ダイヤのA

御幸一也

酔った勢いで俺と仲良くしてください

電気が点いていない部屋の光彩はカーテンからの月明りだけ。

それでも慣れればどこに何があるかなど分かる。

その小さな明かりの中、腕の中で眠る彼女を俺は見ていた。

安らかな寝息と共に動く体、閉じられて瞳、時折揺れるクルっとしたまつ毛。

大学では横顔を見る事しかないから新鮮だ。

口紅が落ちても赤い唇。

重ね合わせたい衝動をぐっと我慢するかわりに、親指で撫でてみる。

柔らかい・・・

目を開けて逃げられるより、このまま寝顔を堪能すべきなのか、

それとも・・・・・・

色々な事を考えながら、指を頬に移動する。

ツルツルとした肌触りは、自分とはかけ離れたものだ 。

「・・・・ん・・・」

寝返りを打つスペースが無いからか、彼女の体が動いて腕が俺の腰に。

密着した体。

彼女の凹凸が俺の理性を蝕んでゆく。

頬から耳、首筋を通る俺の人差し指を動かし、

喉から胸、臍をゆっくりとなぞって降ろしていく。

すると彼女の瞼がピクっと動き、持ち上げられた。

まだ開き切らない潤んだ瞳が俺の理性の糸を切る。

彼女をベッドに仰向けにして唇を重ねる。

角度を変えながら舌を入れれば、彼女のそれが巻き付いてくる。

それと同時に腕が俺の首に回された。

彼女の腰の辺りから洋服の下に手を入れ、肌を撫で上げていく。

背中にあるホックを外し、解放された柔らかな胸を触る。

「んっ・・・」

キスの合間に漏れる吐息。

自分もだが、アルコールの匂いがする。

胸の頂きを嬲っていると、彼女の手が俺の肩を押した。

「あ、あのっ!」

「ん?」

彼女の胸に手を当てたまま、彼女を見る。

女性の手で押されるくらいで離れるワケが無い。

「えっと・・・」

さん酔っぱらって寝ちゃったんだよ」

「そ、そうなの?」

「そう。だから俺がお持ち帰りさせて貰ったワケ」

「迷惑かけて・・・」

「迷惑じゃないし。むしろ大歓迎?」

「えっと・・・」

「ちゃんと後で口説くから、今は続けさせてくれない?」

「で、でも」

「寝てるさんに散々煽られたからさ」

「煽ってなんか」

「うん、俺が勝手に。不本意なら酒のせいで良いから抱かせて?」

「御幸くん・・・」

「もう、黙って・・・」

再び唇を重ね、彼女の反論を飲み込んだ。

彼女の体を何度も貪りつくした。

彼女はぐったりとして俺の上に上半身を乗せている。

顔に張り付いた髪を耳に掛けてやる。

「ずっと気になってたんだよね」

「・・・なにが?」

さんの事。だから今日の飲み会にいて嬉しかったんだ」

「・・・・・・」

「だけど席は離れてるし話す機会も無いしで・・・焦った」

「そうなの?」

「そう。で、解散になってフラフラしてたさん捕まえたワケ」

「電車に乗ったのは覚えてるんだけど」

「うん、俺に寄りかかって寝ちゃったんだよ。で、連れ帰った」

「・・・・・・ごめんなさい」

「なんで?むしろ嬉しかったし」

「でも・・・」

「まあ、飲むのは俺と一緒の時にして欲しいけど」

「それは・・・」

俺は彼女を支えながら状態を起こす。

そして掌で彼女の顔を固定して視線を合わせた。

「好きだ。だからさんの恋人になりたい」

「え?」

「悪いけど、持ち帰りなんてしたの初めてだから」

「うそ・・・」

「そもそも部屋に他人が入ったのだって引越し以来だし?」

「・・・・・・」

「だからさ、俺に手を繋いだりキスしたり抱きしめる権利くれない?」

「・・・・・・うん」

真っ赤になって俯いた彼女を俺は力いっぱい抱きしめる。

そして体制を入れ替えてベッドに押し倒す。

「ほんとに?」

「うん。御幸くんの彼女に・・・なりたい」

「良かった~」

嬉しさのあまり、彼女の上に倒れこむ。

お互い裸だから彼女の胸が当たって気持ちが良い。

「今度は彼女としてのを抱いて良い?」

耳元で囁く。

すると彼女の腕が俺に巻き付いて来た。

「抱いて?一也」

「喜んで」

首筋に赤い花を残しながら、彼女と再び抱き合った。


2016/9/25