好き!の伝え方10題
恋人である御幸一也との恋愛模様のショートストーリー。
上から順にお話が繋がってます。
01:抱きつく
一緒にテレビを見ていると、急に
が抱き着いて来た。
見ているのはバラエティー番組だし、恋愛とか色っぽい要素は微塵も無い。
「どうしたの?」
「別に?」
「淋しくなったとか?」
「全然」
「シタくなった?」
「全然」
「仕事で何かあったとか?」
「いたって順調」
「え?マジで?」
「何か困るの?」
「そういう時じゃないと
って甘えてくんねえし」
「そんな事ないって」
「・・・・・・ほんとに?」
「ほんとに」
「・・・・・・」
「何か無いと抱き付いたらダメ?」
「いや、大歓迎」
「じゃあ、良いじゃん」
と言って俺に巻き付けた腕に力が入って体が密着する。
「でも何かあったら、ちゃんと言えよ?」
「わかった」
そういって上げた顔が笑ってたら良しとするか。
02:見つめる
デートの合間に入った店。
テーブルに向かい合わせに座って昼飯を食べてると視線を感じた。
顔を上げれば
がじーっとこっちを見てる。
「何かついてる?」
「目と鼻と口と眉毛」
「そういうのって付いてるってのと違う気がするけど」
「生えてる?」
「眉毛はな」
「え?じゃあ何て言うの?」
「・・・・・・なんだろう?」
「一也も分からないんじゃん」
「まあな。で?何で見てんの?」
「イケメンだな~って」
「わけわかんないんですけど」
「そだねー」
「本当は?」
「一口食べたいなーって」
「・・・・・・なんだ」
「え?何でなんだ?」
「もっと色っぽい理由かと思って」
「ないないない」
「だよなー。んじゃ、はい、あーん」
「は?えぇ!?」
「ほら、ソース垂れる」
「いや、ちょっと」
「早く」
俺が止めないのが分かったのか、おずおずと
が口を開く。
そこにフォークに巻き付けたパスタを入れてやる。
モグモグと口を動かす
の顔が赤いのを見て、何となく満足した。
03:からかう
とソファに座って人気だった恋愛映画を観ている。
「「他に好きな人が出来た」」
すると
(は既に3回目らしい)が映画の台詞を口にした。
「って言ったらどうする?」
ちょっと真剣な顔でリモコンの停止ボタンを押して俺を見た。
「俺以外に好きな男って事?」
「そうそう」
「んー別れないかな」
「でも私の気持ちは無いんだよ?」
「一時的かもしれないじゃん?」
「そうかもしれないけどさ」
「多分、気持ちを取り戻す為に必死になるんじゃね?」
「・・・・・・あ、やっちゃた」
「何が?」
「前園君みたいだなって」
「え?ゾノ?」
「いやいや。物の例え」
「例えだとしても他の男の話はもうおしまい」
「え?」
彼女をソファーに押し倒してキスをする。
「ちょっ!映画!!?」
「スイッチ押した
が悪い」
もう一度キスをして、彼女のTシャツの中に手を入れた。
04:やきもちを妬く
「
!」
前を歩く彼女の名前を呼ぶけれど、彼女のスピードが落ちる事は無い。
それならばと足を早めて彼女の腕を掴む。
「予約した店はこっちだって」
彼女の手を取り、店に向かう。
席に座ってからも彼女は無言だった。
「何か怒る事した?」
「してない・・・と思う」
「じゃあ、何で怒ってんの?」
「わかんない」
俺も分かんないって。
そもそも待ち合わせをして飯を食いに行こうとしてファンの女の子に呼び止められた。
そこでサインをして軽く喋ってただけで。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
正直、これが初めてでは無い。
声を掛けてくるのが女性の場合、
はすぐ離れていってしまうのはいつもの事で。
今日もそれと同じだと思ってたし、ファンの子と話してても怒った事も無い訳で。
「もしかしてヤキモチ・・・とか?」
「・・・・・・」
別段綺麗だったとか可愛いとかってタイプじゃなかったよな~。
いや、もう本当にわかんねえ。
「・・・・・・ネイル、してた」
「は?」
「一也がこの間『これならいいんじゃね?』って言ったヤツ」
の言ってる意味がわからな・・・・・・あ。
は基本的にネイルをしない。
職業柄ってのもあるんだけど。
でも本人が面倒くさがりなのもあって、桜色の綺麗な爪をしてるけど。
けれど若干そこにコンプレックスを感じてるらしい。
たまたまテレビでシンプルなネイルをしてる画像があって
に勧めたのを思いだした。
「え?そうなの?」
「見て無かったの?」
「そんなとこまで見ないよ」
「・・・・・・」
「これで解決?」
「あ・・・うん」
「珍しいよな、
のヤキモチ」
「いつも妬いてるし」
「表に出さねえじゃん」
「気持ちの良いものじゃないし」
「確かに。でもたまになら大歓迎かな」
「知らない」
とりあえず問題解決で、美味い飯が食えそうだ。
05:プレゼント
デートの帰りに買い物をして家に戻る。
食材を冷蔵庫に入れていると背後で「はい」と声が聞こえた。
冷蔵庫を締めて彼女を見ると、小さな袋を差し出していた。
「あれ?買ったっけ?」
「えーと・・・プレゼント?」
「何で疑問形?」
「特に意味が無いから」
