黒子のバスケ
君との距離
海常高校を卒業して7年が経った今日、
ホテルのホールを貸し切って同窓会が行われる。
お気に入りのスーツを身に纏い、部屋を後にした。
受付を済ませ会場に入る。
かなりの人数が参加している様だ。
会場内を歩いて、友人と合流。
何人かは今でも交流があるが、卒業以来の子も多い。
「そういえばって黄瀬くんと付き合ってたよね?」
「そうそう!休み時間とかも一緒にいたじゃん?」
「ラブラブだったよね~って、今日黄瀬君来てるの?」
「仕事で来られないって連絡あったらしいよ」
高校時代に私は確かに黄瀬君と付き合っていた。
というか、なぜ過去形で語られるんだろう。
まあ、別れたと思われるのが一般的かな。
でも実際の所、まだ続いていたりする。
私は実家暮らしだし、彼は都内の事務所所有のマンションに住んでいる。
親から「結婚しないの?」と言われるが、そんな気配も無い。
結婚の「け」の字すら出ない。
もう25才だし、結婚を考えるなら別れるべきか、そんな事を考えてたりもする。
「え?なに??」
友達の声に思考が引き戻されると、会場がザワザワしていた。
「ちょっ!あれ、黄瀬君じゃない!?」
大きな一団の中に、涼太がいた。
「うっそー!会えると思ってなかった!!!」
周りの女の子たちも騒ぎ出した。
彼の人気はいまだに健在の様だ。
私も彼女たちと同じように彼を見ていた。
するとマイクを受け取り、壇上へと移動。
「あーあー」とお決まりのマイクテストを済ませ、彼が私の方を見た。
「っち~~~!」と呼ばれ、みんなの視線もこちらへと向かう。
女の子の視線もだが、男性陣のニヤニヤした視線が気になる。
そんな事を気にしてる場合じゃない。
壇上の涼太は真剣そのものだったから。
「さん、オレと結婚してください!」
会場が一斉に湧き上がる。
私は頭の中が真っ白で、気付いたら涼太が目の前にいた。
そして私の左手を取り、薬指に指輪を嵌める。
「卒業と同時に結婚したかったんだけど、みんなに止められて。
事務所からもダメ出し食らって必死で仕事してたんスよ。
昨日やっと社長からも許可貰ったんスわ。
で?返事は?」
涼太の顔はバスケを楽しんでる時の顔だった。
断られるなんて微塵も思ってないんだろうな~。
何だか悔しい。
彼のネクタイをぐっと引き、耳元で囁く。
「涼太のお嫁さんにしてください」
そのまま耳にキスをしてネクタイを離した。
涼太は固まったままだ。
「おーい、黄瀬君?」
懐かしい呼び方をすると、涼太が体を起こした。
と思った瞬間、浮遊感を感じる。
お姫様抱っこ状態だ。
「んじゃ、愛を育むんで先に帰るッス!」
と言いながら様々な声が上がる会場を後にする。
「ちょっ!涼太!?」
「ちょ~~~我慢してきたんスよ。上に部屋とってるから」
「はぁ!?」
私を抱えたまま、器用にエレベーターのボタンを押す。
行先階を押し、カードを通して部屋に入る。
私はベッドの上にやっと降ろされた。
息をつく暇もなく、涼太が覆いかぶさって来た。
「愛してる。これかもずっとを愛してる。だからオレを愛して」
「私も愛してる。これからの涼太全部ください」
「この先にあるのは二人の未来だけッスよ」
優しいキスと共に彼の全てを抱きしめた。
2015/04/07