黒子のバスケ
the cinema
ウインターカップ2回戦。
うちの高校は敗退した。
相手は優勝候補だったけど、善戦したと思う。
せっかく来た全国大会なので、残りの試合を観戦する事になった。
そこで見かけたのが、あの黄瀬涼太だった。
「ちょっと!あれ、黄瀬涼太じゃない!なんで女子の大会にいるの!?」
メンバーの一人が言った途端、みんなが彼を見た。
彼はスマホを触っていた。
指が細かに動いたり止まったりしているからメールをしているんだと思う。
途中、優しく微笑んでいたのが印象的だった。
女の子たちも彼と握手したりサインを貰ったりしていた。
「開始1分前です」
コールと共に会場も静まって行く。
黄瀬君は柵に寄りかかりながら、試合を見るようだ。
試合は白熱している。
両校共に一歩も譲らない展開。
息も出来ないと思いきや、試合が動く。
フォワードの子がチェンジオブペースから切り込んだ。
そこでディフェンスに入った子がぶつかって倒れる。
ファールのコールがされるも、チャージングとなり4ファール。
その時、ふと黄瀬君を見る。
とても苦しそうな顔をしていた。
きっとこの学校を応援してたんだろうな。
スコアラーの勢いが欠けた学校が負けた。
私はお手洗いに行くとメンバーに告げ、席を立つ。
そして黄瀬君はいなくなっていた。
お手洗いを出て、席に戻ろうとした。
そこで脇道から鳴き声と小さな声が聞こえる。
何気なく視線を移す。
「諦めないで偉いッスよ。っちは頑張ったじゃないッスか」
そこには黄瀬君がいた。
壁に寄りかかり、女の子を慰めてる様だ。
(あれは最後のチャージングした子だ)
フワッと黄瀬君の腕が伸び、彼女の腰を抱き寄せた。
そして何か囁き、彼女にキス。
(映画のワンシーンみたい)
そんな事を思っていたら、彼と視線が合った。
「あ・・・」
見ていたのがバレて物凄く恥ずかしい。
そんな私に黄瀬君は唇の前で人差し指を立てた。
2015/02/09