4話
東京遠征の打ち合わせがあり、練習時間より前に学校へ行った。
職員室で打ち合わせを済ませ、練習前に一服する為に車へ向かう。
ふと窓に顔を向けると、登校中の澤村とが並んで歩いていた。
(あの二人・・・知り合いか)
学年が同じなんだから当たり前と言えば当たり前。
なんだか・・・・・・・お似合いの二人だ。
澤村も柔らかい感じがするし、も雰囲気はフワフワしているしな。
考えてみれば彼女はモテるんじゃないか?
清水は近寄りがたい美人なら、彼女は守ってあげたくなるタイプなのだから。
もしかして澤村は彼女が好きなのだろうか?
澤村だけじゃない。
年頃の男なら好きになるであろうタイプの子なんだから。
今まで告られたりしてんじゃないのか?
くだらない考えが頭を過る。
階段に座り、壁に頭を付ける。
「はぁ・・・・・・」
こんな短時間で彼女を好きになるとは思いもしなかった。
基本的に独占欲と言うのは無縁だと思って来たし。
澤村にまで嫉妬するとは・・・
その時、下の方から上がってくる足音がした。
「烏養さん?どうかしたんですか?」
俺に気付いた彼女が駆け上がってくる。
俺の足元で止まり、膝に手をついて俺を覗き込んでくる。
「・・・」
右てを差し出すと、彼女が手を握ってきた。
心配そうに覗き込んでくる澄んだ瞳。
この目が見ているのは俺だと分かっているのに。
彼女の手を引いて立ち上がる。
「どこ行くんだ?」
「教室に忘れ物をしてたので・・・」
「なるほど。部活頑張れよ」
俺は背を向けて階段を数段降りた。
すると彼女に呼び止められて振り向く。
が見えたと思ったら唇に温もりが。
「何かあれば話てくださいね」
そして廊下を曲がって行ってしまった。
俺は踊り場に頭を抱えてしゃがみ込む。
階段の高い位置からキスされた事で、彼女顔が一瞬とはいえ良く見えた。
長いまつ毛が揺れ、閉じられて行く綺麗な瞳。
そしてそっと重なる唇の温もり。
次に開かれた瞳には色気を含んでいた。
「あれ?烏養くん?どうかしたんですか?顔が真っ赤ですけど」
「あ、いや・・・一服して体育館に行くわ」
これ以上ニヤけ顔を見られたくない。
急いで車に戻って気持ちを引き締めた。
2016/10/11