黒子のバスケ

黄瀬涼太

神様の在処

私は常に『平凡』と共にいた。

学生時代の成績は普通

スタイルも顔も普通

26年の人生の中で彼氏の数も平均

違うのは給料が平均以下な事くらい。

だから自分は見合いでもして平凡な家庭を築くだろう。

なんて考えてたんだけど!

偶然インフルエンザで休んだ営業マンのお蔭で彼氏が出来た。

しかもとびっきりのイケメンで年下モデル!

もう私の人生の運は、全て使い切った!!!

何かの神様ありがとう!←でも無神論者

良くわからないけど神に祈ったよ。

『モデル』ってだけでワガママ放題し放題かと思えば、

炊事、洗濯、料理をこなせる。

一人暮らしだから自分でやった方が早いとか。

まあ、完璧ではないけどね。

私が体調を崩して寝込んで、それを言わないでいたら

さんの心配するのはオレだけの特権なんッスよ?」

と言ってお粥を作ってくれた。

浮気されて当たり前とか思ってたのに

「なんッスか、それ。オレはさん以外どうでもいいッス」

とか言って、暇さえあれば家に来てる。

飲み会があれば必ず会場を聞かれ、店の最寄りの駅で待ち合わせが恒例。




そして今、その彼が横にいてテレビでやってるバカ騒ぎに笑ってる。

私の人生はもう、やり残すことは無いって感じだ。

「な~に考えてるんッスか?」

と後ろから抱き着いてきた。

「涼太との出会いを思い返してた?」

「何で疑問形なんッスか。あ、そういえば話があったんだ!」

そして私の視界がグルっと半回転し、涼太と向き合う形となった。

「どうかしたの?」

「もうすぐここのマンション、更新っすよね?」

「そうそう。冬のボーナスが羽を生やして飛んで行くよ」

「その更新、しないで欲しいッス」

「は?私の住民票は何処へ行けと?諭吉(1万円札)の代わりに消えるの?」

「は?諭吉??って、違うッスよ。オレんとこ来ませんか?」

「イヤ。ファンに殺される!」

「まあ、そのままならね」

「どういう意味?」

「そろそろ黄瀬になって欲しいッス」

私の人生の運は、涼太が握っているらしい。



2016/01/23