ここから始まる恋物語 第6話
「とりあえず食べよう」
そう言って御幸選手の手が離れて行き、テーブルに並んだ料理を口にしていく。
私はと言えば、まさかの展開に頭がグルグル。
何とか食べてお店を出ると、助手席のドアが開けられて車に乗り込んだ。
会話らしい会話もないまま、車は御幸選手のマンションの地下へ滑り込んでいく。
車から降りて彼の後に続きエレベーターに乗り込む。
無言のまま彼の部屋に上がった。
「あ、そこに面白そうな映画借りて来たんだ。観た事ある?」
ベッドの上に投げ出されている見慣れたレンタルショップの袋。
それを手にして袋の中を覗きこんでみる。
中には2本のDVDが入っていて取り出してタイトルを見る。
「観た事ありますよ。でも良い映画なんで何度でも観れます」
「なら良かった」
キッチンからトレイにいつもの映画セットを乗せて戻ってくる。
いつもと変わらない御幸選手。
私もいつも通りにデッキにDVDをセットして、ベッドに上がり込んだ。
ほどなくして映画が始まる。
映画の内容としては地球滅亡寸前の話し。
そこに描かれる人間模様が複雑かつ、ミステリアスで面白い。
もうすぐエンディングになると言う時、ふと隣に視線を移した。
「っ!!!?」
「観ないの?」
「み、観ますけど・・・御幸さんは観ないんですか?・・・っ!?」
そう言った瞬間、私の視界が揺れた。
腰の辺りを掴まれて下に引きずり降ろされたらしい。
私の両脇に腕を付く彼と、クッションの厚みの上にいる私との体は密着してると言っていいだろう。
「み、み、みゆき」
「名前」
「か、かずやくん」
「さっきイチャイチャしたいって言ったじゃん」
「じょ、冗談じゃ」
「違うよ。大真面目な話」
「でも」
「ごめん、そろそろ限界」
だんだんと彼の顔が近付いてくる。
キスされるのは分かったけど、逃げようと思わなかった。
そっと触れるだけのキス。
重ね合わせた時間はわずかだったけど、すぐにもう一度重なり合った。
再び離れて行った唇を追う様に目を開くと、彼と視線が絡んだ。
その目が不安で揺れてる様に見えたのは、自分が揺れてるからだろうか?
名前を呼ぼうとして開いた唇が彼に塞がれる。
今度は生易しいものでは無い。
舌が入り込んで口腔内を暴れ回る。
「あっ・・・まって・・・・んっ・・・・・」
苦しくてもがいても腕を取られ、自分の吐息が甘い物へと変化していく。
その変化に心がついて行かない。
眼鏡越しに見える目が嘘をついている様にも見えない。
欲の浮かんだ目がセクシーだな・・・
「・・・・・・このまま続けて良いの?」
「え?いや、ムリムリムリ!!!!」
言われてる言葉の意味が時間差で脳に到達する。
鼻と鼻が付きそうな距離で言われて焦ってしまう。
すると御幸さんは溜息を付いて私の肩の頭を乗せた。
「あ、あのっ!」
「もうちょっとだけ・・・」
耳を掠める少し低くて甘い声と吐息。
密着してるだけなのに、何でこんなにも恥ずかしいのだろうか。
私から動く事も出来ず、彼が動くのを待った。
しばらくして「送っていく」と離れるまで密着していた。
「送ってくれて、ありがとうございます。おやすみなさい」
いつも通り窓越しにお礼を言う。
いつもと違うのは、
「さっきの本当の事だから。ちゃんと考えておいて」
そう爆弾発言を投下していった事だった。
2017/08/10