第九話



目が覚めるとまだ彼女は眠っていた。

真っ裸で寝たのもあって、寒さからか俺に抱き着いて眠る彼女が可愛い。

片腕で彼女を抱き寄せ、反対の手で髪を撫でる。

こんな日常が続けば・・・・・・続かねえよな。

前の男と職場は同じだし、住んでる場所も知っている。

まあ、やる事は決まってるけどな。

行動を起こすにしても、まずは彼女が起きないと始まらない。

起きてもらって話を勧めたい気持ちと、このまま寝顔を見ていたい気持ちがせめぎ合う。

「あーあ・・・・・・」

これがハマるって事か。

今となっては見合いで貰った写真を捨てる前に見た自分を褒めてやりたい。

これはもう、佐代子さんに感謝しないとな。

「ん・・・」

「起きた?」

「・・・うん?」

「・・・・・」

そういえば彼女の寝起きは悪そうだったな。

電話でも「うん」しか言わなかったしな。

「・・・・・・おはようのキスしてくんない?」

「・・・・・・うん」

すると彼女は俺の首に腕を絡め、互いの距離を縮めて唇を寄せて来た。

・・・・・・まずい、可愛すぎるだろ。

ヤバイと思ってても止められない浅はかな自分。

柔らかな唇から舌を入れて絡め合う。

そして彼女の背中に指を滑らせると、彼女の体がビクンと反応した。

「・・・・んっ!?」

その時、多分覚醒したんだと思う。

彼女の掌が俺の胸を押す。

「起きた?」

「お、おおおおお起きました!おはようございます」

「はっはっは」

「何で笑うんですか?」

「可愛いなーと思って」

「なっ!?」

やる事やってて恥じらうって・・・・・

こういうのもハマる理由なのかもしれない。

そして彼女を腕の中に閉じ込める。

「あのさ、真面目な話なんだけど」

「なんでしょう?」

腕の力を緩めて、彼女と視線を合わせる。

正直、裸でする話じゃないのは理解してるけど、ここにいればまたあの男が来る。

「俺の家に来ない?勿論、結婚を前提とした恋人として」

「え?」

想像もしてなかったというおどろきに満ちた顔。


「同棲ってヤツ。最初から結婚したいって言ってたじゃん?」

「・・・・・・」

「え?ダメ?俺って弄ばれてるだけ?」

「ちがっ!!」

そして彼女の瞳からあふれ出る涙。

俺はその涙を親指で拭う。

「この涙ってどっちの意味?」

「・・・・・・嬉し涙」

「そっか。また目が腫れそうだね」

「一也さんのせいだから」

「そっか。でもの事、好きだから」

「私も・・・一也さんが好きです」

「え?マジ?」

「嘘です」

「えー」

「嘘です」

「どっちが?」

「さぁ?」

「じゃあ、嘘がつけない様に塞ぐしかないな」

再び腕に力を入れて彼女を抱き寄せてキスをした。


2017/11/22