気はフワフワしているしな。

考えてみれば彼女はモテるんじゃないか?

清水は近寄りがたい美人なら、彼女は守ってあげたくなるタイプなのだから。

もしかして澤村は彼女が好きなのだろうか?

澤村だけじゃない。

年頃の男なら好きになるであろうタイプの子なんだから。

今まで告られたりしてんじゃないのか?

くだらない考えが頭を過る。

階段に座り、壁に頭を付ける。

「はぁ・・・・・・」

こんな短時間で彼女を好きになるとは思いもしなかった。

基本的に独占欲と言うのは無縁だと思って来たし。

澤村にまで嫉妬するとは・・・

その時、下の方から上がってくる足音がした。

「烏養さん?どうかしたんですか?」

俺に気付いた彼女が駆け上がってくる。

俺の足元で止まり、膝に手をついて俺を覗き込んでくる。

・・・」

右てを差し出すと、彼女が手を握ってきた。

心配そうに覗き込んでくる澄んだ瞳。

この目が見ているのは俺だと分かっているのに。

彼女の手を引いて立ち上がる。

「どこ行くんだ?」

「教室に忘れ物をしてたので・・・」

「なるほど。部活頑張れよ」

俺は背を向けて階段を数段降りた。

すると彼女に呼び止められて振り向く。

が見えたと思ったら唇に温もりが。

「何かあれば話てくださいね」

そして廊下を曲がって行ってしまった。

俺は踊り場に頭を抱えてしゃがみ込む。

階段の高い位置からキスされた事で、彼女顔が一瞬とはいえ良く見えた。

長いまつ毛が揺れ、閉じられて行く綺麗な瞳。

そしてそっと重なる唇の温もり。

次に開かれた瞳には色気を含んでいた。

「あれ?烏養くん?どうかしたんですか?顔が真っ赤ですけど」

「あ、いや・・・一服して体育館に行くわ」

これ以上ニヤけ顔を見られたくない。

急いで車に戻って気持ちを引き締めた。



2016/10/11