とりあえず受け取って中を見る。
「おぉ!夫婦茶碗じゃん!」
うちにあるのは100均とまでいかないけど、安物で。
適当に数を揃えただけの物だった。
「良いじゃん」
「そう?」
「今のより大きいし、デザイン綺麗だし」
「良かった」
(夫婦みたいじゃん)ってのは心の中だけでとどめて置いた。
本当に夫婦になるのは、そう遠くない未来の話。
06:誘う
「披露宴に私が?」
「そうそう。先輩命令で連れて来いって」
子供の頃から尊敬していたクリス先輩が結婚する事になった。
と言っても既に家族だけでの式を済ませていて、披露宴の様な二次会の様なパーティーをする事になり招待された。
「彼女と一緒に来ればいい」と言う先輩の言葉は半ば強制で、
に話をした。
最初は嫌がったけど説得の甲斐あって、一緒に行く事になった。
「初めまして、
です」
嫌がってた割には肝が据わってると言うか。
まあ、ゾノや倉持とはもう会ってるしな。
高校時代のチームメイトと上手く会話をしている。
多分、純さんとか東先輩とかから悪口聞かされてんだろうな。
「良い子じゃないか」
「最高に」
「惚気か」
「いやいや、奥さん見せびらかしてるクリス先輩には負けますよ」
「相変わらずだな」
「はっはっは」
すると離れている
が俺を見て微笑んだ。
07:特別扱い
06の続き
伊佐敷「そんで御幸のヤツ」
御幸「ちょっと純さん、良い所もちゃんと言ってくださいよ」
小湊兄「へぇ。御幸でも彼女の前では良い人でいたいんだ?」
「ちゃんと腹黒なのは知ってますから」
結城「そうか。良かったな、御幸」
御幸「鉄さん・・・どこをどうとったら良いになるんですか?」
丹波「ちゃんと理解されてるって事じゃないか」
増子「うがっ」
御幸「喜んで良いのか悪いのか」
伊佐敷「喜べ!先輩命令だ」
小湊兄「ところで。御幸なんかのどこが良いの?」
御幸「ちょ、それって酷くないっすか?」
小湊兄「御幸には聞いてないよ」
「え?・・・・・・秘密です」
小湊兄「やっぱりアッチ?」
伊佐敷「あっち?どっち?」
結城「そっちだ」
伊佐敷「何が!!!?」
小湊兄「純、静かにして」
御幸「ちょっ!勘弁してくださいって。失礼します!!!!」
と言って
を連れ出してノリの所に行く。
ここなら安全だろう。
小湊兄「へぇ。大事にしてるんだ。成長したじゃん」
増子「うがっ」
伊佐敷「へ?何が?」
小湊兄「純には刺激が強すぎるって事」
08:チューする
時々
はうちに泊まる。
次の日に俺が出掛ける時でも、彼女の都合が良ければ泊まってくれる。
本当はベッドで眠る彼女を置いて出掛けるのは嫌だ。
けれど試合だから仕方が無い。
出掛ける準備を整えて、彼女の眠るベッドに腰掛ける。
眠りが浅いと目覚めるけど、今日は起きない。
「いってらっしゃいが聞きたかったんだけどな」
と言う独り言が部屋の空気に溶け込んでいく。
仕方が無いから彼女の向こう側に腕を付き、額にキスを落とす。
「ん・・・あれ?」
「悪い、起こした」
「ん?うん・・・いってらっしゃい」
そう言って俺の首に彼女の手が回って体が引きつけられる。
唇に彼女の甘くて柔らかな感触が重なる瞬間が結構好きだ。
「いってきます」
道具の入ったバックを抱え、家を出た。
09:時々は引いてみる
との付き合いは長いが、喧嘩らしい喧嘩をした事があまりない。
下らない言い合いは結構あるんだけど。
それでも大喧嘩にならないのは、
が引いてくれてるのが分かる。
けれど本来
は負けず嫌いな所がある。
「ダメ、絶対こっち」
時々階に行く雑貨や家電に関しては、
の方が優れている訳で。
こういう時は俺が引く番になる。
多分これが、長く付き合っていく秘訣なんだろう。
10:言葉で伝える
「えっとね・・・好きだよ」
「ああ、俺もブリって好きだな」
「ちがーーーう!ブリは私も好きだけど違う!!」
と、テレビを見ながら会話をしてたけど、水揚げされたブリの事じゃないらしい。
「え?じゃあ」
「だ、だから・・・一也の事が・・・好き」
「・・・・・・・・この間からどうしたの?」
「え!?」
「先に言っておくと俺だって
が好きだけどさ」
「えーと・・・」
そしてやっと
は種明かしをしてきた。
後輩と一緒にランチをしてて、その時に手にした雑誌に
『想いは言葉にしないと長続きしない』みたいなのがあり、
あれこれしているっていう記事に従ってみたんだそうだ。
「なるほどね」
「あ、呆れた?」
「んーどちらかと言えば納得かなー?」
「馬鹿だと思ってない?」
「思ってないけど。ブリの呼び名知ってる?」
「知らない」
「ワカシ、イナダ、ワラサ、ブリってなるんだけど」
「へぇ・・・」
「俺達って今はイナダくらいだと思うんだよね。だからさ」
俺はソファから立ち上がって引出に準備していたケースを取り出す。
そして
に差し出した。
「結婚して御幸
になってください」
「しょうがないから一緒にブリ目指してあげるよ」
「ブリも良いけど、ずっと奥さんでいてくれたらいいかな」
「そうなったら孫にこの話するんだから」
「楽しそうじゃん」
彼女の薬に指輪を嵌めて、泣き笑いする
にキスをした。