第六話



視点



夕方、受付で仕事をしているとスマホが光って着信していると訴えている。

画面の表示は『 』。

仕事中なのでスマホを持ち、トイレに駆け込む。

こっそり電話に出ると「彼氏に浮気された」と泣く彼女。

けれど私の次の仕事は予約患者さんで抜け出す事が出来ない。

は「大丈夫、仕事中にごめんね!」と電話を切った。

仕事が終わって連絡をしても繋がらない。

もしかしたら仲直りをしたのかも?

そしていつも通り一也君にメッセージを入れる。

ここで既読が付かないのは良くある事だし、その日は普通に眠りに着いた。

翌日の出勤間際、一也君から会いたいと連絡が来た。

私は了承する旨を返し、仕事につく。

そして昼休み、からの電話が鳴る。

「もう!心配したんだよ?」

『ごめん・・・どうしよう・・・』

「どうかしたの?」

『昨日・・・一也君と寝た』

「・・・・・・え?」

『そうしたら彼から電話が来て、誤解だから話がしたいって!』

「・・・・・・」

『どうしよう!!!!!』

大慌てなに対して、私は何故か落ち着いていた。

私の中で何かがストンと落ちて収まった感じが近いかもしれない。

「・・・はどうしたいの?」

『わからない』

「彼氏の話、ちゃんと聞いてあげたら?」

『でも一也君が』

「彼と付き合いたいの?」

『わからない』

「まずは順番に、1つずつ片付けないと」

『・・・・・・うん』

「大丈夫。順番にゆっくりね」

『・・・・・・うん。ありがとう』

そして電話を切った。

そうか・・・・・・二人が・・・・・・

私は急いで化粧室へ向かい個室に入って鍵を閉める。

便座の蓋を閉めてその上に体育座りをして膝に頭を乗せた。

「うっ・・・ふっ・・・・・・」

泣き声が漏れないよう腕で顔を囲う。

しばらくして涙が止まり、天井を仰ぐ。

何とか気持ちを落ち着かせ、個室を出た。

化粧が落ちてしまうが仕方ない。

バシャバシャと顔を洗ってロッカーへと急ぐ。

厚化粧をしてスマホを立ち上げ、一也君に断りのメッセージを送った。

昨日の今日で彼に会う勇気は無い。

もう少し頭の中で整理したい。

『別れ』と言う言葉は常にあった。

あとはどうやって切り出すか。

彼から切り出してくれれば素直に受け入れるのに。

今回の事を彼は黙っているつもりなのだろうか?

その時に私は一也君と向き合えるのだろうか?

答えを出すには、時間が必要だった。


2017.05.16