ハイキュー!!
ハ・ジ・メ・テ
私には片想いしている相手がいます。
その男はとにかくバレーボールに夢中です。
何度か試合を観に行った事があるけど、かなりヤバイくらいに格好いいんです。
そして男子とばかりつるんでミステリアスな雰囲気を醸し出しているけど、本当は人見知りなだけらしい。
髪型は…まあ……あれだけど、背は高いしで女子には人気があったりします。
勇気のある女子が何人も告白したけど、見事に玉砕。
その理由としては「部活に集中したいから」だそうで。
何で彼について詳しいかって?
それは私が彼と日常会話をする数少ない女子に含まれてるからです。
私としては彼と恋仲になりたいけど、今の関係を壊すのも怖くて告白できずにいます。
「で?告白する気になった?」
向かい合わせでお弁当を食べていた親友のがそんな事を言い出すから、思わず口にしていたいちごみるくを吹き出しそうになった。
「ちょっ!きたなっ!!!!」
「ごほっごほっ!!!!がいきなり変な事言い出すからでしょ!!」
「どこが変なのよ。まさか卒業まで言わない気?」
「いや、だってさ……まだ大会あるじゃん?」
「もうすぐ誕生日って言ってなかったっけ?プレゼントあげるんでしょ?」
「去年もあげたし、まあ、あげなくもないけど……何にしようか迷ってる」
「にリボン付けて『私をあげる』でいいんじゃ?」
「はぁ!?それって拒否られたらショックで立ち直れないじゃん!」
「男なんて処女あげますって言えばOKでしょ?あいつじゃ嫌なの?」
「いや、そういう問題じゃ……」
なんて会話をしてたら「って彼氏いんの?」と声が割り込んできた。
勢いよく顔を上げると夜久が牛乳パックのストローを咥えていた。
「っ!!!!」
「あら、やっくん」
「誰が『やっくん』だよ」
「は片想い中よ」
「なんでが答えるのよ」
「へえ、片想い…ね」
「あら、やっくん、意味深ね?」
「マジでそれ止めろって」
そんな時、救いの手ならぬチャイムが鳴って話はお流れとなった。
そして事件は次の日、つまり黒尾の誕生日直前の金曜日に起こった。
11月も半ばで真冬並みに冷え込んだ朝。
手をこすり合わせながら暖を取りながら冷たい廊下を歩いていると、前方で「いる~?」と聞こえて来た。
声の方を見れば黒尾が教室の出入口の所で中を見ながら大声を出していた。
「クロ?」
思わず声にしてしまったら、本人が気付いて私を見たと思ったらズカズカと近寄ってきて腕が掴まれた。
「ちょっと顔貸して」
昔の不良が言いそうなセリフと共に腕を引かれ、元来た廊下を進んで行く。
着いた先は朝なら誰もいない屋上へ続く階段の踊り場だった。
「カレシ出来たってマジ?」
「はぁ!?」
藪から棒に何を言われるのかと思えば、想像してたより斜め上からの質問だった。
思わず開いた口が塞がらない状態。
「そいつに処女を捧げるとか」
「なっ!?ちょっ……何言ってんの!?」
「で?どうなの?」
「どうなのって……彼氏はいないけど」
「んじゃ、誰に処女を捧げるんですか?」
「だからなんでそこに拘るのよ!」
「そりゃあ、惚れた相手の処女の行き先は気になるってもんデショ」
「まあ、それもそう……え?」
「チャンはお耳が老化しちゃったんデスカ?」
「え?だって」
「今年のプレゼントは何かと期待してたら、とんでもない話を聞かされるし?ボクのクリスタルハートがズタボロよ」
「どこがよ!でもプレゼントはまだ決めてなかったんだよね。何が良い?」
「の処女」
「……いい加減、そこから離れてよ」
「ボクが相手じゃご不満デスカ?」
「だから、そういうのって好きな人同士がするものでしょ?」
「はボクが嫌いなんデスカ?」
「茶化さないで…よっ!!!?」
言い終わらないうちに体が壁に押し付けられ、黒尾に壁ドンされた。
「なっ!?」
「好きだ」
「え?」
「好きだからの処女が欲しい」
「それって体だけみたいな」
「惚れた女のすべてが欲しい」
「っ!!」
「返事は?」
「……ずるい」
「なにが?」
「わかってるくせに」
「ボクは人の心を読めませーん」
ここまで近づいて私の顔が真っ赤なのに気付かないはずがない。
絶対に私の気持ちを分かっててやってるのが手に取る様に分かる。
そんなクロをギャフンと言わせるにはどうすればいいか、頭の回転をフル回転させて思いついた。
私は腕を持ち上げてクロの首に、彼の上半身を引き付けるようにしてキスをする。
「………」
「っ!!!!」
顔を離すとニヤリとしたクロの顔があった。
その瞬間、腰を抱かれて唇を押し付けられる。
「んっ……」
息苦しさから彼の胸を押すけど、離れてくれない。
どのくらいの時間が経ったのか分からないけど、やっと唇が解放された。
「んじゃ、今日からチャンはボクの彼女って事で」
「……うん」
彼女って響きが妙に照れくさい。
腰を抱かれたままの状態もだ。
「日曜の誕生日にはプレゼントくれるんだろ?」
「……うん」
あーそうだ、プレゼント。
何をあげればいいんだろ?
「何が欲しい?」
「の処女|」
「……うん、え?」
「だってあげるつもりだったんだろ?」
「はぁ!?」
「いや~~~楽しみだな~♪」
その瞬間、予冷が鳴り響いた。
クロは私の手を取り、教室へと歩き出す。
「ちょっと!」
「やっぱ下着は白?いや、ピンクも捨てがたいし青も……」
人の話など聞きもしないで色についてブツブツ言っている。
クロの思惑通りに進むのは面白くないから、恋人繋ぎしている指に思いっきり力をこめてやった。
2019/11/15