ハイキュー!!

黒尾鉄朗

布石の布石

「・・・・・・吐きそう」

朝起きた時から体はだるいし熱っぽいなって思ってた。

だから朝ごはんのおかわり止めたし母親が出してきた漢方薬も飲んだ。

それなのにこの体調の悪さは何なんだろう?

「そんなに具合悪いなら帰れ。つーか保健室くらい行け」

と親友の愛のムチで保健室に向かってるワケで。

なんか視界がグラグラして車酔いしてるみたいにムカムカする。

「皆勤狙ってんのに・・・・・・」

「あれ??」

人が具合悪いのに声掛けやがってと思ってそちらを向けば、腰を折り曲げて私を見るリエーフがいた。

が具合悪いって・・・鬼のらんおう?」

「それ卵。かくらんな」

「あ、それそれ」

「あんたと私、なんで同じ学校にいるのか謎だわ」

「風邪?バカは引かないって言うのに。あ、俺にうつさないでね。来週入試面接だから」

「具合悪いの?保健室連れて行こうか?くらい言えないのかロシア人」

「元気そうでなにより。じゃーなー」

と情けも無いヤツは去っていった。

けれど保健室にたどり着くくらいまでの元気が出たので良しとしよう。







「皆勤かかってるんで!」

と早退を勧める保健医を説き伏せて放課後までネバった。

けれどチャイムが鳴った瞬間に「帰りなさい」と保健室を追い出されてしまった。

ガヤガヤしだした校舎を背に、トボトボと歩く。

「お迎えに上がりました、お姫様」

聞きなれた声に顔を上げると、見慣れたツンツン頭が見える。

恭しく執事の様な礼をしていた彼が顔を上げた。

「てつろ・・・っ!!」

「具合悪いんだって?だから迎えに・・・っと!!」

私は駆け寄ってジャンプして首に抱き着いた。

そして鉄朗はちゃんと抱き留めてくれる。

身長差もあって、私の足は地に着いていない。

「うー・・・」

「はいはい、頑張ったな」

そう言いながら子供をあやすみたいに私の背中をぽんぽんする。

普段なら子ども扱いされたみたいで面白くないけど、今日は特別。

「俺に会えて嬉しいのは分かるけど、帰って寝ないと」

「・・・・・・うん」

私は腕の力を緩め、足を地面に付ける。

鉄朗は私の横をすり抜け、カバンを拾ってくれて自分の肩に掛けた。

「歩ける?」

「うん」

そしてバス停まで歩く。

ベンチに座って隣に座った鉄朗に寄りかかると、肩を抱かれた。

程なくしてバスが来てそれに乗り込む。

「寝てていいよ」

最後列に座って彼に寄りかかると、再び肩を抱かれた。

外の時よりも彼の温もりをダイレクトに感じる。

「何でいるの?」

センサーがビビっと感知しました」

「うん、嘘だよね」

「嫌だなー彼氏を疑うなんて」

「嘘でも嬉しいから許す」

「有難き幸せ。まあ、リエーフだけどな」

「ああ、アイツ・・・」

なんだかんだでフェミニストか。押し付けただけか?

なんて思いながら目を閉じる。

2つ上の鉄朗とは幼馴染で、小さい時から好きだった。

けれど鉄朗は研磨とバレーばっかりやっていて、私はその中に入れなかった。

私もやってた時もあるけど、二人の様に熱中する程では無かった。

だから二人を追って音駒を受験したけどバレー部には入らず帰宅部へ。

そして最初に彼氏が出来た時、鉄朗に「浮気を許すのは全国行くまでだから」と言われたのだ。

付き合ってもいないのに浮気って何よと思いつつも嬉しくて仕方ない。

だから速攻で別れ話をした。

彼氏がいた歴24時間以内って最短だと思う。

そして全国に行けたのが正月明けで、鉄朗の大学受験だ何だとあって今に至る。

、降りるぞ」

鉄朗に呼ばれて目を開けると家の近くのバス停付近だった。

家に帰ると玄関に母親がいて学校からの連絡が来て待ってたらしい。

そして薬だ何だと買い物に行くと言って入れ違いに家を出て行った。

玄関に座り込んでローファーを脱ぎ、家に上がると鉄朗が「ん」と両手を広げた。

「何?」

「部屋まで連れてってやるからおいで」

私は素直に彼の腕の中に行くと、お姫様抱っこをされながら階段を上がった。

自分の部屋に行き、ベッドにゆっくり降ろされる。

そして勝手知ったるなんとやら、私のパジャマを出してくれる。

「・・・・・・向こう向いてて」

「もう全部見てるし」

「ニヤニヤすんな」

「生まれつきの顔にケチつけんな!」

腕組みをして私をニヤニヤしながら見る彼。

私はブレザーを脱いでTシャツを頭から被り、その中でブラウスと下着を外す。

スカートを履いたままズボンを履き、スカートを脱ぐ。

全部見られる事してても恥ずかしい物は恥ずかしい女心を理解した上でのこの男の行動がムカつく。

早々に布団に潜り込めば制服をハンガーに掛けていく彼。

私は体勢を整え、深く息を吐き出す。

すると鉄朗がベッドに腰掛けて体が揺れた。

その瞬間、彼の顔がドアップに。

「熱も出て来たんじゃね?」

「うつるよ?」

と言い終わらないうちに唇が重なる。

「平気」と言いながら再びキスされて、深いものへと変わる。

「中、熱いな」

「本当にうつるからダメ」

「久しぶりなんだから良いじゃん」

「リエーフなんかは近寄りもしなかったよ」

「ベッドの上で他の男の名前出すとか・・・覚悟しろよ?」

「はぁ!?っ・・・んっ・・・」

さっきよりも激しく絡んでくる鉄朗の熱に息が上がる。

「リエーフなんかより鍛えてるからの風邪はうつらないんですー」

鉄朗の体が布団越しに密着し、その熱でもクラクラしそうになる。

息苦しくて彼の胸を叩くと、ペロリと唇を舐められて離れていく。

「元気になったら今日の分の埋め合わせして貰うんで」

「え?」

「今から楽しみだなー」

と、またニヤニヤした顔になる。

「バカ」

何となく気恥ずかしくて布団に潜り込む。

するとその上からポンポンと叩かれた。

「早く治してねー。俺が寂しいから」

なんて言われたもんだから布団から顔を出すと、優しく微笑む鉄朗がいた。


2017/11/27