ダイヤのA
夢
「あっ・・・・・・」
掴んでいた足を抱え直して繋がりを深くする。
組み敷いた彼女の眉がギュットと寄り、甘い声が上がる。
痛がってるのか気持ちいいのか分からない顔だけど、声は気持ち良さそうなのが分かる。
そのまま腰を打ち付け続ければ彼女が顔を「イヤイヤ」と横に振る。
甘い声を上げ続ける彼女の声を、吐息を自分のものにしたくて唇を寄せる。
その途端首に絡みつく彼女の腕が俺を離してくれない事にテンションが上がる。
彼女のナカに入り込んでいる部分なんて僅かしかないのに、体全体に行きわたる快楽の波。
その波に抗わずにいると更なる高波が押し寄せてくる。
俺は足から手を離して彼女の体を固定して腰の動きを早めた。
「・・・・・・っ!!!?」
ガバッと上半身を起こすと、自分の呼吸が荒い。
そこは自分の寮の一室で、彼女の姿など見る影もない。
額に手を当てれば背中まで汗でびっしょりになっている。
「・・はぁ・・・はぁっ・・・夢か・・・はぁ・・・」
彼女のナカに入っていた部分は同じ硬度を保っている。
何であんな夢を見たのだろう。
押し倒していたのは自分の彼女であるだから問題は無い。
夢で他の女を抱いたからと言って浮気になるとは思えねえけど。
彼女のあんな姿を見たのは2か月前の春休みか。
自分の欲は全て野球に向いているので欲求不満とは思えなかった。
連休からの練習試合に遠征の事で頭がいっぱいだったし。
正直、彼女の存在をないがしろにしている自覚があるほどだ。
そんな事を考えていてもおさまらない自分の体。
同室の二人を起こさない様にしながらトイレへ向かった。
休み時間、机の上にスコアブックを広げる。
2軍での試合の結果を眺めていると奥村の配球が面白い。
「ここでインハイかよ・・・」
スコアから顔を上げると、グラウンドに見慣れた人影があった。
どうやらのクラスが体育らしい。
その中で友達と連れだって歩くを見つけた。
体育着から出ている手足が夢を連想させた。
思わず目を瞑って口元を隠しながら、ゆっくり息を吐き出す。
欲を逃がして目を開くと、の後ろから男が走って行った。
そしてと隣の女生徒の間に入り肩を組んだ。
楽しそうに何かを喋った後、男子生徒はまた走っていった。
「まいったな・・・」
彼女と付き合い出してから、こんな事一度も無かった。
今自分の中で渦巻いているのは独占欲と嫉妬。
両手を組んでそこに額を乗せてスコアに専念した。
そして次の休み時間に彼女からメールが届く。
それは昼休みに会いたいと言う内容だった。
今朝の夢の事もあったから考えたけれど、OKの返事を出した。
昼飯を食べ、待ち合わせ場所である体育館のギャラリーに向かった。
「珍しいじゃん、が会いたいなんて言うなんてさ。何かあった?」
「私じゃなくて御幸が。何かあった?」
「は?」
「なんか様子が変だって倉持が言ってたし、確かに何か変だし」
「倉持?」
「うん、朝からLINE来た」
「あー・・・・・・」
「やっぱり何かあった?」
ギャラリー席に座って俺を見上げる彼女。
いや、もう、マジ勘弁。
「言ったら引かれそうなんだけど」
「え?」
「あ、別れ話とかじゃねえよ。むしろ俺がフラレんじゃね?って内容」
そう言っても彼女の顔が陰ったままになってしまった。
そんな顔させたい訳じゃねえのに・・・。
彼女のいる一段したの場所から彼女を見る。
「朝からさ、を抱いた夢見ちゃって。そうしたらお前が他の男といるの見てたらイライラしちゃったんだよ」
「え?」
その瞬間、彼女の顔が真っ赤になって口元を手の甲で隠した。
それって、最中の時の顔に似てんですけど。
「煽ってる?」
「なっ!? ちがっ!!!?」
「その顔、ヤバイんですけど」
「み、御幸のせいじゃん!!」
「名前で呼べって言ってんじゃん」
「あ・・・だって・・・」
「返事しねえよ?つーか、してる時は呼んでんじゃん」
「だからなんでっ・・・んっ・・・」
まだ文句を言おうとしている唇を塞ぐ。
夢とは違って温もりも感触もある。
それを確かめる様にキスを深くしていく。
「・・・あっ・・・かずやっ・・・」
熱くて甘い吐息に交ざって呼ばれる名前。
「ん?つーか、スイッチ入った」
彼女を立たせてすぐ横にある扉を開ける。
そこは音響設備のある部屋だ。
先輩の話によれば、それなりに穴場らしい。
「ちょっ・・・御幸!?」
「また戻ってる。制服は脱がせねえからさ。とにかくを感じさせてよ」
そう言って押し倒せば、「ズルイ」と言ってキスをされた。
事が済んだ後、ぐったりしてるを抱きしめながら疑問を口にした。
「女でもそういう夢って見るの?」
「え?」
「SEXの夢」
「・・・・・・話には聞くけど」
「男女に差はねえんだな」
「みたいだね」
「は?見た事ある?」
「え?」
「もしその相手が俺じゃなかったら『浮気者』って呼ぶからな」
「えぇー!?」
「だから夢の中でも相手は俺だけな」
「夢の中の相手でも嫉妬するの?」
「するよ。だから俺だけにしとけよ」
そう言いながらクスクス笑う彼女を抱きしめた。
2017/06/06