ハイキュー!!
気の済むまでキスして
真っ暗な闇から目を開けるだけで明るい空間が飛び込んで・・・・・・こない。
「おはよう」
「お、おはよ・・・・・・」
「まだ足りない?・・・チュッ・・・」
目を開けたらドアップの鉄朗がいたはずなのに、唇が重なる事でまた真っ暗になる。
重なる唇から生温かい舌が入り込んでくる。
その途端に口の中にコーヒーの香りが広がる。
「んっ!」
「まだ足りないんだけど」
「わ、私もコーヒー飲みたい」
「だめ。先にキス」
起きてからというか、多分起きる前からキスされ続けたら変な気になると言うか。
その前になんとかしないと!
抵抗を表す為に彼の胸を押す。
「往生際が悪いなー。今日と明日は俺が好きなだけキスする日だろ?」
「あ、朝からこれじゃどれだけ!!!?」
「これに懲りたら報告すればいいんじゃん?」
と、再びベッドに押さえつけられてキスされた。
事の発端は先週にまで遡る。
先週は鉄朗も友人の結婚式に呼ばれていて会えないでいた。
だから私もそれに合わせて高校の同級生達と飲み会をする事に。
二次会に移動する時に鉄朗にバッタリ会った。
別に隠す事でも無いし、私は友人達に紹介をした。
けれど鉄朗はお気に召さなかったらしい。
「男がいるなんて聞いてないんですけどー」と目の前で仁王立ちされた。
会社の飲み会だ何だに参加しても怒らない人なのに、不思議で仕方なかった。
「もしかして俺はヤキモチとは無縁とか思ってない?」
片眉がピクリと上がりながら見下ろされた目。
「え?鉄朗って妬くの!?」
「何で驚くかな」
「いつも何も言わないじゃん!」
「仕事の飲み会なら男もいるのは普通だけど、友達は別でしょ。何で男もいるって言わないかなー」
「そういうのを気にしないのかと思ってた」
「疚しい事があるから隠したかったとか?元カレがいたとか」
「えぇーーー!?」
「ボクはとても傷つきました」
「キモイ」
「・・・・・・お仕置き決定」
「何で!?」
「ボクをどん底にまで突き落としたからです」
「えぇー」
「まだ口答えするのかな?」
「いいえ。で、お仕置きって?」
「今度の週末、好きなだけキスさせて貰います」
「はぁ!?ちょっと、嫌だ!」
「拒否権ありませんー」
という事があったのだ。
鉄朗はヤキモチを妬かない寛大な心なのかと思ったけど・・・・・そうじゃなかったらしい。
デートに出掛ける準備中も、手を繋いで歩いていても、とにかく不意をつかれてキスされまくっている。
唇を重ね合わせているだけとはいえ、道端でキスされるのは・・・・・・
「きゃあ!」
女の子が声を上げてても鉄朗はお構いなしにキスをしてくる。
「ねえ、鉄朗」
「却下です」
「まだ何も言ってない!」
「恥ずかしい?」
「分かってるじゃん」
「お仕置きだから却下です」
「・・・・・・」
物凄く恥ずかしい事ではあるんだけど、一緒に飲みに行っただけでこんなに妬かれるとは・・・
なんだかちょっと嬉しくなってきた。
「ついに見られる快感に目覚めた?」
「違うっ!!!!」
信号待ちで止まったので彼の手をぎゅっと握り、肩に頭を乗せた。
こういう形とはいえ、彼の気持ちが見えたというか。
こんな風に愛されてるんだなーと実感してしまった。
「疲れた?」
「違うよ。好きだなーって」
と言い終わる前にまたキスされる。
そして信号が青になった途端に歩き出した。
「予定変更」
「え?」
「が可愛い事を言うから今すぐ愛を確かめたくなりました」
そして向かったのはすぐ傍にあったラブホテル。
散々愛し合ってから「家に帰るまで待てませんでした」と言われた。
真っ裸でベッドで正座されても・・・ねえ。
だから私は彼を押し倒してキスをする。
すぐに上下が入れ替わり、再びキスをし続ける。
今日はもう、飽きるまでキスをしよう。
>2017/10/12