黒子のバスケ
impact 後編
衝撃的な黄瀬涼太との出会いから一か月。
電車で会えば話すし、メールや電話をする中になった。
話す内容は日常的な事と、バスケの事(私もバスケ部だから)。
そしてなぜか私の方が年上なのに『っち』と呼ばれる様にもなっていた。
インターハイ予選が始まった。
3年の私たちは負ければ引退。
3回戦目の今日、相手は海常だ。
格上な海常なので『引退』とか『最後』って文字がちらつく。
チーム内も緊張感がハンパない。
そんな時、携帯が振動しメールの着信を知らせてくれる。
黄瀬君からだ。
【相手がウチなんで応援出来ないけど、っちの応援はしてるッスよ】
可愛い顔文字もあって、思わず微笑んだ。
緊張感も良い感じになる。
第1Qはお互い探り合いの状態で始まり、2点ビハインド。
第2Qになり、うちに勢いが。
第3Qに入ってからディフェンスがキツくなり、点が入らなくなる。
第4Qは完全に流れを持っていかれた。
最後の挨拶で相手の笑顔が眩しい。
泣きそうになるけど負けた相手に涙を見せるのは、なんか悔しい。
泣いてるメンバーを励ましながら控室へ。
「お疲れッス」
控室のドア付近、黄瀬君が壁に背を預け立っていた。
彼の優しい微笑みが『ああ、終わったな』って気になった。
そこから黄瀬君がボヤけて、彼から笑顔を消した。
その瞬間に体が傾いて、抱き留められた。
「泣くならココで」
背中に腕が回る。
全体的に温かいものが私を包む。
後から後から流れ出る物を止める事が出来ない。
温かさの前に、抗う事をしなかった。
ひとしきり泣いた。
顔を上げるタイミングが掴めないでいる。
冷静になってきた頭で考えると、どう考えても彼に抱きしめられている。
そうなるともう恥ずかしいのなんの。
「ねえ・・・・・・」
耳元をくすぐる彼の声。
もちろん返事なんて出来やしない。
「サンが好きなんで、付き合って欲しいッス」
「はぁ!?」
体を離そうとしたけど抱き留められた腕のせいで上半身しか離れなかった。
「なーんでそんな驚くんスか?」
「普通驚くと思うけど!?」
「なんとも思ってない他校の女に連絡とる程、オレ、暇じゃないッス(苦笑)」
「・・・・・・」
「で?」
「で?」
「返事は?」
「えっと・・・・・・彼女になってすぐに言う事じゃないんだけど」
「それってOKって事ッスよね?」
「汗と鼻水ついちゃったかも?なので離していただきたいのですが」
「ぶはははは」
彼の笑いと共に振動が伝わる。
腕は緩めて貰えない様だ。
笑い終わって振動が無くなった瞬間、キスされた。
「可愛いカノジョなんでOKッスよ」
「ちょっ!?ここ外っん・・・」
「ラブラブなんで問題ないッスよ」
そのあと戻って来た監督に、黄瀬君と一緒に説教された。
2015/03/27