ハイキュー!!

黒尾鉄朗

君は僕のもの。

人・人・人

溢れかえる人の群れの中にいる俺。

頭1つデカいと、こういう時に得をする。

目印程度には。

ここまで人が多いと人を見分けるのは難しい。

何せ頭しか見えないから。

何でこんな場所にいるかと言えば、彼女を待っているからだ。

他校に通う彼女、との待ち合わせ。

バレー繋がりで知り合った可愛い彼女だ。

その彼女と夏祭りに行くので花火会場の駅で待ち合わせなんだが、まだ来ない。

まあ、俺が練習終わるの早くて約束の時間前だからなんだけど。

時折同級生とすれ違い「クロを目印に」とか言って本当に目印にしたヤツもいたくらいだ。

手持ち無沙汰で携帯を取り出すが、肝心のからは何も無い。

携帯をポケットに仕舞おうとした瞬間、腕に誰かがしがみついた。

「ごめん、クロ。待った?」

「いや、俺が早くき・・・・・・え?」

「練習終わるの早かったの?」

「ああ・・・・・・すげえ綺麗だ」

「え?ああ、浴衣?綺麗でしょ。とりあえず場所移動しようよ。人が凄い」

「ああ、そうだな」

彼女の手を取り指を絡めて軽く引く様にして歩き出す。

人の流れに乗りつつ、縁日の出ている道へ出た。

お腹減ったと騒ぐ彼女の為に焼きそばとお好み焼きを買い、場所を移動。

座って食べれそうな場所を確保する。

「んーおいしい!」

口いっぱい頬張る彼女を見る。

運動をしてるからと髪は常にショート。

いつもは隠れている耳がビーズをあしらったピン止めで丸見えになっている。

なんと言うか・・・・・・ビバ、浴衣マジック!

普段は可愛い印象だが、浴衣効果かセクシーだ。

今すぐにでも首筋にキスマークを付けて「俺のだ!」アピールしたい。

「あ、焼きそば食べる?」

箸で一掬いし、俺に差し出す。

「ん・・・」

いつもなら恥ずかしがる「あーん」もやってくれるのか!

なんと言うか・・・・・・今日のは何かが違う!!!!

確認したいけどヤブヘビになりそうで言えない。

その後も手を繋いで屋台を見て回った。

花火が始まる頃、近くの神社へ移動。

ベンチらしい場所は既にカップルが座っている。

植込みの囲いに腰を下ろし「ん」と両手を広げる。

「・・・・・・何?」

「俺の膝の上にどうぞ」

「やだ」

「直接座ったら浴衣が汚れるだろ」

「・・・・・・足が痺れても知らないからね」

足の間に入り込み、右足の上に腰掛けてくる。

俺は彼女の腰に腕を回し、密着度を上げる。

「暑いんですけど」

「俺も暑い」

暑さよりも彼女と密着する方が勝る。

彼女の首筋に浮かぶ汗が、最中を彷彿させる。

その瞬間、空でパーンと音がした。

「綺麗・・・」

俺からすれば花火に照らされてるお前の方が綺麗なんだけどな。

うっとり花火を見上げる彼女。

「わっ!大きい」「凄い」

なんて単語を連発している。

ボクもオトシゴロなんで?

そういうのはベッドの中で言って欲しいんデス。

しかも花火に夢中って・・・おもしろくないんデス。

だからの首筋にキスをした。

「ちょっ!」


文句を言おうとこっちを見た瞬間、襟元に指を掛けそこを開かせる。

鎖骨の辺りにキスマークを残す。

「な、なにっ!?」

「ヤキモチです」

「へ?」

「会ってから屋台だの花火だので俺の事見てねえし」

屋台で歩き回ってる時、男の視線にも気付いていないだろう。

繋がれた手を見て舌打ちした男もいたしな。

「私の方がいつも妬いてるのに・・・なんか嬉しい」

小さな声で呟いたの腕が肩の腕を通り過ぎ、俺の唇に熱を落とした。

彼女がこんな事を言うのは初めてで、俺は思わずニヤけそうになる。

それを隠すように「浮気すんなよ」と言いながらキスをした。


2016/7/29