黒子のバスケ

黄瀬涼太

オレとどっちが大事?

「見て見て、りょーた!」

部活が終わって校門を出た瞬間、愛おしい彼女の声で呼ばれる。

そこには普段とは違うバイクに跨るっちがいた。

「ちょ~~~カッコイイでしょ~♪」

とバイクを撫でる彼女。

「かっこいいッスね~。で、迎えに来てくれたんスか?」

「まさか!バイク借りたから見せに来ただけだよ。やっと大型免許取れたし」

「えぇ!?まだ乗せてくれないんスか!?」

「当たり前です。じゃあ、部活お疲れ様!帰ったらメールするね」

メットを被り、走り去る彼女。

のヤツ・・・・・・お前よりバイク選んだな」

笠松センパイの言葉が胸に刺さった。



久しぶりのオフ。

オレはっちと駅で待ち合わせをしていた。

映画を見て、ランチをして、ショッピングをして、

ありきたりなデートだ。

そして歩き回って疲れたのもあり、オレの家へと場所を移動した。

「はい、どーぞ」

「ありがとう」

オレが淹れた紅茶を渡すと、カップを受け取り一口飲む。

彼女の隣に腰を下ろし、オレもカップに口付けた。

「そういえば笠松センパイに言われたッスよ」

「笠松に?何を??」

っちはオレよりバイクを選んだって」

「へぇ・・・・・・」

「否定も肯定も無しッスか?」

「ねえ、涼太。私の為にバスケ部今すぐ辞めて」

「はぁ!?」

意外な問い返しに思わず声が裏返る。

でもっちの顔は大真面目だ。

っちは大事だ。

バスケは適当に始めたけど、今じゃ面白くて仕方ない。

青峰っちに勝てないのも、火神っちとの勝負もまだついてない。

そんな状態で放り出せるかと言えば・・・・・・・出来ない。

いや、そもそもっちってこういう事言うキャラだっけ?

「涼太、今すぐ答えて」

「無理ッスよ、そんなの……」

「そっか。まあ、私のバイクは涼太のバスケと同じかな?」

「そっか・・・・・・でも、なんで後ろに乗せてくれないんスか?」

「バイクは危ない乗り物だからね。人の命を預かって走るのは出来ない」

っち自身はどうなんすか?オレにとっては大事な命ッスよ?」

「バスケだって安全なスポーツじゃないでしょ?一緒だよ。それに・・・・・・」

「それに?」

「涼太には沢山のファンがいるじゃない?その人達を悲しませる事はしたくない」

っち・・・・・・」

「まあ、そういう事。バイクは涼太がいない時の私の趣味だから」

「仕方ないッスね。それじゃあオレは・・・・・・・」

「!?」

「愛おしい彼女に乗るよ。」

オレは彼女をゆっくりと押し倒す。

「好き・・・・・・本当に大好き。愛してるよ、

ゆっくりと顔を近づけてキスをする。

甘い・・・・・・とてつもなく甘い時間が二人を包み込んだ。



2015/04/23