ダイヤのA

御幸一也

不意打ちキスじゃ奪えない

はぁ・・・暑い。

グランドに目を移せば、この暑さの中で走る野球部。

私とは無縁の場所なのになぜグランドにいるかと言えば御幸一也のせいだ。

丁度出入り口の所に立って、誰に話しかけようか迷う。

肝心の御幸がいないからだ。

するとグランドの横で腕組みをしていた片岡先生が私に気付いて歩いてくる。

、どうかしたのか?」

「御幸から生徒会の書類を受け取りたいんですが、彼は?」

「ブルペンにいる。呼んでくるから待っていろ」

「あ、はい(ぶるぺん?)」

「東条!御幸を呼んできてくれ」

「あ、はい!」

暑苦しい中でも爽やかな顔をした青年がどこかに走って行った。

それにしても暑い・・・

スポーツをする人は、絶対ドMだ!

などと考えていると御幸がマスクを外しながら片岡先生の所に歩いて行き、私の事を言われたのであろう視線がこちらに向いた。

そしてベンチの方に行き、体中にい付けている防具を外してこちらに来た。

「予算」

「悪ぃ!部屋にあるからついてきてくんねえ?渡したら練習戻れるし」

「うん、わかった」

その方が私も早くクーラーの効いた生徒会室に戻れる。

今日はいわゆる2日目だから、体がだる くて仕方ない。

寮の所まで来ると、御幸は階段を上がり始めた。

「2階なの?」

「そうそう」

正直つらい。

2階まで上がるか、ここで炎天下の中で待つかの2択。

日影がありそうな2階へ行く選択肢へ天秤が傾いた。

「ちょっと待ってて」

部屋のドアが開けられ、彼は中へと入って行く。

ちょっとキツイ私は入り口の横にしゃがみこんだ。

しばらくして足音が近くなり、立ち上がる。

「んじゃこれ・・・?っと!」

体がフワリとした瞬間、傾いた私を御幸が支えてくれた。

「おい、大丈夫かよ」

「ん・・・貧血」

「顔が真っ青だぞ?ちょっと我慢しろよ・・・っと」

御幸に抱えられ、柔らかい場所に降ろされて靴を脱がされた。

その瞬間、御幸の匂いがしたから彼のベッドなのだろう。

「ちょっと我慢しろよ」

何かと思えば靴下を脱がされ、クッションの様な物がふくらはぎの下に入れられる。

「スカートのホックとブラのホックも外しとけ」

良く分からないが腰に手をあててホックを外そうとしても外れない。

力が入らないんだから当たり前だ。

すると御幸の手がホックを外し、緩んだ場所からブラウスの裾に手を入れてくる 。

反対の手で体を持ち上げられ、胸元が緩んだ。

窓が開けられ、タオルケットが上半身を覆った。

「後で見に来るから寝てろよ」

「ん・・・」

ドアが閉まる音と共に、私の意識が無くなった。




冷たい何かが額に当たった。

重たい瞼をゆっくりと上げていくと、視界に御幸が映りこむ。

「お?目、覚めたか?」

「・・・・・・今、何時?」

「6時前。結構寝てたな。起きれるか?」

私の首の下に彼の手が入り込んで力が入る。

私は手を伸ばして彼の肩に手を置いた。

半分以上起き上がった所でキスされる。

「ん・・・・・・んっ!?」

「すっげーエロい格好してる自覚ある?」

「え?」

思わず視線を下げればブラウスは肌蹴ているし、スカートも捲りあがっている。

と思った瞬間、彼の手が直に胸を覆った。

「柔らけー」

「ちょっと!」

「ここんとこ練習試合もあるしでデート出来てねえしな~。これ以上盛り上がったらヤベえな」

手が無くなったので私は衣服を整える。

すると御幸の手が頭をポンポンと叩いて来た。

「二日目の時くらい無理すんな」

「人の周期まで把握してんのか!!」

「そりゃあ大事な彼女の事なんで。あ、今キュンとした?」

「しない。練習まだあるんでしょ?戻って良いよ」

私はベッドが立ち上がり、用意されていたプリントを手にしてドアに向かう。

すると後ろから腕を掴まれた。

「練習頑張って~とか無いの?」

「既に頑張ってるんでしょ?」

「はっはっは」

彼は1年の頃からレギュラーで、人一倍努力してると思う。

3年生が引退してからというもの、更に気苦労が増えていると思う。

けれど弱味を見せる人では無いから心配してると言うのに・・・

「かずや・・・」

甘ったるい声で名前を呼んで首に腕を絡みつけ、上体が下がった彼にキスをする。

重ね合わせるだけのキスから舌を絡めるキスまで。

こうして触れ合う事で少しでも彼の癒しになるのだろうか?

きっと体を離せば、彼はニヤリとした顔をしているのだろうから見ないでおく。



2017/06/22