第十一話

「……っ……起きろ、

深く沈んでいた意識が無理矢理浮上させられる。

起きろ・その言葉と同じ回数顔にキスされている。

そのキスが首筋に移動してきたので一気に目が覚めた。

「っ!!!!!」

「あ、起きたか。残念」

「て、てつっ・・・なにっ!」

「皆が起き出す前に寮に戻った方が良いと思って」

「え?あっ……」

慌てて部屋を見渡して時計を見る。

まだ4時過を指している。

「今ならシャワーする時間あるぞ」

「ああ、うん・・・」

我に返ると自分は真っ裸。

鉄朗は既にシャワーを済ませたのか、髪が濡れてあの寝癖が消えている。

上半身裸で首にタオルを掛け、ジャージを履いていた。

「浴びないの?一緒に入るか?」

「なっ!!!!もう鉄朗浴びたんでしょ!」

「何回でも関係ないんですぅー」

「もう!!!」

単に裸でウロウロしたくないんだってば!

今の自分から服は見つけられないし・・・仕方ない。

シーツを押さえて下着を探そうとしたら体がフワリと浮上する。

「風呂場まで運んでさしあげますよ、お嬢様」

と、シーツごとお姫様抱っこされた。

「どうせ全部見たのに」

「そ、そういう問題じゃないんです!」

「ハイハイ。の服は脱衣所に置いといた。全部な」

ニヤリと笑った鉄朗は私を脱衣所に下ろして部屋を出て行った。

巻いていてシーツを取り、浴室へ。

鉄朗が入ったのもあって。中は温かかった。

「うっ……痛っ…」

普段使わない筋肉を使ったのもあり、あちこちに痛みがある。

熱めのお湯を出して頭からかぶる。

昨日のせり上がってくるモノは無くなったけど、新たな問題が浮上してしまった。

鉄朗の事は嫌いじゃないけど身内の様な感覚だったのは確かだ。

一也以外との経験が無い以上、上手いとか下手とかそういうのは分からない。

1つだけわかるのは、鉄朗が私を想ってくれてるのは伝わったって事。

とりあえず体を洗って寮に戻るのが第一だ。

そしてホテルを出てから鉄朗は私に触れることは無かった。







あれから一か月が経過した。

この一か月の間はバレーにだけ集中してたと思う。

一也からの連絡はあったけど会わないで来たし、鉄朗とも今まで通りにしている。

その静寂が破られたのは体育館まで来た一也によって。

「突然悪ぃ。でも俺もシーズン始まっちゃうし、それまでに答えだしたいからさ」

逃げていた結論は先延ばしになっただけで何も解決していない。

「着替えてくるから待ってて?」

「わかった。急がないで良いよ」

私は一也に背を向けてロッカールームへ向かう。

すると角を曲がった所で腕を掴まれた。

「会うんだ?」

「………うん」

「分かった」

鉄朗はそう言って私が来た道を歩いていく。

これで鉄朗とも話をしないといけなくなった。

けれどもう、決めないといけないのかもしれない。

着替えを済ませて、一也の車に乗り込んだ。

「なあ、あの黒尾って人とは親しいの?」

「高校の頃から知ってるからね」

「へぇ…俺と同じか」

「……そうだね」

そう答えたら車が急に止まった。

「びっくり……っ!?」

その瞬間に手首をギュッと捕まれ、彼の手が顎に掛かって運転席側を向かされた。

「あの人に抱かれたのか?」

「なにいってっ…!!!?」

の意思を尊重してる場合じゃなかったな」そういって一也は自嘲気味な笑みを浮かべる。

そして真っすぐ私を見た。

「答え、聞かせてよ」

その目は今まで目にしたことが無い何かを宿していた。


御幸を選ぶ黒尾を選ぶ



2018/10/29

アトガキ

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