ダイヤのA

御幸一也

こんな恋の駆け引き

*二学期の設定です*



外はクソ暑いけどクーラーで冷えた教室と言っても気温は快適でお弁当で空腹を満たして微睡んでいると、親友のの隣のクラスのが血相を変えて飛び込んできた。

「ちょっと!あんた御幸くんと付き合ってるってマジ!?」

「………はぁ!?」

寝耳に水とはよく言ったもんで(寝てないし意味が違うけど)、一気に目が覚めた。

の声で教室にいた生徒の視線が私に集まるのを感じ、彼女の手を取って教室を急いで出た。

立ち入り禁止の屋上へ繋がる階段の踊り場まで来て、掴んでた手を離した。

「ちょっと何言ってんのよ」

「いや、だって後輩があたしんトコ来て、親友のさんって御幸先輩と付き合ってるってほんとですか?って来たんだもん!」

「なにそれ。万が一にでも付き合ってたらに言ってるわよ」

「だよね~。あ~~~びっくりした」

「その後輩ちゃんはどこから聞いたの?」

「あ、聞くの忘れた」

「そこ重要じゃん」

「あははは。んじゃ電話して聞いてみるか」

ポケットからスマホを取り出し、が電話を掛ける。

すると後輩ちゃんが電話に出てくれて、事の真相を聞き出す。

「えーーーマジでーーー!?」

その後、電話口で大声を出した事を詫びて通話を終える。

そして意味深に私の顔を見た。

「な、何?」

「御幸くん本人が言ってたって。告白した後輩の友人が言ってたんだと」

「はぁ!?」

「でも付き合ってないんでしょ?」

「ないない!」

その瞬間、昼休みを終えるチャイムが鳴った。

私とはモヤモヤしたまま互いの教室に戻って行き、御幸くんが言ったというのも噂に尾ひれがついたものだろうと思っていた。



その2日後、今度はクラスメイトの子から同じ質問をされた。

どこから聞いたのかを聞くと、やはり御幸くんに告白した子から聞いたらしい。

そもそも私と御幸くんは1年で同じクラスで、同じ委員会だったからその関係でしか話した事はなかった。

その頃から私は彼が好きだったけど、有名人である彼に告白しようとさえ考えてなかった。

今だってクラスは違うし、下駄箱も昇降口が違うから擦れ違うとしても教室移動の時だけで擦れ違った事無いし。

でも人の噂も75日って言うし?

私は否定してるんだからと放置していた。

そして翌日の放課後、帰り支度をして教室を出ると視界がぐるりと回転した。

それは誰かに腕を引かれたからであって、その主は御幸くんだった。

「ちょっと話があるんだけど」

「え?」

「あ、なんか急いでるなら別の日にするけど」

「いや、何もないけど……」

「じゃあ、ちょっと一緒に来てくんない?」

言われた通りに彼の後に続いて歩く。

この時間放課後の掃除や部活移動で人がこない場所と言ったら屋上に続く踊り場で、やっぱりそこに来た。

「あのさ、俺がと付き合ってるって話聞いてる?」

「ああ、うん」

「それ噂じゃなくて真実にしたいんだけど」

「………え?」

が好きだ。だからぶっちゃけ付き合いたいと思ってる」

「………」

「聞いてる?」

「き、聞いてるけど……パニックってる」

「はっはっは。ちなみに彼氏いんの?」

「いないけど」

「好きなヤツは?」

「それも特には……」

すると御幸くんが私に近付いて私の手を掴んだ。

「ならさ、とりあえず付き合わねぇ?惚れさせる自信あるし」

「……うん」

「んじゃ決まりな♪これからよろしくな」

そういって恋人繋ぎをしながら教室に戻った。

その間、御幸くんは鼻歌を歌いそうなくらいご機嫌で、私は彼にはめられたのだろうか?という疑問が浮かんだけど、少なからず彼の事が気になってたのは確かだから照れくさいけど彼の手を握り返した。


2023/04/14