ここから始まる恋物語 第13話





仕事が終わって新しい家に帰る。

バックから鍵を取り出してドアノブに差し込もうとしたら、ドアが開いた。

「あ・・・・・・そっか」

今日から一人暮らしでは無いのだと実感。

玄関で靴を脱いでリビングに入ると、良い匂いが部屋を満たしていた。

「お帰り」

「あ、一也くんもお帰りなさい」

「連絡くれれば迎えに行ったのに」

「駅から歩いて5分ですよ?」

「5分でも早く会いたいって気持ち、理解して欲しいんですけど」

キッチンから話しながら出て来た一也さんは、私の所まで来て抱きしめてくる。

顔が近付いてきて目的が分かったから待ったを掛けるけど「ダメ」と言われてキスを される。

久しぶりの甘い感覚。

唇が離れたのに腕は離れていかない。

「あ、あの」

「ん?」

「ん?じゃなくて。離してください」

「だから敬語」

「手洗いをしたいから離して」

「仕方ないなー」

クスクス笑いながら腕が離れた。

私はカバンを置いて上着を脱ぎ、洗面台に行って手洗いとうがいをする。

これは彼と付き合い始めてから気を付ける様にしている事だ。

そしてリビングに戻ると、焼き魚の匂いがした。

「今魚焼いてるからちょっと待ってて」

「あ、うん」

私もキッチンまで行く。

そこには既に夕飯のおかずが出来ていた。

「凄い・・・」

「そう?」

「栄養バラン スとか考えてる?」

「数値の計算とかはしてないけどね。親父が和食好きだったし、こういう料理が多かったのは確かかな」

「二人暮らしだっけ?」

「そうそう」

「東京ですよね?」

「江戸っ子だからね。いずれ戻るつもりだけど」

「あ、そうなんだ」

「親父も年だし、結婚したら建て替えして一緒に住みたいんだよね」

「お父様も喜ぶんじゃないですか?」

「そう思う?」

「え?あ、うん・・・・・・・え?」

「だって親父とも一緒に住む事になるじゃん?」

「は?あ・・・え?」

「まあ、その話は追々に。魚も焼けたし、飯にしよう」

「あ、手伝う」

「んじゃ、これ運んで」

そして 一也くんの作った料理を食べた。



片付けをして交代でお風呂に入る。

今日は私が後で、髪の毛を乾かして寝室に行く。

電気は点いていて、ベッドにうつ伏せになって一也くんは何かを見てた。

「あ、もうちょっとだけ待って」

「うん・・・。これ、何?」

「スコアブック」

「へぇ・・・」

彼が見ている隣に座って一緒に眺める。

変な形の所に数字が入っているけど意味はさっぱり分からない。

「・・・・・・・っと、ごめん。終わった・・・?」

「一也くんはわかるの?」

「え?勿論・・・ああ、見方がわからないのか」

「うん、全く」

「まあ、それは今度ゆっくり教えるからさ」

「ん?・・・うわっ!?」

「離れてた分、を感じさせてよ」

「あ・・・」

シャツに入り込んで来た手が、ただのじゃれ合いじゃない事を教える様に這い上がってくる。

その手と共に快感が生まれて行く。

「ちょっと、寂しかった」

そう素直に口に出すと、一也くんの動きがピタっと止まった。

「一也くん?」

「明日も仕事だからと思ってたのに・・・・・・・煽ったのだからな?」

「え?あっ・・・」

そして結局、眠れたのは日付が変わってからでした。




2017/09/07