ダイヤのA
罪積み
不倫が題材でハッピーエンドとは言えません。
それでもOK!という方のみ、お進みください。
読んでからの苦情はご遠慮ください。
学生時代から片想いをしていた一也とお姉ちゃんを通じて知り合い、アタックの甲斐あって付き合う事が出来た。
それから2年してプロポーズされ、結婚して3年目になる。
一也はプロ野球選手として、人気も実力も兼ね備えた選手として注目を集めている。
そして一也が遠征で帰らない日は、私も家に帰らない。
仕事を終えて向かうのはホテルで、仕事の合間に連絡がついた男性と一夜を共にする。
私が不倫をするようになったのは、1年半前の出来事が発端だった。
お店を借り切って青道高校野球部OB会が行われた。
私は一也の妻として参加をしていて、トイレに行った帰りだった。
通路には大きなスライドドアがあり、外は喫煙所。
話していた人たちは私がいると知らずに会話をしていたが、内容は私にとって衝撃を与えるには十分だった。
「御幸って貴子が好きだったんじゃないのか?」
「その妹と結婚するとはな」
貴子とは私の姉、旧姓藤原貴子だ。
1つ年上で、清楚という言葉をそのまま体現した様な人物で、自慢の姉だった。
綺麗で勉強も出来て気が利いて、私とは対照的な人で子供の頃なんかは良く比べられたものだ。
「は私に持ってないものを持ってるの。だから羨ましいな」
なんて言えちゃうくらい人として完璧な人だ。
そのお姉ちゃんも大学生の間に学生結婚をして、元OBで公務員になった先輩と結婚した。
今では子供が生まれ、理想的な母親をしている。
そんなお姉ちゃんと私が似てるのは、髪質と声だけだろう。
それから私の頭の中で「お姉ちゃんの代わり」という単語がグルグルしだした。
思い返せば確かにお姉ちゃんと一也は仲が良い。
部活で2年間一緒だった時間は伊達じゃないのだろう。
2人が揃うと野球部時代の話になって私は会話に入れない。
実家にいる時は絶対にセックスはしないし、家でする時も必ず電気を消している。
(もしかして私にお姉ちゃんを重ねてる?)
卑屈な思考を追い払う様に自慢だった長い黒髪を切り、茶色に染めてみた。
「せっかく綺麗な黒髪だったのに」と言われた時にショックを隠せなかった。
そんな時、高校の同窓会があって元カレと再会する。
「あんな真面目そうだったのにな。いいんじゃね?」
元カレも結婚していたけど「今奥さん腹ボテでさ。久しぶりにヤらねぇ?」という甘言に乗った。
禍々しいネオンのラブホテルに入り、部屋に入ってすぐに体を愛撫され、ドアを背に喘いだ。
それからも電気の煌々とついている部屋で、バスルームで何度も抱き合った。
一也の時とは違う快楽が、私の体に棲みついてしまった。
それからというもの元カレだけじゃなく、バーで知りあった男性と夜を共にする事が増えた。
「ただいま~」
「おかえりなさい」
一也が帰ってくる日、何事もなかったかのように彼を迎える。
遠征の間の出来事を聞きながら夕飯を食べ、別々に風呂を済ませて片づけをして寝室へ。
そして薄暗い中、彼に抱かれる。
「……っ……っ……」
私を抱きながら、私の名前を呼ぶ一也を、私の全てで抱きしめる。
他の男に抱かれても、身代わりにされてるとしても、彼が私の名前を呼んで抱かれている間、何物にも代えられないくらい幸せなのだ。
2020/06/24