黒子のバスケ

黄瀬涼太

HAPPY BIRTHDAY 2015

さ~ん!」

「ああ、黄瀬君。おはよう」

「おはよッス。じゃなくて!今日、オレの誕生日なんスよ」

「そうなんだ、おめでとう。って、いくつだっけ?いや、聞かない方が私の為だ」

とかブツブツ言いながら職場に歩いて行った。

オレは大学を出て就職。

と言っても企業チームに在籍しているからだ。

なので午前中は仕事をして、午後からバスケに専念出来る。

キセキの世代も別のチームに所属してる。

で、さっきの彼女「」さんは、うちの会社の社員さん。

オレの教育係だった人の同期で、何度か一緒に飲みに行った。

部署が違うから毎日会えるワケでもないし、誘いを掛けても二人で会ってくれない。

そしていつの間にかオレが誘いを掛けるのが噂で広まり、色んな人が助けてくれてる。

一部の間ではオレが落とせるかどうか賭けになってるらしい。

でも、絶対今日は落とす!

そしてさんとラブラブになってみせる!!!!!



練習が終わり、急いでシャワーを浴びる。

「お先に失礼しまーっす」

部室を急いで出て、待ち合わせ場所に向かう。

時間にはピッタリ着きそうだ。

駅前に行くと、さんがスマホを触っている。

「お待たせッス」

顔を上げた彼女はオレを見るけど驚く様子が無い。

「あれ?驚かないんスか?」

「何となく予想してたしね」

本当はさんの相手は別人だった。

だけどその人がオレへの誕生日プレゼントって事で彼女を呼び出してくれたのだ。

そして彼女と食事をし、二次会に誘ったら「誕生日だしね」と乗ってくれた。

二人の会話と言えば会社の事や、友達の話だったりと甘いものは無かった。

終電が無くなる前に店を出る。

一緒に歩いていても二人の間を冷たい風が抜けて行く。

「ねえ、さん」と言いながら彼女の腕を掴む。

彼女は何も言わずにオレを見た。

「オレと付き合ってよ」

「どこに?って雰囲気じゃないね。賭けの為?」

「本気ッス。今日くらい誤魔化さないでくださいよ」

「・・・・・・正直、黄瀬君に好きになって貰う理由が見当たらない」

「は?」

「可愛い訳でも美人って訳でも無いし、性格が良い訳でも無い。それこそ黄瀬君の周りの子の方が良いと思う」

「それでもさんが良いんです」

「・・・・・・」

さん?照れて・・・ます?」

「照れてない」

と顔を背けるけど・・・・・・顔が赤い?

さんは酒に強いから顔に出る事が少ない。

そんな人が耳まで赤いのって・・・力いっぱい抱きしめた。

「可愛い!!!!!」

「ちょっ!?」

「ヤバイヤバイ!ちょ~~~可愛い!!!!!!!」

「黄瀬君!?」

「本当に好きだ。これから先、そんな可愛い顔はオレだけに見せて」

「ふふふ・・・・・・わかった」

そういいながらオレの腰に回された腕。

たまらずにキスをすると怒られた。

だから家にお持ち帰りすると、めっちゃ色っぽい彼女と出会った。

オレの胸に上半身を乗せて眠る彼女の髪を撫でる。

「相当ハマっちゃったかも」

オレの独り言は甘い空気が漂う部屋に消えて行った。



2015/06/18