黒子のバスケ
HAPPY BIRTHDAY 2016
「誕生日に試合って神様はオレになんの恨みがあるんスかね。彼女もいないのに」
「逆にプレゼントなんだろ」
「死ねっ!」
「ぐはっ!?」
先輩からのプレゼントは心も体も痛くて泣きそうッスわ・・・
今日の相手は名前を聞いた事も無い都立高校。
正直、負ける気がしないッス。
しかも「色んなバリエーション試すぞ」なんて言葉も聞こえてくるし。
今日は暴れたい気分なのにな・・・
なんとなくテンションが上がらないまま、試合終了。
試合に出ていたのも半分あるか無いか。
「次の誠凛の試合見てくぞ」
汗の処理をし、ジャージに着替えてスタンドに上がる。
何も考えずメンバーにダラダラと付いてく。
「おい、黄瀬、さっさと座れ」
「ウイーッス」
前列の一番前の端っこ(メンバーの中で)に座る。
自分の足に手をついて頬杖をついてコートを見下ろす。
丁度主審がゴールを支持し、ティップオフ。
誠凛の7番が弾いたボールを4番が取り、火神っちがシュートを決める。
「早いな・・・」
ディフェンスの戻りが遅く、パスがするするっと抜けて行った。
「ハンズアップ!」
誠凛はゾーンディフェンス。
マンツーが主体の高校がゾーンッスか・・・
「誠凛も色々試してるんスね」
「だな」
試合は誠凛ペースで進み、ハーフタイムとなる。
なんとなく隣を見ると、制服の女の子がいた。
ハンディカメラを回し、スコアブックを付けている。
なんとなく覗いたスコア。
「うわ~見やすいッスね」
「え?」
思った事が声になってたらしく、隣の彼女がオレを見た。
「あ、驚かせてゴメン」
「あ、いえ・・・」
「見ても良いッスか?」
「これ?・・・どうぞ」
そして渡されたスコアブック。
綺麗な数字が並んでいる。
その数字を囲っている赤いインクも邪魔にならなくて本当に見やすい。
選手名が無いのが気になった。
「あれ?選手名は?」
「私はこの学校じゃないから選手名までは分からないので」
「ああ、なるほど。11番は黒子テツヤで、10番が火神・・・なんだっけ?」
すると隣の彼女はクスクスと笑った。
「覚えて無いんですね」
「いっつも火神っちって呼んでるから」
「なるほど」
「えーっと・・・『』さん?」
「なんで名前・・・あ」
スコアラーの所に書かれた名前。
どうやら彼女の名前の様だ。
もう少し話をしようと思ったけど、ホイッスルがなる。
スコアブックを返し、再び試合に集中する。
試合は誠凛の圧勝で終わる。
隣でさんは着々と片付けを済ませる。
「それじゃあ、お先に」
「あ、学校!」
「誕生日おめでとう、黄瀬涼太君」
なんて笑顔で言われたらフリーズするっての。
オレの名前は知られてても不思議じゃないけど、誕生日覚えてるってナニ?
気付いたらもう彼女はいなくなっていた。
「あれって秀徳高校の制服だよな」
って言った森山センパイに少しだけ感謝。
夜に誕生日プレゼントと称して緑間っちに探りを入れたのは、言う間でも無い。
2016/07/13