第四話

次の日は土曜日で、ゆっくりしようかと思ってたのに案外と早く目が覚めてしまったからベッドから起きだすことにした。

洗濯機を回して掃除をしているとエントランスからじゃない、部屋のインターフォンが鳴った。

『黒尾だけど』

私はあわてて玄関に向かってドアを開けた。

「おはようございます。昨日はありがとうございました」

「いや、俺も下で人を待たせてたから中途半端になっちゃって。あの後大丈夫だった?」

「あ、はい。玄関先でなんですし、あがりませんか?」

「……いいの?」

「はい、掃除をしててそのままですが」

スリッパを出して先に部屋へ戻って電気ケトルでお湯を沸かす準備をしてると彼が部屋へ入って来た。

コーヒーを淹れて彼に出し、私も腰を落ち着ける。

「昨日のって元カレ?寄りを戻しに来たの?」

「どうなんですかね?私が未練タラタラだから寄りを戻してやるよって感じでしたけど」

「未練あるの?」

「いえ、全然。むしろ今じゃ迷惑でしかないです」

「それなら安心した。むしろ俺が邪魔したかな~って思ってたからさ」

「とんでもない。本当に助かりました」

私の言葉に黒尾さんはほっとしたのか、小さく息を吐き出した。

(本当に心配してくれてたんだな)

そして黒尾さんが部屋をさっと見渡して私を見て、ニヤリと笑った。

ちゃん、これから暇?」

「えっと…特に予定はないですけど」

「バレーボール好き?」

「出来ないですけど。テレビでちょっと見るくらいですかね?」

「それじゃあ、着替えて俺と試合見に行かない?」

「これからですか?」

「そうそう。木兎の試合があるんだよ」

「あ、みてみたいです!」

「それじゃあ、決まりな」

待ち合わせ時間を決め、黒尾さんは部屋に戻って行った。

私も急いで掃除を済ませ、シャワーを浴びて支度を済ませる。

と言っても着替える段階になって頭を抱える事になる。

「バレーボールって室内だよね?何着て行けば良いんだろ?」

スポーツ観戦なんてした事がない。

「フレアスカート……え?ロング?それともパンツが良いのかな?」

そもそも私は何でこんなに考えてるんだろうか?

「デートでもないし……え?」

スポーツ観戦とはいえ、男性と二人で歩く。

そもそも黒尾さんは何で私を誘ったのだろうか?

「いやいや、これはデートじゃないし」

そう口にしてみたものの、なんとなく心がざわついている。

とりあえず無難にワイドパンツとチュニックで出掛ける事にした。

そして約束の時間に玄関を出ると、「時間通りじゃん」と隣の黒尾さんも玄関を出て鍵を閉める所だった。

それから二人でエレベーターに乗り込み、エントランスを出た所で「」と呼び止められた。

そこにはまた元カレがいた。

2020/03/06