ここから始まる恋物語 第5話
【球団の要:御幸一也に熱愛発覚】
週明けの水曜、そんな見出しの雑誌が一冊私の机の上にあった。
「?」
例の記事が出たのだろうか?
何となくペラペラとページを捲って行く。
「な、なにこれーーー!!!!」
出て来たページに映っているのは例のアナウンサーなどではない。
私だーーーーー!!!!!
写真だけ見れば、仲良さそうにカップルがコンビニ袋を覗き込んでる姿だ。
私の顔は御幸選手の肩で丁度隠れている。
「早かったな」
ニヤニヤしながら声を掛けた来たのは金田課長。
今にもお腹を抱えて笑い出しそうな顔をしてるのがムカツク。
「良いんですか?うちの球団のメンバーですよ?」
「ん?御幸から聞いてないのか?」
「は?何をですか?」
その瞬間、金田課長はお腹を抱えて笑いだした。
そしてひとしきり笑い終わったら私の頭をポンポンと叩いた。
「うんうん、こっちは大丈夫だから頑張れ」
「は?」
「お前は一般人だから取材も来ないしな。一緒にいる時だったら御幸が対処するだろう」
「え?まだ続けるんですか?」
「お前、それこそ『御幸は女をとっかえひっかえ』なんてレッテル貼るつもりか?」
「 あー・・・」
「まあ、頑張れ」
そして口元を押さえて、また笑いを我慢している様だった。
金田課長の言う通り、私に対する取材などは無かった。
御幸選手から連絡が来たのはその日の昼で、夜に会う事になった。
「何にも被害無い?」
「私は何も無いですよ」
「それなら良かった」
連れてきてくれたのは飲茶の店。
一皿が小さくて二人だけでも沢山の料理を食べれる洒落たお店だった。
「とりあえず今回の事は予定通りなんですよね?」
「ん?まあ、一応な・・・・・・」
「えっと・・・」
「ん?」
「このお芝居って、いつまで続くんでしょうか?」
「やっぱ迷惑?」
「いえ、なんというか・・・御幸選手の方が困るのでは?」
「・・・・・・」
「あ、一也くん」
「俺は困んねーけど?」
「え?そうなんですか?」
「最初にも言ったけど、俺から持ち掛けてる事だって」
「まあ、そうですけど・・・」
すると御幸選手がおしぼりで手を拭いて、頬杖をついた。
じーっと見られてるのも嫌なものだ。
しかも悪戯する子供の様な笑顔で。
「なんでしょう?」
「提案だけど、どうせなら俺の彼女にならない?」
「・・・・・・・・・・は?」
「だから、俺と付き合ってよ」
「・・・・・・今、付き合ってますよね?」
「お芝居でね。だから手も出してない」
「なっ!?」
「キスしたい、それい以上の事もしたい」
「ちょっ!待って!!!」
「ちゃんとイチャイチャしたいんだけど」
「イチャっ!?」
「だから俺のものになってよ」
頬杖をついていない手が伸びてきて、取り皿に沿えていた私の手を包み込んだ。
2017/08/07