ハイキュー!!

黒尾鉄朗

ハァトの行き先

久しぶりの土曜の練習休み。

俺は新しいシューズを見ようと思い、大きなスポーツ用品店がある街に出掛けた。

研磨を誘ったけど昨日発売のゲームがあるから出てこなかった。

電車を乗り継ぎ、渋谷まで出る。

階段を下りて改札を出て、プラプラしようか目的地に行くか迷っていると名前を呼ばれて振り返れば木兎がいた。

「ヘイヘ~イ!音駒も練習休みか~?」

「そういう事。そっちも休みか?」

「体育館の整備だか何だかで使えないんだよ」

「ふーん・・・ん?」

木兎の横に立つ女の子。

ちょっと可愛い系?

彼女が丁度俺を見上げたので視線が合う。

するとちょこんと会釈をされたので、会釈し返した。

「デートか?」

「ちげえよ!」

「買い物に付き合って貰ってんの」

「それってデートじゃ」

「ちっがーーーう!」

「木兎の好きな子の誕生日プレゼント選びに行くだけですよ」

「なるほど。ご愁傷さま」

「本当に」

「え?何で?というか黒尾は何してんの?」

「シューズ見ようかプラプラしようか迷ってたトコですよ」

「なら一緒に行こうぜ!俺も新しいサポーター欲しいし」

「私の事はガン無視ですか」

「まあまあ、両手に花って事で」

木兎と反対側の彼女の隣に立つ。

「どくだみそう」

「それ ってどんな 花?」

「ここにいると邪魔だから移動しようぜ」

とりあえず近場の有名な建物に入る。

プレゼントする物は決まっているらしく、30分もしないで買い物は決まった。

会計とラッピングの間、彼女、はスマホをいじっていた。

紙袋をぶらさげた木兎と三人、スポーツ用品店に向かう。

さんはスポーツをしていないらしく、用品に興味はなさそうだ。

けれど木兎が「これどう?」と話しかけ律儀に応えていた。

買いたいものを買い、建物を出る。

時計を確認した彼女が「喉が渇いた」と言うのでファーストフード店に。

俺と木兎はバレーの話しで盛り上がるが、彼女はスマホを触っている。

気にはなったがまあ、嫌な顔 はしていないので話を続けていた。

「良し!駅に行こう!」

残っていた飲み物を一気に飲み、トレイを持って立ち上がる。

俺と木兎は慌ててそれについて行く。

「なあなあ、~。どっか遊びに行こうぜ~」

「はいはい、ちょっと待って」

ハチ公の辺りで彼女が立ち止り、再びスマホを手にする。

そしてモザイクの方を見て手を振った。

彼女の見ている方を見れば、それにこたえるように手を振る女の子がいた。

「急にごめんね~」

「びっくりしたよ~。え?木兎くん!?」

さん!?」

そしてさんが俺の隣に立ち、腕を組んで来た。

「と言うワケで~。私は彼とデートして帰るからバイバイ!」

「え?ちょっ!?」「おい、!?」

「悪いけど駅の向こうまで付き合ってください」

小さな声で言われ、俺は背後の木兎に向かって手をヒラヒラさせた。

ガードをくぐって駅の反対側へ。

その途端、腕が離れた。

「巻き込んでゴメンね。あの二人がもどかしくて」

「暇だったから別にいいけど。木兎の焦った顔も見れたし」

「それじゃあ、ありがとう」

彼女が俺に背を向けて行こうとしてるのは駅じゃなかった。

「ちょっと待った」

「ん?」

「どこ行くの?」

「せっかく渋谷に来たし、タワレコでも行こうかなって」

「お付き合いしましょう」

「え?でも」

「デート、ナンデショ?」

彼女の手を取って繋ぐ。

すると彼女は笑って俺の隣に並んだ。

店に入り、あれこれと見て回る。

視聴コーナーで互いのオススメを聞き合ってみる。

案外と同じような趣味をしているらしく、それだけでも時間が過ぎて行った。

歩いて喋りつかれた俺達は店内の喫茶コーナーに腰を据える。

「あ、そろそろ帰らなきゃ」

立ち上がろうとする彼女の腕を掴む。

「連絡先教えてよ」

「え?」

「ぶっちゃけ、付き合わない?俺達」

「ん~・・・良いよ」

そして連絡先を交換し、彼女を家まで送った。

新しいシューズも彼女もゲットした良い土曜日だ。

明日は雨が降ろうが槍が降ろうが俺は笑っているだろう。




その日の夜、木兎からラインが。

と付き合うんだって!?お前、勇者だな・・・』

「俺に対しては凄い良い子だぜ?」

『そうなのか!?』

木兎のヤツ、相当に迷惑掛けてんだなってのがわかった。


2016/12/09