黒子のバスケ

黄瀬涼太

君の胸で泣きたい

「はぁ・・・・・・」

薄暗い公園のベンチに座って俯いて溜息ってナンすか。

人生で初めて『負け』の二文字を体験した。

『あの時』『ああしてれば』そんな言葉ばかりが浮かぶ。

「ん?」「あ・・・・・・」

ふと顔を上げた瞬間、目が合ったのは同級生の

「じゃ・・・・・」と軽く手を上げ去ろうとする彼女。

「ちょ~~~と待った~~~!」

と声を掛けると不満気に足を止める。

「どうしたの~?とか言葉は無いんスか?」

苦笑いをしながら話せば、「無い」と一刀両断で去っていった。

彼女はオレを特別扱いしないし、バスケと無関係だからこそ話せば気分転換出来るかと思ってた。

深いため息と同時に、さっきの大勢に戻る。

こんな事をしてても負けは消えない。

でも試合の事を考えては溜息・・・・・・の繰り返し。

「ん?っぎゃ~~~!!!」

「まだいたんだ?」

顔に冷たいものが当たり顔を上げるとがいた。

そして缶のスポドリが差し出される。

「ワンパターンッスね」

「返してくれてもよろしくてよ?」

「ありがたく頂戴いたします!!」

受け取るとが隣の座った。

座っただけで何も言わない。

「聞かないんスか?」

「負けたんでしょ?というか、聞いて欲しいなら聞くけど?」

「曖昧ッスねぇ・・・・・・」

「バスケの事わからないからね」

「一理あるッスね」

「負けを知ってる方が強いとも言うし」

「負けの言い訳」

「スポーツって道程は関係なく勝つか負けるかしかないからね」

「・・・・・・あーーー猛烈に悔しくなってきた!」

オレは大声を出した後、彼女の肩に頭を乗せた。

「はぁ?って、黄瀬!?」

「ちょっとの間だけッス」

「・・・・・・」

彼女は何も言わず、動かないでいてくれた。

静かな時間と空気が、ささくれ立った気持ちを落ち着かせてくれる。

「どうせだったら頭撫でたり、胸で泣かせてくれても良かったのに」

と言ったら殴られた。


この後、を口説き落とすのに1年以上かかった。

胸で泣かせて貰えたのは、引退試合の時となる。



2015/05/18