ダイヤのA

御幸一也

保健委員

学生には『委員会』と言う物が存在する。

それは誰でも通る道であり、自分もまた例外では無い。

何の因果か知らないが、保健委員なるものに属する自分。

保健か図書かの選択で、保健を選んだまでの事。

放課後に練習がある自分は昼の当番に回されたのは恩恵だろう。

とはいえ、面倒なのに変わりはない。

そして今日が当番のその日にあたる。昼飯を持ち、保健室へ向かう。

「あら、今日は御幸君なのね」

「ちわーっす」

「というかもうお昼なのね」

先生はカーテンで仕切られた中に入り「さん」と声を掛けた。

思い当たる人物はいたが、テーブルの利用者ノートに目を向ける。

すると去年同じクラスだったなのが分かる。

カーテンの向こうから「う~」と腹を押さえて出てくる

「あれ?御幸がいる」

「当番なんだよ」

「強豪野球部の部長までして、学校生活ってエグいよね」

とボヤきながら出て行った。

ノートに腹痛とあったが・・・・・・

先生を見ると口の前に指を当て「ナイショね」といった。

女の子は毎月あんな思いをしてるのか。

「女の子には優しくしてあげなさいよ?」と笑って言った。

さんね、皆勤賞狙ってるらしくて具合が悪くても登校するのよ」

保健室をベッド代わりにするのは困るんだけどと苦笑いしていた。

昼飯を食べ、備品の上げ下ろしをさせられる。

出入り口付近の棚に荷物を上げた瞬間、ドアが勢いよく開く。

そこには真っ青な顔をしたがいた。

「先生・・・無理・・・・・・」

そう言った瞬間、彼女の体が傾いた。

「おっと・・・」

反射的に伸ばした腕が彼女を捉える。

「うわっ・・・」

「ナイスキャッチ!さすがキャッチャーね。支えてあげてくれる?」

「ああ、運びますよ」

ぐったり腕に凭れ掛かってる彼女を抱き上げてベッドに運ぶ。

所謂お姫様抱っこってヤツだ。

それを見て先生が「すてきね!」と言ったのは聞こえなかった事にしよう。

ベッドへ降ろすと先生が彼女の腕を取り脈を図る。

見ているのも悪いからと背を向けると、が力なく「ありがとう」と言った。

それから別段何も無く、休み時間が終わって俺は教室に戻った。




数日後。

「はい」

目の前にコンビニの袋が差し出される。

スコアブックから顔を上げるとがいた。

「?」

「この間のお礼」

「お礼って言われてもな・・・当番でやった事だし」

「でも支えてくれなかったら顔面打って怪我してたし」

「なるほど」

彼女が差し出した袋を受け取り、中を見る。

パンにお菓子にと入っていた。

「好み分からないから適当に。食べないならあげちゃって」

「サンキュー」

「ん」

「にしても、も女だったんだな」

「なにそれ」

「サバサバしてっから」

「女らしくないですから」

「十分女の子だったけどな」

「それ、セクハラだから」

「野郎にまみれてるもんで」

普段、部員を背負って走ったりしているからか、支えた体が柔らかいと感じた。

別に胸に触ったとかではなく、体全体が男とは違う。

「まあ・・・筋肉だらけよりはね」

「軽いしな」

「それもセクハラだから」

「何キロくらいあんの?」

「殺されたいの?」

「まさか。また具合が悪くなったら言えよ?」

「何で?」

「他の男に抱き上げられて運ばれて欲しくないから?」

「・・・・・・バカ」

は背を向けて教室を出て行ったが、顔が赤い様だ。

俺はそれを頬杖をついて見送った。


2017.03.16