黒子のバスケ
異変
最近恋人である笠松幸男がおかしい。
残業を終え、酒臭くなってきた電車に揺られながらホームへ滑り込む。
スーパーの看板が視界に入ったが、今日は料理をする気力が無い。
今日は冷凍庫に眠らせた料理を食べよう。
料理は嫌いじゃないが、疲れ切った体に鞭打ってまで食のこだわりは無い。
マンションのエントランスで郵便を確認してエレベーターへ。
鍵を開け、ドアをあける。
「ただいま~おかえり~」って一人虚しいやり取りをする。
「ん?」
玄関には男物のスニーカーが。
その途端に「お帰り」と声が掛かった。
「あれ?今日って約束してたっけ?」
「いや?来たらまずかったか?」
「問題ないけど ・・・何も 作れないよ?材料無いし」
「俺が作ったから必要ないだろ?」
と言ってリビングに戻っていった。
私も彼の後に続いて行く。
ソファの上には朝干していった洗濯物が畳まれているし、
テーブルには料理がラップされて並んでいた。
「食べるだろ?着替えて手を洗ってこいよ」
「あ、うん」
私は寝室で着替えて洗面台で手を洗って席に付いた。
すると最後の味噌汁が湯気を立てながら並べられた。
「いただきます」
「おう。熱いから気を付けろよ」
幸男は私の向かいに座る。
彼の料理は【男の料理】って感じがありありとするが、美味しい。
味噌汁だってちゃんと出汁から取る。
その味噌汁をすすりながら疑問を口にしてみる。
「ねぇ・・・私、何かした?」
「はぁ!?」
「最近変なんだもん」
「・・・・・・」
「あーーー!もしかして浮気した!?罪滅ぼし!!!」
「ちげーよ!なんでそんな発想にあなるんだ!?」
「男が優しくなるのって後ろめたい事があるからだって」
「あー・・・」
と言って視線を逸らす。
「やっぱり何かあるの?」
「いや、ちょっと待て」
そういって今度は席を立つ。
自分のバックを手に、再び席に着いた。
「最初に言っておくけど、色々考えたんだからな?」
そしてバックの中からラッピングされた小さな箱を取り出した。
それを受け取り、ラッピングを取っていく。
出てきたのはビロードのケース。
彼の手が伸びてきて、私の左手を取った。
「結婚・・・してくれませんか?」
「・・・・・・」
「本当はレストラン予約してとか色々考えてたんだからな!お前が変な事を言い出すから・・・」
小さくなっていく声。
私は立ち上がって彼の方へ行き、抱き付いた。
「!?」
「驚いたじゃん!」
「こっちだって驚いたっての」
そして私を膝に座らせ、抱きしめてくれる。
「で?返事はどうなんだ?」
「幸男のお嫁さんになりたい」
「ん。じゃあ、一緒に家族になろうぜ」
そして誓いのキスみたいな口づけをした。
2015/10/13