ハイキュー!!

黒尾鉄朗

背伸びの分近くなる唇

世間様では日曜と言う休みの日に、練習試合を終えて電車に乗って最寄りの駅に到着。

同じ駅まで来た仲間と談笑していると、その一人が俺のジャージを引っ張った。

「どうした?」

「アレ」

俺の方を見る事も無く、指差した方を見つめている。

その視線を辿ると、自分のカノジョが男と笑い合っている姿が。

二人共横顔しか見えない。

男に見覚えが無い。

何となく面白く無くて、声を掛けずにその場を後にした。

それから10分と経たずにからメールが届いた。

『駅で声掛けたんだけど、気付かなかった?』と。

けれど俺はそのまま返事をしないでいた。

家に帰って風呂に 入り、晩 飯を食べて部屋に戻ると、電話が色んな色に光っている。

電源ボタンを押せば着信、メールにメッセージアプリの履歴があった。

大半が

何となく話す気になれず、そのまま電源を切って眠りについた。



朝起きて登校の準備をして研磨を迎えに行く。

ゴネる研磨を連れてバスに乗り込んだ。

いつも通りの生活。

朝練が終わって校舎に向かう時、昇降口にがいた。

けれど俺は何も言わずに横を通り過ぎた。

「・・・・・・良いの?」

「ナニが?」

「・・・・・・手遅れになっても知らないから」

溜息交じりでそう言って、研磨は二年の下駄箱に向かった。

上履きに履き替えて教室に向かう。

幸いにもとは別のクラスだ。

自分の席に座ってスマートフォンの電源を入れる。

どんどん出てくる履歴の数々。

深く深呼吸をして、のメッセージを開いて行く。

読み続けて行くうちに膨れ上がっていく罪悪感。

「あー・・・ヤバイかも」

一緒にいた男は親戚の男で、俺がいたから紹介しようとしてた事、誤解させたなら謝る・・・・・・

そんな事が書かれていた。

メッセージは日付が変わってからも続いていたけど、朝からのは無い。

『手遅れになっても知らないから』

「っ!!!?」

研磨の声が頭に浮かぶ。

に謝罪のメッセージを入れようと思ったけど、何と言っていいか分からない。

仕方が無いので休み時間に彼女の教室へ行く事にした。

けれど・・・・・・午前中すべての休み時間、彼女に逃げられました。

そして昼休みの食堂。

気が付けばバレー部の面々で固まっていた。

「で?浮気されてたんですか?」

空気を読まないリエーフをある意味で尊敬した。

「親戚の兄ちゃんなんだと」

「へぇ・・・」

「あ、さん」

「「「「「え?」」」」」

いつもなら食堂にいるのに、今日は購買に行ったみたいだ。

手にはいつも食べる量より多いくらいのサンドイッチ。

(食べてるなら大丈夫だな・・・)

そう思った時、彼女の隣に男子生徒が。

持っているサンドイッチの幾つかを渡している。

その男子生徒は喜びながら彼女に抱き着いた。

「「「「「あーあ・・・・・(ご愁傷さま)」」」」」

俺は立ち上がって彼女の所へ行って腕を掴んだ。

「はい、そこまでにしとこうね」

「なっ!?」

「彼女は俺のだから。行くぞ」

腕を掴んだまま、場所を移動する。

屋上なんて人だらけだろうからと、部室に向かう。

「離して!!」

途中で怒ったが声を上げるけど腕は離さない。

彼女を見ない、話さない俺に呆れたのか分からないけど、大人しく着いて来た。

鍵を開けて部室に入る。

「どういう事?」

「なんの話?」

「さっきの」

「黒尾クンに関係あるの?」

冷たい眼差しが俺を見上げる。

その顔が綺麗だ・・・って言ったら完全に空気壊すよな。

「なに、ソレ。別れたつもり無いんですケド」

「さんざんシカトしたの誰?」

「俺」

「さようなら」

俺を素通りして出て行こうとする彼女の腕を再び掴む。

「いや、ほんとゴメン。浮気されてるのかと思いました」

「もう関係ないし」

「だからゴメン。部活部活でを二の次にしてる自覚あるからさ」

「信じてくれないんから、もういいよ」

「いや、良くないから」

「自業自得でしょ?」

「こんなに妬いちゃうくらい好きなんだって」

「なっ!!?」

「あ、ときめいた?」

「しるか、バカ!!」

真っ赤な顔して口元を手の甲で隠す。

「すげー可愛い」

「なにいってっ」

「だから俺を捨てないでよ」

「捨ててなっ」

「好き、すっげー好き。大好き」

「もういやっ!?」

グイッとネクタイが引っ張られ、身体が前のめりになる。

次の瞬間、唇が重なった。

目を閉じる間もなかった。

彼女とキスをする時と違う角度。

唇が離れて下を見ると、彼女が踵を降ろす所だった。

ああ・・・・・なるほど。

背伸びすると角度も変わるのか。

「やっぱり可愛いな」

「バカ」

「もう1回からキスしてくんない?」

「・・・・・・良いよ」

再びネクタイが引っ張られた。



2017/06/15