黒子のバスケ

青峰大輝

重ねた場所から恋が広がる。

夏休みも終わりに近づく炎天下の中、なんとなく暇を持て余してリングのある公園へと向かう。

そこは良くテツが練習してるリングでもあり、橋の上から見るとやっぱりテツがいた。

「……っ!」

橋の上から声を掛けようとしたが見慣れない人物が視界に入り込んでテツと呼ぼうとした名前を飲み込んだ。

オレから見えるのはテツだけだが、笑顔とムっとした顔を繰り返している。

相手は―――オンナか?

ショートカットの小柄な人物、ヒップホップのダンサーが着るようなダボっとした上下で区別がつかない。

巨乳でもなさそうだ。

とりあえずリング脇の階段を下りていくと「青峰くん」とテツが気が付いた。

「よう、テツ」

返事をするとテツの隣のヤツが軽く頭を下げた。

「練習か?」

「シュート練習してたらさんが来て意気投合したので1on1してたところです」

「へぇ・・・」

「青峰くんはどうしたんですか?」

「ブラブラしてただけだ」

「それなら青峰くんも一緒にやりませんか?」

「良いけど・・・1on1か?」

「ハンデとして2対1にしてください」

「そのオンナ、バスケ出来んのか?」

視線をテツから隣の人物に移すと、ムッとした様な表情になって「」と言った。

「あぁ?」

「名前、だよ」

「そーかよ。オレは大輝だ」

「ダイキね。一応インターハイでベスト4には入ってるよ」

「へぇ……んじゃ、楽しめそうだな」

二人がオフェンス、オレがディフェンスで始まった。

全国区なだけあって、はそれなりに動けている。

一般的なバスケレベルで言えばテツより上かもな。

けれど2対1とは言え、オレからシュートを奪えない二人。

「全然決まんねぇな~シュート」

「ムッキー!あったまきた!テツ、本気出すからね!」

はボールを抱え、目を瞑って大きく深呼吸を一度した。

「―――行くよ」

開かれた目は色が変わっていた。

「お前、ゾーン入れるのかよ・・・っ・・・・・・」

フェイクの数も増え、テツのパスすらフェイクにしてゴール下にガンガン攻めてくる。

視線と同時に掌のフェイクとか、マジですげぇ!

自分の中のオンナと言えばさつきで、バスケは知ってても動けない。

さつきと同じオンナでここまで動けんのかよ!

ちょっと興奮してきちまった。

「テツくんっ!」

テツからのパスを受け取ったがフェイクを4つ入れる。

(それはフェイクでドライブだろ!)

頭で考えると同時に右手と右足が出た。

その足にが突っかかる。

「なっ!」「あぶなっ!!!!」

無意識のうちにを抱きしめると彼女の勢いを受けて後ろに倒れる。

背中が灼熱のアスファルトへ付き、汗で濡れたTシャツの水分が蒸発していく様だった。

「……ってぇ…」

「ごめん、ダイキ!大丈夫!!!?」

「あぁ?お前なんて軽い……って、結構胸、デカいじゃん」

「ちょっ!はぁ!!!?」

オレの上に倒れこんでいた小さな体が勢いよく離れていく。

密着してた感じからすると……「D以上だな」

「すいませんさん、青峰君は巨乳好きなんです」

「セクハラ!!」

「小さいより良いじゃねぇか」

「動きにくいし肩が凝るし良い事ない!」

「大は小を兼ねますよ」

「テツくん、サラっと言い過ぎ…」

「ケチケチすんなって」

「意味わかんない」

するとゴール下の鞄から音楽が流れだした。

「あ、時間だ」

鞄からスマホを取り出してタッチすると同時に音が消える。

それを再び鞄にしまい、肩にそれを掛けた。

「それじゃあテツ君。楽しかった!」

「何だよ、冷てぇな」

「次に会ったら本気にさせるから!覚悟しててよね!!」

「お前、東京じゃねぇだろ」

「陽泉高校だよ。じゃあねぇ!」

と言って彼女は走り去っていった。

「陽泉って」

「紫原君と仲が良いらしいですよ。ここも彼に聞いたって言ってました」

「へぇ…。つっても連絡先すら知らねぇんだから会う事も」

「僕は知ってますよ。ついでに明日も来るそうです」

「はっ…マジかよ」

残りの夏休みも後1日は楽しめそうだな。





2018/07/17