黒子のバスケ

黄瀬涼太

新たなるスタート

花の金曜が終わりを告げる頃、私は眠りにつこうとしていた。

カップをシンクに入れた途端、充電器に差してあったスマホが鳴りだした。

ディスプレイには『赤司征十郎』の文字。

急いで通話ボタンを押した。

「夜遅くにすまない」

突然の電話の理由はこうだ。

私の恋人である黄瀬涼太が酔い潰れ、店から近いうちに送るとの事。

私は急いでパジャマを着替え始めた。



黄瀬涼太とは同じ高校で、1年と2年が同じクラスだった。

特別仲が良かったとかでは無く、クラスメートとしての会話しかしていなかった。

それでも2年のバレンタインで告白したらOKして貰えた。

バスケが忙しかったし、デートらしいデートも出来なかった。

大学に入っても(違う大学)付き合いは続いたが、彼の浮気で別れた。

薄々感じてはいたが、決定的な瞬間を見てしまったのが切欠となる。

やっぱり私に有名人と付き合うなんて無理だと落ち込んでいたところ、

同じ大学の人に告白されて付き合った。

彼は私の事を大事にしてくれて、本当に愛して貰っていた。

だけど私の心は完全に彼に向くことが無くて半年で別れた。

そして就職と同時に一人暮らしを始めた。

新しい事を同時に始めるものじゃないなと思いながらも、

自分のリズムを作る事が出来た。

疲れた体を引きずりながら帰宅すると、マンションの前に涼太がいた。

ひたすら謝られ、もう二度とあんな真似をしないと一方的に喋られた。

私の気持ち的にもまだ涼太への想いがあったし、寄りを戻す事にした。

だけどきっと浮気されるだろうと言う気持ちもあった。

次にそうなったら、きちんと話し合って気持ちを消化してから別れよう、そんな決意もしていた。

そして寄りを戻してからの涼太は変わっていた。

本当に私を大事にしてくれてるのがわかる。

お互いに甘えたり我儘を言ったり出来る関係に。

だけどまだ、心の底にわだかまりがあるのも事実。



「本当にすまない。ほら涼太、の家に着いたぞ」

赤司君の肩に凭れながら顔を上げ、私に抱き着いてきた。

「ん~?あ~~~っちだぁ~~~」

「ふぅ・・・それじゃあ、後を頼む。ベッドまで運べないだろうがここに転がしておけばいい」

「ありがとう、赤司君」

涼太を移動させようとしたが、へにゃへにゃと涼太が私の腰に抱き着きバランスを崩す。

おかげで玄関に座り込むはめになった。

私の腰に抱き着く涼太をペシペシと叩く。

「きょ~みんなと飲んだんスよ~~~。」

「うん、飲み過ぎちゃったね」

「でもでも~っちの自慢はしたんス~」

もう寝ちゃいそうな声でも一生懸命話す涼太の頭を撫でる。

「そんで~ず~~~~っと気になってた事も話たんス」

「気になってた事?」

「ん~~っち~オレと別れてる間に~他のオトコとエッチしてる~~~って~」

「!!?」

っちの~~~エロいかおとか~知ってるヤツがいるんだ~~~~って」

「・・・・・・」

「で~~赤司っちに~~~説教されちゃいました~~~」

「なんて?」

すると涼太の腕に力が入り、ぎゅっと抱き着かれた。

「自業自得だ。それに彼女は悪くない。恋人がいるのに浮気をしていたお前の方が不誠実だって・・・・・・

 だから~彼女を責める権利もな~んもなくて~お前は後悔し続けるんだ~~~って。

 きっと~っちは~も~~~~っと辛い思いしたんだな~とか思って~

 だからこそ、これからた~~~くさん幸せにしたいな~~~て」

「涼太・・・・・・」

人の足の上でゴロゴロしてた涼太が状態を起こした。

お酒のせいでまだ視線が揺れているけど、強い意志が宿った目になった。

「だから~酔って無い時にプロポーズするから待ってて」

「うん」

返事と共に涼太に抱き着いた。

翌日、一緒に指輪を選んでプロポーズされました。


2015/01/26