うたの☆プリンスさまっ♪
義理と本命の闘い
最近『アラサー』なんて言葉を聞く。
ふざけんな!
カタカナにすりゃいいってもんじゃない!
まだ20代なのに、物凄く年取ったみたいに感じるじゃん!!!!
どうせアラサーだよ!
結婚出来てないよ!!
アイドル様に夢中だよ!!!!
と、いるのかいないのか分からない神様にボヤいても仕方ない。
それにアイドルを好きになったんじゃなくて、アイドルになっちゃっただけの話しで。
近所に住む弁当屋の幼馴染は、今や売れっ子アイドルになってしまった。
「あーあ・・・」
私はこの不毛な片想いをどれだけの期間すれば良いのだろうか?
毎年バレンタインとアイツの誕生日に悩む疑問だ。
別に付き合ってるワケじゃない。
告白してフラれたら立ち直れないだけなのだ。
けれどそれもそろそろ終わりなのかもしれない。
どうやら最近できた後輩ちゃんと仲良しで、それが女の子なのを知った。
「、見合いの話来てるんだけど」
仕事を終えて帰宅すると、両親に呼ばれて写真を差し出された。
ああ、きっとこの写真が私の人生の岐路なのかもしれない。
バレンタイン当日になって寿弁当に向かった。
まあ、案の定、本人はいないワケで。
そりゃそうだ、一人暮らししてるんだから。
けれど私はそっちのマンションに行った事が無い。
呼ばれた事も無いし。
幼馴染を呼ぶのもどうかと思うけどね。
「毎年ありがとうね、ちゃん」
「恒例行事になっちゃったね。でもこれも最後かな・・・」
「え?何か言った?」
「ううん。嶺二に宜しく」
それだけ言い残して家に戻った。
いつもならおばさんから連絡が行ってメールとかでお礼の返事が来るのに今年に限って何も無い。
「毎年の事なんだから社交辞令でもメールしてきなさいよね」
そう口にしてから気付いた。
もしかしたら彼女と過ごしてるのかもしれない、と。
そう思ったら何だか泣けて来て、枕に突っ伏してたら眠ってしまった。
翌日、朝起きたら目の腫れが凄いし、メールの着信も何も無かった。
その日の夜、両親に見合いを受けると話をした。
17日の土曜は何も予定が無いからと目覚ましを掛けずに寝ていた。
ドタバタと煩いなーと思いつつも、目を開けないでもう一度寝てしまおうとした。
布団を肩まで引き上げると部屋のドアが開いたのが分かる。
どうせ母親が文句でも言いたいんだろうけど負けてられない。
だから背中を丸めて壁の方を向いた。
するとベッドが有り得ない程揺れて「起きなよ」と低い声が聞こえた。
「え?」
驚いて目を開けると、私と向き合う様に寝転がる嶺二がいた。
その顔はいつもの笑顔では無かったけど。
「嶺二?」
「ねえ、最後ってどういう事?」
「え?・・・うわっ!」
視界が揺れて嶺二の向こうに天井が見える。
そして私の下腹部辺りに嶺二が体重を掛けないようにしながら座っていた。
「ちょっ・・・嶺二!」
押しのけようとした手を取られ、ベッドに縫い付ける様に押さえつけられた。
身動きしたくても肩の関節が外れそうになるから出来ない。
そして嶺二の顔がドアップになった。
「ねえ、最後って何?」
「な、何って・・・そのままの意味」
「何で」
「嶺二に彼女が出来ればあれだし、義理をあげ続けるのも・・・」
「ボクへのチョコって義理だったんだ」
「ちょっ・・・嶺二!どいて!」
「どいたら見合いするんでしょ?」
「・・・っ!?聞いたの?」
「今、下でおじさんとおばさんにね」
「あっそ。分かったならどいてよ」
「どかない。何で好きでも無い男と結婚出来るのかな?」
「これから好きになるかもっ!?」
「ありえない」
最後まで言い終わらないうちに重なる唇。
ゆっくりとついばむ様に・・・次第に押し付けるようなキスへと変わる。
「れ、れいじっ・・・った!」
彼から逃れようと首を動かすとキスから解放された、けれど彼の唇は私の首筋に当たる。
そしてその場所からチクリとした痛みが。
「後でプロポーズするから。今はを感じさせて・・・触れて・・・ボクのものだって植え付けたいんだ」
鎖骨に、胸に、キツく跡を残す嶺二。
潤んだ目で彼を見ると、大きな彼の手が私の視界を奪った。
2018/02/14