ここから始まる恋物語 第10話





ついにプロ野球のシーズンが開幕した。

あれから雑誌には2度程掲載されていたけれど、シーズン前と言う事もあって終息しそうだった。

そして私達が会える時間が物凄く減った。

彼のいない部屋に行くのも気が引けたから合鍵をくれると言われたけど丁重にお断りした。

けれど結局「持つだけ持ってて」と言われ、渋々受け取る。

彼がいる時に使うにしても、寝てるのを起こすのは気が引ける。

それからと言うもの「一緒に住もう」と話題を振ってくる事が多くなった。

けれど私は首を縦に振れない。

「通い妻だな・・・」

土曜の朝早くに彼の部屋に向かう。

寝ているだろうから合鍵を使って中に入る。

けれど大抵「おはよう」と挨拶されてしまうのだ。

眠りが浅いのかと思うけど、泊まった時は私の方が先に目が覚めてたし。

が来るとわかると目が覚める」と本人は言う。

逆にこれでは体調を崩すのでは?と心配になる。

そして仕事が終わってテレビを点けて野球をかける。

テレビで野球を見るのは小学生の頃以来だ。

画面では対戦チームの攻撃らしく、マスクを被ってるのが一也くんだろう。

足の間で指を動かしサインをピッチャーに伝える。

そしてピッチャーが頷いて投げる体勢になった。

「うわっ!!!!」

たったそれだけの事を見ただけで、全身に鳥肌が立った。

ピッチャーの投げたボールは一也くんのミットに収まって3アウトチェンジ。

一也くんがマスクを外しながらベンチに戻って行く。

ただ野球を見ているだけなのに…。

そしてうちのチームの勝利でゲームが終わる。

「ちゃんと考えなきゃ・・・」

自分は凄い人と付き合っているんだと自覚させられた。




あれこれ考えているうちに月日は流れて行く。

「最近ぼーっとしてんな?御幸とうまく行ってないのか?付き合い出したんだろ?」

「何で金田課長はそこまで知ってるんですか」

「結構御幸と仲良しだぞ?俺」

「・・・・・・」

「・・・・・・同棲しても良いぞ?」

「っ!!!?」

「あはははははっ!!!!良い反応だ!」

「私で遊ばないでください!!」

「御幸でも遊んでる」

「ドヤ顔で言われても」

と付き合い出してから好調みたいだしな。マスコミにバレたら何とかしてやる」

「そういう問題ですか?」

「違うのか?」

「まあ、それもあるってカンジです」

「ま、ちゃんと話せよ?」

「はーい」

仕事が終わって駅に向かう途中、何となく不動産屋に貼られた間取り図を見てしまった。



2017/08/30