ハイキュー!!

黒尾鉄朗

初めてのお泊り

大人だって恋がしたい!提出した『背中に隠した恋』黒尾side&その後です。




高校を卒業後、俺は社会人バレーのチームに所属。

移籍する予定は無かったが、会社の業績不振によりバレー部の廃部が決定した。

まだバレーを続けたい気持ちがある以上、移籍を余儀なくされる。

幸いにも、新しいチームはすぐに決まった。

移籍と言う事は会社も変わったワケで、そこで歓迎会が行われた。

「黒尾さ~ん」

背が高いと言うだけで寄ってくる女の子達。

その中で彼女、は少し、いや、かなり違っていた。

せっせと料理を取り分け、せっせと注文をする。

そして取り分けた物をせっせと食う。

周りに媚びないし、自分のペースを崩さない。

何故か印象的だっ た。

それから も度々視線が行くようになる。

あれこれ噂話を聞くとこによれば、恋人がいるらしい。

まあ、自分にも俺を好きで一緒にいるのか『ファン』がいる人物の恋人でいる事がしたいのか謎なのがいる。

そろそろこの子とは終わりにしよう。

あれこれ欲しがり、土日に会いたいと要求しだしたからだ。

シーズンが開幕すれば土日などない。

我儘を聞いてやるほど彼女に惚れてもいない。

そういう意味で言えばさんは我儘を言って貰いたいし甘えて貰いたいと思える。

というか甘やかしたい!

あー・・・うん。

今の彼氏から奪いたいと思う程、惚れてんのね、俺。

そろそろ本格的に動きますか。



そんな事を考えてた時、リーグ戦が行われた。

「うえーい」

ネットの向こうにいる木兎を挑発する。

ドシャットすると気持ちが良い。

というか、コイツとの対戦は面白くて仕方ない。

セット間にチェンジコートすると、向こうから「へいへーい」と木兎が叫んでる。

何となく木兎を見ると、その向こうに見慣れた顔が。

あり得ないと思ってる事が起きると二度見するもんだな。

視界の隅で木兎が何か騒いでたけど、俺の意識は彼女に向かっていた。

週が明けた月曜日、少し早めに出社して彼女を待つ。

彼女を見つけて腕を引いた。

この時間に開いてて話が出来る場所など限られている。

腕を引いたまま、会議室のドアを開けた。

「ねえ、忍チャン。昨日、試合に来てたよね」
とりあえず確認だけしないと。

俺は思ってる事を口にした。

近すぎず離れすぎずの距離で。
「え?」
「来てたデショ」
「えっと・・・はい」
ジリジリと距離を取ろうとする彼女にイラっとしながら、

逃がさないとばかりに近寄る。

すぐに逃げられない様に彼女の体をドアに押し付けた。

「誰を応援してたのかな?」
「え?」
「誰の事見てたのかな?」
「誰と言うか」
ここですぐに誰か、会社のって言わない事で言いにくい相手なのは分かった。

視線が定まらない事、顔が赤い事を考えると・・・
考えるより先に彼女の腰を抱き寄せていた。
「え?」
「素直じゃないって言われない?」
「・・・・・・」

まずい・・・・・・

かなり彼女は俺の好みだ。

Sっ気があるか無いかで言われれば確実にある。
「ま、いっか。これから素直になって貰うし」
「あ、あの!」

「手始めに今度の試合、応援しに来て。もちろん俺の」

がっついてると思われるのもアレだし、彼女の額にキスを落とす。

真っ赤になった顔に、押し倒したい衝動を堪えるのに苦労した。



あれから数日が経過した。

彼女との関係は今までにメールや電話が増えた程度。

けれど今日、木曜日だけどデートの約束をもぎ取る。

待ち合わせ場所に行けば既に彼女が待っている。

「お待たせ~。悪いね、練習長引いちゃって」

「いえ、大丈夫」

「すぐにでも食事って言いたいけど行きたい場所があるんだよね」

「あ、はい」

彼女の手を取り、指を絡める。

肌寒いこの時期だからか、彼女の手が冷たい。

いつもならジャージで帰ってるけど、今日はスーツに着替えてきている。

自分のコートのポケットに、彼女の手ごと突っ込む。

彼女の歩幅に合わせ、予約を入れておいた店に向かった。

高層ビルにあるレストランで、案内された席は都内を見下ろせる窓際の席だ。

彼女の好き嫌いを確認し、コースメニューを頼む。

他愛ない喋りをしながら料理を堪能する。

デザートが来てすぐ俺はポケットから小さな箱を取り出した。

彼女は目を丸くしながらラッピングをほどいていく。

中には小さな宝石を埋め込んだシンプルなリング。

「これ・・・」

「とりあえずペアリングってヤツ」

俺は自分のネックレスを持ち上げ、通してあるリングを見せる。

彼女の物より指が太い俺のは、かなりいかつい。

「え?でも・・・」

「誕生日の俺を祝うと思って貰ってくんない?」

「誕生日!?」

この驚き方かたすると、やっぱり知らないらしい。

まあ、何かはこれから貰うから良いんだけど。

ベルベットのケースから指輪を取り出し、彼女の右手の薬指に嵌める。

「左手はまた今度ね」

「黒尾さん・・・」

「あ、名前で呼んでねー。いずれチャンも黒尾になるんだし」

「え!?」

「結婚を前提のお付き合い考えてるんで」

「・・・・・・」

頬を染めて俯くとかヤメテ!

俺の理性が焼き切れるから!!!

デザートを食べ終え、彼女の手を取る。

「この後・・・ウチ、来ない?って、なんか片言みたいになってるな」

「えっと・・・」

彼女の腰を抱き寄せ、耳元に顔を寄せる。

「誕生日プレゼントに自身が欲しい」

小さな声で囁くと、腕の中で彼女の体がビクっとした。

真赤になってる彼女に軽くキスを落とし、タクシーに乗り込んだ。



ベッドの中で瞳を潤ませながら

「誕生日おめでとう、鉄朗さん」

なんて言われたもんだから、彼女を朝まで解放できませんでした。


2016/11/17