黒子のバスケ

実渕玲央

広い背中

実渕玲央と高校2年になり同じクラスになった。

イケメンで長身なのにオネエ言葉を使う。

と言っても下品では無く、優雅って言葉がピッタリだ。

二学期になって初めて席が隣になった。

結構色々と話せて面白い。

隣になって分かったのは、彼の女子力の高さ!

何だか自分が『女です』って大声で言えないくらい恥ずかしい気持ちが沸いてきた。

それから少しづつ、自分で出来る事をしようと思った。

ハンカチやブラウスのアイロンがけをしたり、 下着を手洗いしたり。

時間がある時は母親に料理を教わって、翌日の弁当のおかずにしたり。

母親から『やっと女として目覚めたのね!』と喜ばれた(失礼な)。

三学期になって席替えがあった。

私は前の方で、彼は後ろの方。

必然的に会話する事が減って行った。

「ねえ、。一緒にバスケ部観に行こう!」

最近赤司君を好きになった友人からの誘い。

そういえば実渕君がバスケ部だったのを思い出して一緒に向かった。

体育館でギャラリーに上がる。

丁度練習前でザワザワしていた。

ふと実渕君が視線を上げてギャラリーを見た。

私と視線があった?

そう考えた時、彼が少し微笑んだ気がした。

走り込みの後、バスケらしい練習が始まった。

色々な練習の後、試合形式のものになる。

実渕君の遠距離から放たれるシュートは、彼の様に綺麗だった。

笛がなり、彼がコートから出る。

その横には赤司君がいて、何か話をしている。

「!!!!!」

身長が違うから比べようも無いのは分かってる。

だけど・・・・・・彼が男の人だと実感した。

なんだか彼を見ている事が出来なくて、私は友達より先に体育館を後にした。




それから、私は彼を視界に入れる事が出来なかった。

不自然に目を逸らしてしまう事もあった。

休み時間もなるべく教室にいないようにしていた。

そして今日も昼休みに外でお弁当を食べようと思って腰をあげたら、

さん、ちょっと時間いいかしら」

「え・・・これから友達とご飯た」

「悪いけど急ぎなの」

そして彼に腕を掴まれ、廊下に出た。

すれ違う生徒が何事かと振り向いていくけど、歩みは止まらない。

声を掛けても返事が無いまま、誰もいない音楽準備室まで来ていた。

部屋に入り、彼と向き合わせに立つ。

だけど私は彼の目を見る事がなく、自分のつま先を見ていた。

「ねえ、さん。私、何かしちゃったのかしら?」

「な、何も」

「そう?なら、どうして顔を見て話が出来ないのかしら」

「・・・・・・」

「誰かに・・・何か言われた?」

私は首を振って答える。

実渕君から溜息が聞こえた。

そしてフワッと温かいものに包まれた。

「好きな子から避けられるのって、結構つらいのよ?」

「っ!!!」

「毎日頑張ってるあなたが好きなの」

「・・・・・・」

「告白の返事は聞かせて貰えないのかしら?」

「・・・・・・っ!」

「聞かせて貰えないのなら、このままキスしちゃうけど」

「あ、あの!」

「・・・・・・」

「この間練習を見て・・・・・・実渕君の背中が・・・」

「私の背中?」

「凄く広くて・・・・・・男の人だなって」

「・・・・・・今まで女友達だと思ってたりするのかしら」

「そうじゃなくて!・・・・・・クラスの男子とかと違って、凄い男の人だなって言うか」

「・・・・・・」

「そんな人に自分が今までしてた事が恥ずかしくなったって言うか・・・」

「それって男として意識してくれたって事かしら?」

「う、うん・・・・・・だから、放して欲しいんだけど」

「ダメ」

「え?」

「私の事、もっと意識して欲しいもの」

「!!!!!」
言葉と一緒に腕に力が入った。

私の体は彼に密着状態だ。

「で、でも!」

「きっと後ろから見たらさんなんて見えないわね」

「う、うん・・・」

「私を意識してくれた背中に感謝しなくちゃ」

「そ、そうなの?」

「早く、私を好きになって?」

「た、多分・・・好き、なんだと思う」

「それなら今から私の彼女になってくれないかしら?」

「ほ、本当に私で良いのかな」

「もちろん。これからって呼んで良いかしら?」

「うん・・・」

「さて、お弁当食べさせて貰おうかしら?の作ったヤツを」

「・・・・・・まだ、下手だよ?」

「努力してるのは知ってるから。でもその前に」

「?」

「キスさせて・・・」

近寄ってくる実渕君の顔。

私は恥ずかしくて目を閉じた。

唇に温もりを感じ、彼の背中に腕を回した。



2015/12/21