ハイキュー!!
終電間際の長いキス
先日行われたインカレ大会において、うちの大学は男女共にベスト4に入る快挙を成し遂げた。
それに伴って打ち上げと言う名のお疲れさん会が行われた。
未成年もいるけれど居酒屋を貸し切っての打ち上げとなった。
店が狭い為広間に全員とは行かず、テーブル席も使っての宴。
私は仲良しの4人でテーブル席を陣取った。
「それではベスト4を祝して、かんぱい」
男子の部長の挨拶でグラスを合わせ、飲み物で喉を潤す。
私は良い塩梅に20歳を越えているのでアルコールだ。
とりあえず腹に食べ物を入れていく。
アルコールと言うのは魔物で、ちゃんと食べないと酔いが回るのが早い。
食べて飲んでしているうちに場は盛り上がり、だんだんと席が変わっていく。
私もトイレに立つと、座敷から名前を呼ばれて上がり込む。
そこには監督にコーチに、男子部の黒尾君がいた。
黒尾君とは学部が違うし、あまり喋った事はあまりない。
特徴ある髪は寝癖だとか。
飄々としてるけど背は高く、女の子にモテるらしい。
隣のコートで練習をしているから彼のバレースタイルは知ってる。
背が凄く高いのに動きがしなやかで、ブロックも上手い。
私は背が小さくて高校ではセッターだったけど、今はリベロとして選手登録している。
あの高みからの景色ってどんなのだろう・・・そんな事を思ってた。
会は盛り上がりながら時間となり、盛り上がり足りないメンバーでカラオケへと流れた。
誰かが予約していたらしく、大きな部屋を貸し切り。
歌って踊って騒いで、あっという間に時間となった。
「○○方面こっちなー」
酔っぱらっていない人が先導しながら駅に向かう。
私もその波に乗りつつ、駅に向かう。
「酔ってる?」
「え?」
隣から低めの声がして顔をあげると黒尾君がいた。
「結構飲んでたみたいだけど」
「フワフワしてるけ ど後半はお茶だったから」
「はエライな」
その瞬間、頭を撫でられた。
「え?」
「髪、柔らか・・・」
てっぺんだけ撫でてた手が、髪に沿って動く。
歩きながら撫でているからか、自然と体が近付いて行く。
戸惑いが歩調に現れてスピードが落ちて行くと、グループの最後になっていた。
もうすぐ駅のターミナルと言う時に髪から手が離れる。
安堵はすぐに打ち消されてしまった。
「なっ・・・んっ・・・・・・・」
腕を引かれた瞬間、背中が壁についた。
その瞬間に重ねられた唇。
けれどその唇はすぐに離れた。
一瞬離れた隙に目を開けると、唇の主が黒尾さんだと言うのが分かった。
彼の目がすっと細められて再び唇が重なる。
「んんっ・・・」
今度は押し付けるように重ねられ、無意識に彼の胸を手で押す。
けれど黒尾君は体も押し付ける様に密着させてきて体の間で手が動かせない。
身長差もあって私は上を向かないといけないし、自然と開いた唇には彼の舌が入り込んでくる。
「んぁっ・・・はっ・・・」「んっ・・・」
二人の吐息とクチュクチュと言う水音だけが聞こえる。
お酒のせいなのか羞恥心より快楽が背中を駆け抜ける。
気が付けば彼の腕が私の体を抱きしめていた。
「んっ・・・待っ・・・電車がっ・・・」
何とか顔をずらして言葉を紡ぐ。
やっと彼の顔が離れて顔が見えた。
見なければ良かったと後悔したのは後の祭り。
彼の唇が濡れて光っているからだ。
けれどすぐに顔がまた寄せられる。
「帰したくなかったって言ったら?俺の家、ここから歩いて行けるけど」
「・・・・・・」
「どうする?」
ここまで引き留めておいて最後の決断は私に任せるとか、良い性格してる。
思いっきり睨みつけようとしたけど意味は無いだろう。ならば…
「泊めてくれる?」と、ちょっと強請る様に小首を傾げて甘ったるくなるように見上げる。
そう返せば一瞬目が開かれたけど、すぐにニヤニヤとした笑いになった。
そして彼の親指が私の唇をゆっくり撫でた。
「帰る時間すら惜しいかも。そこでいい?」
唇から離れた手が、今歩いて来た方を指差した。
その指の先には【休憩】とか【空室】と書かれた建物。
「良いよ」
「決まり」
そして彼に肩を抱かれながら建物に入った。
2017.08.31