第四話

駅を出て彼の後を付いて歩く。

何となくその背中を見ていると、彼の背中が隆起しているのが分かる。

いつも男友達と騒いでチャラチャラしてる様に見えるのに、きちんとした一面が伺える。

何と言うか・・・・・倉持が物凄く「男」に感じた。

その途端、一緒に寝てたり、さっきのキスだったりが物凄く恥ずかしくなった。

「っ!!!?」

ちょっと待って!

私は彼氏でも無い男と一緒に寝て、あまつさえ電車の中でキス!!?

いやいやいやいやいや。

そもそも倉持は何で私にキスしたの!?



さっき耳元で名前を呼ばれたのがリフレインする。

あーーーダメだ。

頭の中がパニック状態!!

「なにやってんだ?具合悪いのか?・・・・・って、顔真っ赤だぞ!!?」

しゃがみこんだ私の腕を掴んで立たせようとしたのだろうけど、私の顔が真っ赤なのを見て慌ててるようだ。

「具合悪いなら言えよ!!!!」

「ちがっ!?具合悪いんじゃないから!!」

「ほんとか?なら良いけど・・・」

そう言って倉持は息を吐き出した。

「あ、あのさ、さっき・・・何でき、キスしたの?」

「お前・・・・・・それを今聞くか?」

と、今度は呆れたように息を吐いた。

そして場所を移すぞと言われて近くの公園に入ってベンチに座る。

入り口の所で紅茶とスポーツドリンクを買って紅茶をくれた。

「ありがとう」

受け取ったは良いけど、何となく飲む気になれない。

それは倉持も同じらしく、プルトップを開けないでいた。

何をどこから切り出せばいいのか分からないでいると、倉持が「あーーー!」と大きな声を出した。

そして立ちあがって私の前に立った。

「どうやって切り出せば良いかわかんねえし。ストレートに言うわ。好きだ」

「え?」

「だから、お前が好きだって言ってんだよ」

「・・・・・・」

「なんか言えよ!」

「なんか」

「お前な!!!!」

「そんな事言ったってしょうがないじゃん!もう本当に頭がこんがらがってんだもん」

「逆切れすんな!!」

「だって倉持が男なんだもん!」

「そんなの最初からだろ!!」

「だって今まで友達だったのに急にっ・・・んっ・・・・・」

喋っていた顎を捉まれ、唇が重ねられる。

強引に重なった唇が少し離れ「好きだ」と低い声が告げて再び重なる。

上を向いているから舌がすんなり入り込み、口の中を動き回る。

絡めた舌が吸われ、離れていく。

その時、私のスマートフォンが空気を読まずに鳴り出した。

「「・・・・・・」」

私はバッと立ち上がって電話に出る。

「も、もしもし」

と言った所で腰に腕が巻き付いて来た。

私の背中と彼の胸がピタリとくっつく。

「え?」

私の言葉は倉持にではなく、電話の相手に対する「え?」だった。

電話を切ると後ろで「誰?」と聞かれた。

「どうしよう・・・家が無くなる」

「は?」

彼の腕から逃れて向き合う。

そして大家から立ち退くように言われたと告げる。

ぶっちゃけ古いから立て直したいとの事。

転居するなら費用は出してくれるらしい。

という事は次が決まるまで私はどうすればいいんだろうか?

「ちょっと待て。まず1つづつ片付けて行くぞ」

「え?ああ、うん、そうだね・・・」

「まだの気持ち聞いてねえんだけど」

「気持ち・・・うん、え?」

「別に断られても追いだしたりしねえし」

「え?あ・・・えーっと・・・」

「・・・・・・」

「何で電車で泣いたんだ?」

「あれは倉持が・・・・」

「俺が?」

「女の子と・・・・・・・・ああ、そうか」

「なんだよ」

「思ってたより倉持の事好きなんだなって」

「なっ!?」

「あ、顔真っ赤」

「うるっせ!!ほら、行くぞ」

そういって倉持は私の手を取り歩き出した。

だから私はその腕を引いて振り向いた倉持の頬にキスをする。

「好きだよ、洋一」

「おまっ!?ワザとやってんだろ!!!!」

真っ赤な顔をして前を向いて歩き出す彼の手をぎゅっと握ると、ぎゅっと握り返してくれた。


2017/09/22

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