駅を出て彼の後を付いて歩く。
何となくその背中を見ていると、彼の背中が隆起しているのが分かる。
いつも男友達と騒いでチャラチャラしてる様に見えるのに、きちんとした一面が伺える。
何と言うか・・・・・倉持が物凄く「男」に感じた。
その途端、一緒に寝てたり、さっきのキスだったりが物凄く恥ずかしくなった。
「っ!!!?」
ちょっと待って!
私は彼氏でも無い男と一緒に寝て、あまつさえ電車の中でキス!!?
いやいやいやいやいや。
そもそも倉持は何で私にキスしたの!?
「」
さっき耳元で名前を呼ばれたのがリフレインする。
あーーーダメだ。
頭の中がパニック状態!!
「なにやってんだ?具合悪いのか?・・・・・って、顔真っ赤だぞ!!?」
しゃがみこんだ私の腕を掴んで立たせようとしたのだろうけど、私の顔が真っ赤なのを見て慌ててるようだ。
「具合悪いなら言えよ!!!!」
「ちがっ!?具合悪いんじゃないから!!」
「ほんとか?なら良いけど・・・」
そう言って倉持は息を吐き出した。
「あ、あのさ、さっき・・・何でき、キスしたの?」
「お前・・・・・・それを今聞くか?」
と、今度は呆れたように息を吐いた。
そして場所を移すぞと言われて近くの公園に入ってベンチに座る。
入り口の所で紅茶とスポーツドリンクを買って紅茶をくれた。
「ありがとう」
受け取ったは良いけど、何となく飲む気になれない。
それは倉持も同じらしく、プルトップを開けないでいた。
何をどこから切り出せばいいのか分からないでいると、倉持が「あーーー!」と大きな声を出した。
そして立ちあがって私の前に立った。
「どうやって切り出せば良いかわかんねえし。ストレートに言うわ。好きだ」
「え?」
「だから、お前が好きだって言ってんだよ」
「・・・・・・」
「なんか言えよ!」
「なんか」
「お前な!!!!」
「そんな事言ったってしょうがないじゃん!もう本当に頭がこんがらがってんだもん」
「逆切れすんな!!」
「だって倉持が男なんだもん!」
「そんなの最初からだろ!!」
「だって今まで友達だったのに急にっ・・・んっ・・・・・」
喋っていた顎を捉まれ、唇が重ねられる。
強引に重なった唇が少し離れ「好きだ」と低い声が告げて再び重なる。
上を向いているから舌がすんなり入り込み、口の中を動き回る。
絡めた舌が吸われ、離れていく。
その時、私のスマートフォンが空気を読まずに鳴り出した。
「「・・・・・・」」
私はバッと立ち上がって電話に出る。
「も、もしもし」
と言った所で腰に腕が巻き付いて来た。
私の背中と彼の胸がピタリとくっつく。
「え?」
私の言葉は倉持にではなく、電話の相手に対する「え?」だった。
電話を切ると後ろで「誰?」と聞かれた。
「どうしよう・・・家が無くなる」
「は?」
彼の腕から逃れて向き合う。
そして大家から立ち退くように言われたと告げる。
ぶっちゃけ古いから立て直したいとの事。
転居するなら費用は出してくれるらしい。
という事は次が決まるまで私はどうすればいいんだろうか?
「ちょっと待て。まず1つづつ片付けて行くぞ」
「え?ああ、うん、そうだね・・・」
「まだの気持ち聞いてねえんだけど」
「気持ち・・・うん、え?」
「別に断られても追いだしたりしねえし」
「え?あ・・・えーっと・・・」
「・・・・・・」
「何で電車で泣いたんだ?」
「あれは倉持が・・・・」
「俺が?」
「女の子と・・・・・・・・ああ、そうか」
「なんだよ」
「思ってたより倉持の事好きなんだなって」
「なっ!?」
「あ、顔真っ赤」
「うるっせ!!ほら、行くぞ」
そういって倉持は私の手を取り歩き出した。
だから私はその腕を引いて振り向いた倉持の頬にキスをする。
「好きだよ、洋一」
「おまっ!?ワザとやってんだろ!!!!」
真っ赤な顔をして前を向いて歩き出す彼の手をぎゅっと握ると、ぎゅっと握り返してくれた。
2017/09/22