黒子のバスケ

黄瀬涼太

ラブレター

モデルとバスケットを職業としてる自分にとって、一般の会社員である彼女と同じ土日の休みは貴重だ。

せっかくの休みだから出掛けようって言ったのに、二人きりの時間が良いなんて可愛い事を言われたら断れるワケがない。

昨日から泊りに来てるっちの手料理ランチを済ませて、リビングでまったりとした時間を過ごしていた。

会話なんていらない。

触れ合ってさえいればそれだけで「ああ、幸せだな~」って思える。

ソファに座って本を読んでいる彼女の柔らかな太ももに頭を乗せソファからはみ出た足をプラプラしながら雑誌を読んでいると彼女の口からとんでもないセリフが。

「私……涼太の事、愛してないのかもしれない」

「はぁ!?」

「……びっっっくりした~」

勢いよく状態を起こし正座状態で彼女を見ると、目を見開いて万歳の様に手を挙げて驚いていた。

「それはオレのセリフっすよ!どういう事っすか!!!?他に好きな男でも出来たんスか!!!!」

「いや、そうじゃなくて」

「どーゆー事ッスか!!!!!?」

「ちょっ、落ち着いて」

「彼女が心変わりしたかもしれないんスよ!?落ち着いていられるワケないじゃないッスか!!!!」

「だから違うって!」





「はい、コーヒー」

「……で?」

「………はい」

テーブルに向かい合わせに座り、彼女が淹れてくれたコーヒーに口を付ける。

すると先ほどまで彼女が手にしてた本が途中のページで開かれたまま差し出された。

その開かれたページの文字を追う。

「日本の古語だと『愛』って言うのは『愛(かな)し』って書いたんだって。意味合い的には今とかわらないんだけど。表記だけでも『かなし』って言うのは嫌だなって思ったら涼太への想いを否定されてる気がして。それなら愛してなくても良いかな~みたいな事を思ってたら口から出てたんだね」

「びっくりさせないで欲しいッス」

「あは。『かなし』って平仮名で書いたり口にするだけで切ない意味合いに受け取れるけど、漢字にすると『悲し』や『愛し』って違いがはっきりするな~って」

「漢字って凄いッスね。あ!それってオレにラブレター書けって事?」

「え?あー……ちょっと欲しいかも」

「でもオレが書くならっちも書くんスよ?」

「え?それってなんか恥ずかしくない?」

「こーんなに驚かせたんスから、それくらいしても良いと思うんスよ」

「ん~~~じゃあ、便箋買いに行こうか」

それから出掛ける支度をして、買い物に出かける。

次のデートで渡す約束をして彼女と別れた。

家に帰って買ってきた便箋を広げる。

何を書こうかワクワクしてきた!

っちの事を想う一人の時間も、悪くない。


2018/10/22