ダイヤのA
平日の昼間
甲子園から戻って二日間のオフとなる。
とはいえまだ春休み。
今後の進路なども含め、俺は帰省する事にした。
「あれ?御幸?」
駅に着いて変わった街並みを見て移動しようとした瞬間に声を掛けられた。
「うわっ!背、伸びたね」
声の主は上下ジャージ姿でショートカットの女。
「もしかして・・・?」
「そう、。卒業以来?」
「だな」
は小中学校の同級生だった。
割と良く話をする女子。
「男の成長期って凄いね。私より小さかったのに」
「はっはっは~」
「私ももう少し身長欲しかった」
「つっても女にしたら大きい方じゃね?」
「まあ、170あるからね~。でもバレーじゃ小さい。御幸くらい欲しかった」
「あんまデカいと男出来ないぞ~」
「もう諦めてます~」
「寂しい高校生活だな」
「御幸は彼女いるの?」
「野球の為に入った学校だしな」
「そっちも寂しい高校生活じゃん」
「でモテる」
「私もモテるよ!」
「同性にか?」
「うっ・・・」
「はっはっは~」
「なんかムカつく・・・」
「んじゃ、夏の大会終わっても独り身だったら俺が彼氏に立候補してやるよ」
「え?」
「なに、俺じゃ不満?」
「彼氏としても御幸のスペック謎だし」
「それってお互い様じゃね?」
「まあ、そうだけど・・・」
「手始めに連絡先の交換しようぜ」
赤外線通信を使って連絡先を登録する。
俺はそのままカメラを起動する。
彼女の肩を抱き、カメラを自分たちに向け「」と呼んだ。
携帯は「カシャッ」と音をさせ、俺達が画面に映っている。
「ちょっと!」
「不意打ちショットいただき」
携帯を操作し、登録されたばかりの連絡先を呼び出す。
写真を添付して送信ボタンを押す。
「待ち受けにしとけよ?」
「信じらんない!取り直しを要求します!」
「はっはっは~。またな~」
家に向かおうと足を向けた瞬間「一也」と呼ばれて振り向く。
振り向いた先には携帯をこちらに向けてる彼女。
「不意打ちショットいただき!待ち受けにしておくよ」
と笑って手を振る反対方向へ走って行く。
「くくっ・・・おもしれえ」
これからの人生も楽しそうだ。
「み、御幸のカノジョか!カノジョなのか!?」
教室でスコアブックと一緒に置いておいた携帯。
どうやら何かを受信したらしくロック画面が浮き上がった。
それはこの間取ったツーショットの彼女の部分だけ。
「はっはっは~」
「笑ってんじゃねえ!つーかお前でも待ち受けにしたりするんだな」
「お前・・・俺を何だと思ってんだ?」
「御幸」
「なんだそりゃ」
「つーか、どこの学校?」
「どっかの女子高」
「お前・・・カノジョの校名くらい知っとけよ・・・」
「燃えんだろ?」
「燃えねえよ!!!!関係ねえだろ!!!!!」
「はっはっは~」
2016/09/08