ダイヤのA

御幸一也

恋はするんじゃなくて落ちるもの

東京選抜で放課後に稲城実業へ向かう。

校門を抜けて事前に貰っていた案内図に沿ってグラウンドを目指す。

ゴミ1つ落ちていないなんて同じ私立とは思えないな。

鳴とその仲間達との挨拶を済ませ、着替える為に更衣室へ案内された。

と言うか鳴がついてきて横でずっと喋っている。

「聞いてるの?一也!!!!」

「あんま聞いてねえ」

「信じらんない!!!!」

ギャーギャー騒ぐ鳴をよそに、俺はバットと複数のグローブを持って外に出た。

すると「鳴」と誰かが呼んだ。

「げっ!!!!!なんでこんなとこにいるんだよ!」

「神谷に案内させたから」

「カルロス!!裏切ったな!!!!」

「ノート返して」

「今は一也の案内してるから無理ですー」

「はぁ?あんたは優遇されるかもしれないけど私は一般人なんで」

「優遇なんてされてないですー」

と話していた瞬間、強い風が吹き抜けた。

その瞬間、彼女のスカートも捲りあがってしまう。

「早くノート返して」

「スカート押さえるとかしたら!女でしょ!!!!」

「あ、男女差別的発言!」

「お前・・・恥じらうとかしろよ」

「ショーパン(ショートパンツ)履いてるのに恥じらってもキモくない?」

「そういう問題じゃなーーーい!!!!」

「あ、鳴、顔真っ赤」

「お子ちゃまだからな」

「うるさーーーい!返せばいいんでしょ返せば!」

「逆切れすんな」

「一也、カルロス先行ってて!!!」

すると彼女は俺に向かって頭を下げ、鳴とどこかに向かった。




練習が終わって着替えを済ませて更衣室を後にした。

校門に向かっている途中で、校舎の方から誰かが出て来た。

「「あ・・・」」

顔が判別できるくらい近付くと、それは先ほどと呼ばれていた子だった。

「えーっと・・・確か一也!」

「・・・・・・」

「あれ?違ったっけ?」

「いや、合ってるけど・・・初対面で名前呼び捨てって・・・・・・くくくっ」

「あ、ごめん。鳴が呼んでたから」

「別に良いけど。俺もって呼ぶし」

「良いよ」

それから何となく並んで駅に向かって歩いた。

「一也はどこの学校?」

「制服でわかんねえ?」

「男子の制服って夏だとスラックスとYシャツだけじゃん」

「はっはっは、確かに。俺は青道だよ」

「え?じゃあ西○○駅?」

「そうそう」

「私は青道とは反対側の出口なんだ」

「青道来てたら徒歩圏内じゃん」

「帰りに遊ぶ楽しみ無くなっちゃうじゃん」

「確かに」

そして二人で改札を抜けてホームへ。

ラッシュ時まではいかないまでも、それなりに人は多かった。

は部活やってんの?」

「やってないよ。今日は進路指導だった」

「進学?」

「稲実ですからねぇ。一也はやっぱりプロ志望?」

「何?俺に惚れちゃった?」

「見た目だけで惚れません」

「だから中身を知りたい?」

「一也って自惚れ屋なの?」

「気になった相手に聞かれるのは嫌な気分じゃないけど?」

「なに?私の足に惚れちゃった?」

「足より性格かな?と付き合ったら面白そうだなって思ってるけど?」

返事を貰う寸前に電車がホームへ滑り込んでくる。

混雑している中を二人で車内へと移動する。

壁を背にする様に彼女を移動させ、ガードする様に立つ。

けれど混雑している車内で体をくっつけないでいるのは不可能だった。

電車の揺れに合せて密着したり離れたり・・・

何となく彼女を見ると、ずっと下を向いたままだった。

「具合悪い?」

「違う・・・」

と顔を上げたけど、その顔は真っ赤だった。

「照れてる?」

「・・・・・・」

無言のまま頭が上下した。

その瞬間、彼女が物凄く可愛いと思った。

僅か数駅の電車から降りる。

一緒に階段を降りて改札まで来た。

俺は彼女の手を取って「送ってくよ」と言って足を止めないでいた。

改札を出て足を止め「どっち?」と聞くと「あっち」とが指差した方へと歩き出す。

「もう喋んないの?」

「や・・・・なんか照れくさい」

「何で?」

「・・・・・・・・なんか、こんな風に女の子扱いされたの初めてで」

「え?マジ?」

「・・・・・・うん」

「とりあえずさ、メアド教えてよ」

「え?メアド?」

「俺ガラケーだから」

「久しぶりに見た」

「うっせ」

「でもメアドなんて忘れてる」

「んじゃ、お互いの名前入れて作る?」

「恥ずかしく無いの!?」

「若いうちしか出来ない事じゃね?」

「なんかオッサンくさい・・・」

そんな事を良いながら、彼女の連絡先をゲット。

それから家まで送って行った。


2017/12/30