ハイキュー!!

黒尾鉄朗

告白タイム!

春高バレーの出場が決まった。

喜びと悲しみは一心同体。

「土曜のクリスマスもイブも練習」と言う事態は思春期の俺達に重くのしかかった。

彼女のいるヤツラにとっては別れの危機であり、

片想いのヤツラも「彼氏が出来ちゃうかも」って事態になる事もある。

「まあ、バレーやるって決めたんだし?気合入れろ。そしてリア充を恨め」

と部長の俺からは言いようがない。

かくいう俺にだって惚れた相手はいるワケで。

同じ3年の女子バレー部の部長だった

女子はインターハイまでで引退していて、今の彼女(自分は推薦)は受験の真っ只中。

クラスが違うから、引退してから会う回数が激減。

時折見かける彼女は髪が伸びていて、どんどん綺麗になってる気がした。

LINEで繋がりがあるから、時々くだらないやり取りをしている。

本当にその程度。



24日土曜の17:08。

17時に部活が終わり、デートの約束があるヤツラはもういない。

「青春だねぇ」

「オッサンだな」

「やっくんは可愛いね~」

「撫でんな!!!」

「クロ、それただの変質者」

残された淋しいヤツラと一緒に部室を出る。

バス停に向かえばバスに乗り損ねたヤツラがいて、思わずニヤける。

あれこれからかって、駅で別れた。

「あれ?黒尾じゃん。何、今日も部活かよ」

「おぉー。なに、これからデートか?」

「ちっげーよ!独り身のクラスのヤツラが集まってんの。んで、遅刻」

「うわ~オンナにモテないね」

「うっせ!お前もくる?どうせ他のクラスも流れてるみたいだし」

「んじゃ、顔出しますか。研磨は?」

「帰ってゲームやる」

「ちゃんと寝ろよ?」

「黒尾・・・母ちゃんみてえだな」

とりあえずソイツ(里山)を殴って一緒にカラオケボックスに向かう。

何でついて来たかと言えば、コイツはと同じクラスだからだ。

カラオケに着くとパーティールームに向かう。

ガラスドア越しで見てても、何人いるか分からない程の人数がいる。

「わりぃ、遅れた!!」

ドアを開けて中の人間が一斉にこちらを見た。

その途端、「ヒューっ!」と冷やかしの声が上がる。

「「???」」

メンバーをぐるりと見ると、彼女がいた。

というか顔が真っ赤で手で口元を隠している。

メンバーの一人が「今、告白タイムしてんだよ」と言った。

「「は?」」

そして遅刻してきた俺達にもやれと。

「はぁ!?何で!!!!」

一緒に来た里山が大きな声を出した所をみると・・・・・・いるな、ここに。

多分、他のヤツラ数人も知ってる感じだ。

とりあえず部屋のドアを閉め、空いてる近くのソファの背もたれに座る。

そして里山、撃沈。

(ドンマイ里山)

「んじゃ、次黒尾な~」

若いってイイネ。

酒が無くても盛り上がれて。

仕切ってる男がマイクを向けてくるけど無視して立ち上がる。

そしての前に立って腕を掴んだ。

「んじゃ、貰ってくんで後ヨロシク~♪」

女生徒から「キャー」みたいな声があがる。

が上着とバッグを持って立ち上がった所で恋人繋ぎをする。

沸き立つ室内。

(ハイハイ、牽制の意味もあるんで盛り上がってくれ)

俺の顔はニヤニヤしてんだろうな。

とはいえ、このまま歩いてるわけにもいかないし。

とりあえず途中にあった公園に入る。

手を繋ぎ変えて彼女と向き合う。

顔が真っ赤で俯いたままなところがまた・・・

「顔、真っ赤。サンタみたいだね~」

「サンタの顔、赤くないし」

「確かに。んで、俺とお付き合いしませんか」

「!!!・・・・・・何で敬語なのよ。なんか嘘くさい」

「緊張してるしねぇ」

「クロが緊張するとか信じられない」

「惚れたオンナ前にすれば、そういうモンだと思うんですけど」

「っ!!!!」

茹でダコみたいに真っ赤になった彼女がもう可愛くて仕方ない。

俺は手をほどいて腰を抱き寄せた。

「お返事、聞かせて貰えないですかね」

「分かってるでしょ」

「それを聞きたいのがオトコゴコロで」

「何それ」

「ああ、わかった」

「??」

彼女の耳元に口を寄せ「すげぇ好きなんだけど」と囁いて耳にキスをする。

驚いた彼女が暴れるけど俺の腕が邪魔で何も出来ない。

顔を元の位置に戻せば、慌てふためく彼女。

けれど目を閉じて深呼吸を1つし、俺の腰に腕を回して来た。

風に乗って届いた彼女の小さな「私も、好き」って言葉は、

最高のクリスマスプレゼントになった。


2016/12/20