第二話

目が覚める目の前には喉仏が見える。

え?喉仏?って鼻先が温かい。

「っ!!!?」

どうやら私は抱きついて眠っているらしい。

声に出さなかった自分を褒めてやりたい!!!!

抱き付いてる相手は・・・・・・倉持だな。それ以外あるまい

って、冷静に分析してる場合じゃなーーーい!!!!

そーっと彼の脇の下から腕を抜く。

「んー・・・・・」

ひとまず起こさないで抜け出せそうだ。

いや、抜け出せたは良いけどベッドから出るには彼を乗り越えなくてはならない。

なんか人生の様だ・・・・・・・って、上手い事言ってる場合じゃない。

ゆっくりと動き、彼を跨ぐ。

(私はナマケモノ、ナマケモノになりきるんだ!)

ゆっくりこっそり 移動し、彼を起こさずにベッドを降りる事に成功する。

鞄の中から手鏡を出し、自分の顔をチェックする。

とりあえず顔はともかく、酷い寝癖もなさそうだ。

なので鞄を担いで寝ている彼に頭を下げて心の中で感謝を伝える。

ゆっくりこっそり階段を降りる・・・・・・。

「「あ・・・」」

後数段と言う所でお母様らしき方と遭遇してしまった。

「・・・洋一のカノジョ?」

「あ、いえ。大学の・・・」

「よういちーーー!彼女帰っちゃうわよー?」

と説明をしようとしたら、階段したから大きな声を出した。

違うって説明を聞いてくれないんだね・・・

「あの!彼、まだ寝てるので」

「うるっせーな・・・・・・あ」

すると頭をボリボリと掻きながら倉持が現れた。



「何だ、彼女じゃないのね」

倉持が身支度を整え、私もキッチンで朝食を頂くことになった。

その際にお手伝いをしながら、事の経緯をお母さんに話したのだ。

「彼女だったら夜中にコッソリ連れてくる真似しねえよ!!」

「それならちゃんが今から彼女になれば良いんじゃない?」

「「え?」」

「顔は怖いし口は悪いけど良い子なのよ?」

「息子アピってんじゃねえよ!!」

「はいはい。洋一の事はともかく、水道が直るまでうちにいてくれても構わないわよ?」

「はぁ!?」

「いや、それは厚かましいので」

「でも困ってるのよね?今日は土曜だしお友達も遊びやバイトで捕まらないんじゃない?」

「うっ・・・」

「女の子がいればウチも華やぐし、客間もあるから。いいでしょ?洋一」

そうしなさいよ、とウッキウキのお母様からの光が眩しくてノーと言えない。

倉持もお母様には歯向かえないらしく言葉に詰まっている。

「と言うか、倉持は良いの?」

「俺?今日は寝てる予定だったし、明日は練習試合だしな。が良いなら俺は良いぜ」

と、ご飯の後のお茶をすすりながらそう言った。

ならばお言葉に甘える事にした。



「「・・・・・・・・・」」

私と倉持は駅にいた。

お母様に「ゴロゴロしてないでデートにでも行ってらっしゃい」と追い出されたのだ。

すると私のスマホが鳴り、相手は大家さんだった。

しばらくかかりそうだと言われたので、急遽私の家に向かう事になった。

「せっかくの休みにごめんね」

「別に・・・」

とりあえず部屋に上がって貰い、荷物を纏める。

2,3日で終わると思ってたけど・・・追加の衣類と学校の道具を纏める。

そして荷物を持ち上げて出ようとすると倉持がそれを持ってくれる。

お礼を言えば「ん・・・」としか返ってこないけどね。

そして早々に倉持家に向かった。

用意して貰った客間に荷物を置いて台所に向かう。

「手伝います」

「あら、お客さんなんだから良いのよ」

「いえ、居候なんで手伝わせてください」

とお願いして彼女の隣に立って料理を手伝った。

そして食事はお爺さんも増え、にぎやかなものとなった。

久し振りの家族団らんという食事だった。

それから片付けを手伝って、お風呂を借りて入る。

なんだか実家にいる様な感じだ。

「お風呂開いたよー」

倉持の部屋をノックして声を掛けると「おぉ」と返ってきた。

「開けて良い?」「ああ」

そしてドアを開けると大きなカバンに荷物を詰めているところだった。

バットにグローブに ・・・・・色々あるんだ。

「洗面台の所にドライヤーあるぞ」

「ん?ああ、面倒だから使わないんだよね」

「ふーん」

「それより明日の試合って観に行っても良い?」

「は?お前、野球に興味ねえだろ」

「知らない訳じゃないよ」

「まあ、いいけど」

「それじゃあ、おやすみ~」

そして出る時間を聞いて部屋を後にした。


2017/09/14

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